第31話 Joyous Duo 上巻
さて……。
町の情報収集も、大分進んできた。
この町はワズライドという名前だということ。国の管轄としては、オートラルスと同じらしい。
また、他の町と離れているため、文化の遅れや、若者離れによる労働力不足。治安も悪く、盗難が多発するらしい。
なんでも、町全体の家に侵入して宝箱を漁ったり、壺を割ったりする集団が何年かに一度やって来るんだそう。
まぁ、そんなこんなで、建物は老朽化が進み、住むにはかなり不便な町ではあるが、魔物やモンスターだらけの外の場所に比べると、旅人のオアシスなんだそうだ。
さて、後は何をしようか。もしかすると、この町特有の民芸品か何かが売ってるかもしれない。少し見てみようか……。
早速、歩いて移動する。
しかし、歩いていると見覚えのあるシルエットが。
「お、ケインの新しい仲間……。二人か」
「にゃっ、どもども〜!」
「あ、お久しぶりです……。えと……お名前はスレイさんでよろしかったでしょうか?」
「あぁ、その通り、自己紹介はまだだったな。フラワーフラグメンツの縁の下の力持ち、スレイだ。」
ちょっと、印象付けた自己紹介をしてみる。
「えっと……私はですね……」
「いや、覚えている……。あなたがミルで、そっちがミロルだ」
「よしよし、前の自己紹介が効いてたニャ〜ね」
だが、ケイン達は何をしに来たのだろうか。
「ところで……こんなところで何をしているんだ? ケイン達はどこへ?」
「それは……ですね……」
「にゃんでもないにゃよ〜」
ミルが少し驚いたような顔をする。
「そうです……。内緒です」
そして、ミロルは残念そうな顔をする。
明らかに何かを隠しているな。
「ケイン様たちは、また別の場所にいます。私たちはただブラブラと……」
「ショッピングで、この町の民芸品を……と?」
「そ、そうニャ!」
「おぉ、そうか、なら俺と同じ目的だな、少し付き合ってもらおう」
「……失言ニャ」
「なにか?」
「にゃんでもにゃ〜」
よし、ここで逃がすわけにはいかないからな。
ケイン達が何を考えていて、何をしようとしているか。それをさり気な〜く探る必要がある。
そしてもう一つ、確かめたいことが……。
…………。
……。
「なんでしょうか……コレ……」
オンボロな屋台を見つけ、早速売り物を見てみる。
屋台には、あちこちが擦り切れた服を着ている中年男性が。正直胡散臭い。
そして、店の売り物も変わったものだ。変な形をした木像から、楽器……だろうか?そんなものも売っている。
……。
俺の趣味にストライクだ。
「これは、なんなんですか?」
「あ〜、そりゃあな。象だよ、象の像なんて、洒落てんだろ?」
「いや、どーみても象には見えないし、ギャグセンスも壊滅的にゃ」
「なんだとぉ? 可愛いからって調子乗りゃがって、待ってろよ? 俺もその内ビッグになってやんだからな?」
「ちょっと……この店怪しいですよ……。他の所に行きませんか……?」
ミルが耳打ちする。
しかし……。
最高だ。
象の木像……。この人とは、いい酒が飲める……!
「ではでは、こちらの楽器みたいなものは……?」
表面に溝が刻み込まれている"何か"を指差す。
「あぁ、それはね、こうやって使うんだよ」
そう言って店主は"何か"を手に取る。
すると、急にそれを地面に叩きつけた。
内側がくり抜かれていた木製の"何か"は砕け散った
クッシャァアッ!!
「きゃっ!?」
ミルが驚いているが、正直どうでもいい。一体これは何なのか……。
「これはねぇ、壊すことによって音を鳴らすんだ。お前さんの言った通り、楽器だよ」
……。
「やっぱり、おかしいニャ、さっさと帰ろうにゃ〜」
「さ……最高ですよ!!」
「「えぇぇーー!?!?」」
「そうだろう! そうだろう!! お前さんは物事の価値というものをよく見極められる若者だ! 今どき珍しい!!」
「この楽器……物や人間の一生をかけた力というものを感じます。それは人間の断末魔のような……」
「そうだよ! ワシはそれを言いたかったんだよ! いやー! 伝わるか! お前さんにはそれが伝わるか!」
「はいっ!!」
「ちょっと……付き合いきれないにゃ……」
「先ほどの楽器の代金は払わせていただきます! っと! コレはなんですか!? いや、聞く必要も無いですね! これもください!」
「よっしゃぁ! ワシも男じゃ! まとめ買い特別料金! 二個分の代金で四個セットこれでどうだぁっ!!」
「はいっ! これとこれとこれ、そしてこの辺のやつもまとめてください!!」
「おぉ! 羽振りいいのぉ! 持ってけ持ってけーーーーーー!!!!!!!」
…………。
……。
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