第23話 Flower Garden 前編

「ところで、その伝説の花畑について、詳しく教えてくれよ。」


歩きながらそう聞いた


行き先も分からず、ただ付いていってるだけだったからな


物珍しいってだけで付いていってるが、あの二人にはなにかしら別の意図があるのかもしれない


ただの親切心ならいいんだが。もしそうでないなら...


「さきほども説明した通り。三年に一日しか見られないと言われてる花畑なんですけど、この平原のどこかには出現するらしいんですよ。ですが、その場所は毎年違うそうで、地道に探す必要があるんです」


ふむふむ


「で、日が昇り始めたタイミングで咲いて、日が降りきったタイミングで枯れるそうです」


なるほど、まさに伝説って感じだ


「儚いな...」


スレイの言うとおり、その一言に尽きる


たった一日だけの命を、三年後に繋げていくんだ。なんとも興味深く、そして、希望を繋ぐ人の想いを連想させる


「というわけで、本当は手分けして探したいんですけど、連絡手段が無いうえに、あまりにもこの高原が広いので、結局固まって歩いてます」


効率が悪いな...


だが


「スレイ、連絡魔石はあるよな?」


「勿論、三つほど」


「え〜!便利なもの持ってるじゃないですか〜!これで分かれて探せます!」


となると、チーム分けになるな


「じゃあ、ここにいるのは六人。二人ずつで分かれるか」


「私はギーチェちゃんと組みたいかな〜もっと仲良くなりたいし...?」


意外だ


しかし、思い返せば他の女とあまり接する機会が無かったルシアにとって、ようやく出来た女友達なのか。それなら納得する


「嬉しいこと言ってくれるなぁ〜、私もルシアさんと一緒に探すよぉ〜」


「それなら、俺は...」


スレイが言い淀む、目線を見る限り、おそらくあの黒髪と組みたいのだろう。旅で出会えた同類とせっかくなら仲良くなりたいのも普通だろう


で、よくよく考えたら名前を聞いてない。そういうことだろう


「なあ、俺と組もうぜ、ところで名前も聞いてないが、二人の名前はなんて言うんだ?」


男の方に話しかける、こっちはさっきレイとか言ってたかな


「普通は人に聞く前に、自分から名乗るべきなんだがな?まあいいか」


そういえばそうだ、失礼だったか。ここは先に紹介しておくか


「あぁ、すまない。俺の名前はレイズ。で、こっちがスレイで、こっちがルシア。そのエルフが訳あって今一緒に旅してるギーチェだ」


「ちょっとー!そういうのは一人ひとり自分で自己紹介すべきでしょうがー!」


「こっちのほうが手っ取り早いだろ」


「同意する」


なんだかんだスレイは俺の肩を持ってくれる。いいヤツだ


「あぁ、俺も同意だな、俺はレイ。こっちがロゼだ」


「ふたりとも、男はもうちょっとコミュニケーションをとる力を身につけた方がいいですよ」


初対面に向かってなんて口のきき方だよ


「ではロゼさん、二人で組みませんか?せっかくなら、別のパーティー同士で...」


「あ、別に私はこの人とパーティーを組んでるとか、そんなんじゃないです。ただこの人が勝手についてくるだけなんで」


「ツンツンだねぇ〜」


ギーチェは何故か楽しそうだ


「そこを訂正したうえで、私はあなたとペアになりますね」


ロゼはスレイの元に行った


ということで


「よろしくな」


「ああ、さっさと花畑見つけるぞ」


よし、チーム分け完了


スレイから魔石を受け取って、分かれようとする


「あっ!そうだ、最初に見つけた人は賞品があるってのはどうですか!?」


お?賞品か、また面白そうな...


「と言っても、俺たちに渡せるようなものなんてないと思うが...それに、俺たちが誘っておいて、賞品を寄越せってのはひどくないか?」


「ま、なんか良さげなのがあったらで良いですかね〜とにかく!時間も無いのでさっさと始めちゃいましょう!」


「「「「「「おーーー!!!!」」」」」」


......


...


さて、二人で歩きながら探してるが...


場が持たない...


......


...


「お前は、ロゼを見て、可愛いと思ったか?」


...


いきなり何を言い出すんだコイツは


......


...


「言えよ、なんとか」


...


なんとか言えと言われましても...


「ああ、可愛いな。喋り方も丁寧でおしとやかだしな」


...


...


「そうか」


...


何なんだよ全く...


「俺が、ロゼといるのは、どんな経緯があると思う」


知るかよ


「あー。食っていくために、魔物を狩ったりするためか?要するにビジネスパートナー」


...


「なるほど」


...


「恋人同士には見えないか?」


なんなんだよホントに、ノロケか?


「それにしては歳が離れてるだろ」


...


...


「だよなぁ〜...」


急に困ったような顔を見せる


「何が言いたくて、何が聞きたいんだ?」


「なんでもない、忘れてくれ」


余計気になる


...


...


「このまま歩き続けるだけってのは効率が悪くないか?」


「ああ、俺もそう思う。が、ロゼが探検したがってるんだ、俺はロゼがしたいように動くだけだ」


二人の関係性が気になるのはさておき、そろそろ日が暮れそうだ


そこで、思いついた


連絡魔石で、ギーチェに連絡する


「ギーチェ?聞こえるか?」


「ばっちぐーだよぉ?どうしたのぉ?」


「お前木をはやしてさ、上から見ればすぐに花畑が見えるんじゃないか?」


...


「なるほどぉ!あったまいいねぇー!」


正直、すぐに思いつきそうなことではあるのだが、俺も今思いついたから仕方ない


「え?ちょっと、ちょっとギーチェちゃん!いきなり高い、高いよ!危ない!ギャーーー!!!」


ツー...


...


一体どれだけ高いところまで行ったんだ


その答えは簡単に見つかった


「オイオイ、ありゃなんだよ」


レイが見ている方を見る


びっくりするほどアンバランスに長細い木が伸び続けている


これなら簡単に見つかりそうだ、だが、高すぎて連絡魔石が反応しなくなってしまった


「ギーチェに任せるか」


「あれはあのギーチェって子が生やしてるのか?」


「ああ。全く、凄いスキルを持ってるよな」


「ふ〜ん...」


あまり驚かないんだな


腰を下ろして、俺たちは伸び続ける木を見ていた


.........


......


...


「ギャーーー!ちょっとちょっとギーチェちゃんって!やめて!やめて!高いでしょ!怖いよ!落ちたらどうするの!!ねーー!!止めて!!止めて!!降ろしてー!!!!」


「だいじょーぶ、だいじょーぶ!落ちやしないよぉ〜」


「ヒャーーーッッッッ!!!!」


「あんれぇー?なにか白っぽいところがあるよぉ?もしかしてぇ、あれかなぁ〜?」


「見つかったなら止めて!早く!いつ落ちるか分からないからぁー!!!!」


「もうちょっと近くに行ってみようかぁー」


木の成長は急に90度曲がり、花畑らしき場所へ近づいていく


「うぎゃぁぁーー!!!!」


...


......


.........


「待ってるだけってのは楽だな〜」


「同意だ」


さて、もうすぐ見つかる伝説の花畑。それはどんな絶景なんだろうか。楽しみだ


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