第32話 Joyous Duo 下巻
満……足……。
俺は商品をまとめて持ち運び袋に入れた。落ち着いたあと、戦利品確認とするか。
「全く、何がいいのかサッパリにゃ……」
「あの楽器……? を割ったときは怒っちゃったのかと思いました……」
まあ、人によって感性は違う。あれをガラクタのように考える人がいてもおかしくは無いだろう。
「ところで、二人は今日何をしにきたんだ?」
「あ、それはですね。神器を探しに来たんです」
……。
作戦成功。
「ニャニャッッ!!ニャンで言っちゃうニャァア!?」
「あ! す……すみません……! 私……私……」
ミルが涙目になる。少し強引に聞きすぎたか……。いや、強引ではないか。
あえて、間をおいて同じ質問をすると、口が滑ることがあるからな。まさかとは思ったが成功するとは。
「ホントに……ごめんなさい……ダメ……ですね私……ケイン様にどう言えば……」
「大丈夫、俺が、聞いたから、俺が悪いんだ。ミルは騙された可哀想な子犬に過ぎない……」
「お、前、は、黙っとれぇニャァアアーー!!!」
爪で顔を引っ掻かれる。
……。
「痛ったぁぁああ!?!?」
う……鋭い痛みというのは……後から急にやって来るのか……。
「大丈夫にゃあよ。仕方ないことだからにゃ……」
「あぁ、気遣いありがとう」
「お、前、じゃ、ニャいニャァァアアーーー!!!!」
また引っ掻かれる。
……。
「痛ぇぇーー!!!」
鋭い痛みは後からやってくるという新しい知識が、すぐに役に立った……。
「ひぐっ……ひぐっ…」
「もういいニャ!! お前とはさっさとお別れニャッ! しっしっ! さっさと消えるニャ!!」
「いや、ちょっと待て、真面目な話を最後にさせてくれ」
「なんニャ! また引っ掻かれたいのニャ!?」
「いや、答えるも答えないも自由だ」
「言ってみるニャ」
…………。
「イノセントダークの、ケイン以外のメンバー。カリン、ミロル、ミル……あと誰だっけ」
「シオンです……」
「ああ、そうだ。その四人は、元々面識があったのか。それに、どういう経緯でケインと知り合ったんだ」
「面識は無かったです……。えと……色々あって、ケイン様に拾っていただきました……」
「四人の面識ニャ? ……。あれ? あれれニャ?」
様子がおかしい
「そういえばそうニャ。なんで四人集まったんだっけにゃ?」
「え? 私は……最後に加入しましたけど……。ミロルさんは三人について詳しく知ってるんじゃないですか……? 私は実はあまりよく知らなくて……」
「ニャ……。ミルが仲間になったのは覚えてるにゃ……。でもそれだけにゃ……。あれ? あれれニャ?」
「いや、今ので大体分かった。無理して思い出す必要は無い」
「……にゃにか知ってるのにゃ?」
「いや、俺だって全く分からない。だから、こうやって聞いて、考えているんだ」
となると……。あれは、思い違いでも、なんでも無かったのか……。
「教えるニャ。私達の重要にゃ話なんじゃないのかニャ?」
「もう一度言う、俺だって全く分からない。だが一つだけ言えることは」
「……」
「お前たちは、元々別の四人組のパーティーを組んでいたということだ」
……。
「な、なんだ、そんなことですか……。それなら、別におかしな話は無いですよね」
いや、十分おかしい。
記憶の喪失。
そしてもう一つ、四人組のパーティー、そのもう一人の証言。
分かっていることは、この二つに増えた。
あとは……。ケイン……。
「悩ませる事を聞いて悪かったな。それじゃ、行ってくれて構わない」
「そうニャんね。それじゃ、さよならニャ」
「さよなら……」
そして、二人は歩いていった。
俺は、レイズ達の元へ戻る。
いつか、その"真相"が分かる時が来るだろう。それはケインに直接聞かなくては始まらない。
しかし、直接聞いたところで、教えてくれないのがオチだろう。
きっと、時が解決してくれるさ。
…………。
……。
って……。
「痛ったぁー!!!!」
今になって、顔の痛みが再び襲ってきた。
う……うぅ……。
顔をさすりながら、レイズ達の元へ歩む。
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