第33話 Kind Soul
「よぉーし、成果発表だ……」
…………。
「リーダー。ルシア達がいない」
「あいつら、どこで油売ってんだ……」
「まあいい、とりあえずスレイの方は、この町について何か分かったか」
「この町の名前が……」
…………。
「で、この町の治安云々……」
…………。
「と、言った感じだ」
まずまずといったところだな。まあ別に、この町に長居するわけでもないから、そこまで詳しく知る必要はないが。
「それと、ケインの仲間の獣人二人に会った」
「なにっ!? それを先に言え!」
おぉ……これは思わぬ収穫だ。
「どうやら、神器なるものを探しているらしい」
神器……?
神器か……。というと、強い武器か何か……。はっ!
そうか……そういうことか!
「でかしたぞ! スレイ!!」
まさにナイススレイ。
「あぁ、簡単には口を割らなかったんだがな……」
「それで、お前はその顔に名誉の傷を……」
「そういうことだ……って痛って! 思い出すとまた痛んできた……」
可哀想に……。それは本当に名誉の傷だ……。
「あの……俺からすると勇者の方が悪いやつに見えるんだが……」
「ところで、ソイツは誰なんだ」
「そっちの説明は後だ、ほら、デカいのはあっち行ってろ、内緒の話だ」
「わ、分かった。ちなみに、名前はグレアだ」
「分かったグレア、ほら、しっしっ」
「扱いが悪いなァ……」
さて、グレアが行ったところで。
「いいかスレイ、その神器とやら」
「恐らく、ギーチェの持っていた鎌が、その一つだろう」
…………。
せっかくの天才的な俺の考察がぁ……。
「あ、あぁ、そのとおりだ。なんだ分かってるじゃないか」
「まあな」
「ほら、グレア〜戻ってきていいぞ〜」
「早いな……」
グレアが不満そうに戻ってくる。
「まあ、その話は後でゆっくりするとしよう。で、こっちの収穫だが、なんと、この町一番の高難度クエストを受注出来たぞ!」
「お、おぉ! 流石だリーダー」
「詳しくはグレア、よろしく」
「あぁ。まず、討伐対象はこの巨人だ」
そう言って、クエストの紙を見せる。
「この巨人は、俺たちが束になっても勝てず、それでいて木々を倒し、こちらの町へ向かっている」
「うんうん」
「そして……明日の日没のタイミングで、この町を通るだろう。そうすれば、町は壊滅だ……」
「うんうん」
…………。
「え?」
「どうか、勇者。この町を救ってくれ……この通りだ……」
そう言って、頭をさげる。地面に叩きつける程の勢いで。
…………。この町の危機か……。思っていたよりもハードだ……。
しかし、ここで引いては勇者が廃る! 何より強くなるために強敵と戦いたいと言ったのは俺達じゃないか!
「あぁ、任せろ……俺たちがお前の……いや、この町の希望のになってやる」
「お、おぉ!」
「こう見えてリーダーは強い」
こう見えてとはなんだ、こう見えてとは。
「今まで、数々の敵と戦ってきた。植物を操る女王や、氷を操る魔女……」
おいスレイ。女王も魔女も盛りすぎだ。何より、戦ってはいるが、その誰にも勝ってはいない。
「お、おぉ! 流石だ!」
「ま、まぁ、任せておけ。なんとかしてやる」
…………。
……。
「さて、ここが今夜の宿だ」
「ここが、町一番の宿なんだぜ。この町の戦士である俺が保証する」
まあ、それでもボロいが……。他のところに比べたらかなりマシだ。
「ま、まあ、"アレ"を見てからだと、かなりマシね」
「そ、そうだねぇ」
宿を選んだ時にはルシア達が帰ってきた。なんでも金持ちの家で風呂に入ってたと。
……。
なんじゃそりゃ。
「早速入ろう」
「う、うん」
「ほらほら、大所帯なんだからさっさと動け!」
「ちょ、押すな!」
五人でこれか……。勇者が四人制限なのも頷ける気がする。
……。
「やっぱり、浴槽は付いてないのね……」
各自、それぞれの部屋を一通り見て、広い部屋で再度集まった。
「男チームは体洗わないのぉ? 不潔だよ!不潔ぅ〜!」
「何を言う、俺たちは野宿の時に川で水浴びをしていた。清流で清められている」
「同じく」
「男たちはそういうところ、気軽でいいわよねぇ……」
「都会育ちの女には無理だな」
「うっさい。アンタ達を清めた川が可哀想ね」
「なんだと〜?」
「ま、まあ、そういう話は後で良いだろ? とにかく巨人を討伐することを……」
「ああ、そうだな」
さて、どうやって巨人を倒すか……。
勿論、ミーティングするなら、作戦名は必要だよなぁ〜!
「作戦名、タイタンスレイヤー! ミーティング開始ッ!」
……。
「ダサ」
誰だ! 今小声でダサいとか言ってたヤツ!!
「なに!? 作戦だとっ! 一体なんの話だ! 混ぜてくれ!!」
「お前誰だよっ!」
急に他の宿泊者が割り入ってくる
「あぁ〜あの汚い公衆浴場に入ってった人だ〜」
「あぁ、全くあれは酷かった。あれは……形容しかねる……」
何の話だよ。お風呂マイスターかコイツらは。
「とにかく、帰れっ! ほら! トップシークレットなんだよ!」
「そこまで言うなら分かった。さらばだ!」
意外と物分かりのいいヤツだ。
「さえ、ミーティングを始めよう……作戦名……タイタンスレイヤー」
……。
みんな呆れ返っている。
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