第29話 Joyous Girl 上巻
お風呂っ! お風呂っ!
初めて行く場所って、やっぱりワクワクするわよね〜!
「あのっ!」
近くにいたおばさんに話しかけて、まずは聞き込み!
「なんですかい?」
「この町の公衆浴場ってどこにありますかね!?」
「あぁ、あれだよ」
そしておばさんが指を指した方向には。
......
なんじゃありゃ?
なんか、あちこちがボロボロと……。そして壁には謎のシミが沢山あって、とても綺麗とは言えない……。
というか公害を起こす類の工場の見た目、酷い……。
「ちょっとぉ!?汚すぎだよぉ!」
ちょっ!ギーチェちゃん直球!
「仕方ないよ、人口も少なくて、施設の老朽化が止まらないのさ」
にしても酷いと思うけど。
「普通は家の風呂しか使わないわな、旅人なら、誰かの家にお世話になるんだね。うちは御免だけど貸せないよ。へっへっへ」
誰も使えない浴場に、存在価値はあるのかな?
「ちょっと!? これはありえんだろぉー!!!」
同い年くらいの少年が、この建物を見て叫んでいた。
「いや待て、中は綺麗かもしれない......人も何も見た目だけでは分からないものだ!!!」
そう言うなり、入っていった。私達よりよっぽど勇者してるよ。
「へっへっへ。あんなところ、戦いに疲れた清潔感の無い男どもにしか需要は無いのさ。それじゃ、失礼するよ......」
親切なおばさんだった。
「でも、どうしよ。私はもうお風呂に入る気マンマンだったのに〜!」
「同意だよぉ! わー! お風呂に入らせろぉ〜!!」
そう言って地面に倒れ込んでバタバタしてる。
正直、私もそうしたいくらいだけど、汚れるし……。
「そこの二人!」
「「はいっ!?」」
急に怒られた?
「特にそこでバタバタしてる子、余計に汚れるだけじゃない?」
「うぅ〜〜」
そこには同意。
で、私たちに話しかけてきたのは、なんだかお嬢様みたいな感じの子。
黄色い髪がクルクル〜って感じで、お洋服もフリルがついててオシャレ。
あんな服着てみたいな〜
「ふたりとも、とにかく黙って私に付いてきなさい」
……?
なんだろう……。
あまりにも急だからもしかして逮捕でもされちゃうじゃないかなって思う……。
とにかく付いていくしかなかった。
ギーチェちゃんはさっきより泥まみれになってた。言わんこっちゃない……。言ってないけど……。
「あのぉ、私たち、何かしちゃいましたぁ?」
「…………」
何も喋ってくれない……。
「これって、やばいんじゃないのぉ〜?」
「そんなこと、私に言われても……うぅ」
他に聞こえないような小さな声で、そんな会話をした。
やがて、町を出て、町外れの大きな建物……。なんだか、お金持ちが住んでそうな所に着いた。
閉まっていた門が急に開いて、中へと入る。
ギーチェちゃんも少し不安な様子。一体何なんだろう……。
あっ!
もしかして!
私が勇者だってこと、バレてる!?
そして、それだけなら良い、私が勇者ってだけなら良いんだけど、問題はギーチェちゃんと一緒にいること!
勇者の掟に逆らったとして、何かの刑罰が下されるのかもしれない!
どうしよ〜
でも、それが決まったわけでもない。聞く方が怪しいし……。とにかく今は黙っておくしかないよね。
連れられて、屋敷の中に入ると、使用人?みたいな人達がお出迎えしてくれて。
「「おかえりなさいませ、カヌレ様」」
「そちらのお客様は?」
「町で会った人ってだけよ」
「失礼しました」
なにが失礼なんだろうか。上流階級の人の世界はイマイチ分からない。
そして、私はお嬢様みたいな人に連れられて、屋敷の中の大きな扉の前まで着いた。
「おっきいドアだねぇ〜! 入った所から豪邸ってのも分かってたけどぉ〜!」
私には……。なんだか裁判にかけられる所にしか見えないかな、ははは。
「ほら、歩かせてしまってすまなかったわね。ほら、どうぞ」
その扉を開けると……。
「これって、もしかして」
「わーい、お風呂だぁ〜!」
さっき酷いもので目を慣らした分、この景色は天国にも見えた。
「でも、どうして?」
「みすぼらしい姿でいられたら困るのよ。二人とも、もっとしっかりした格好さえしてれば可愛いのよ? 自覚持ちなさい」
急に褒められて少し恥ずかしくなる。一方、ギーチェちゃんは。
「わーい、わーい!」
なんだか、子供っぽいなぁ。
でも、せっかくだから。お言葉に甘えて、ゆっくりリフレッシュさせてもらおうかな。
ちょっと、こんなに豪華なお風呂だと、服を脱ぐのもちょっと申し訳ない気持ちになるというか……。
「広〜い! こんなの実在するんだぁ〜!」
って、もう入ってるし。
じゃ、じゃあ私も。
服を脱いで、浴室のドアを開けた。
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