第24話 Flower Garden 後編
「もしもし〜?聞こえるぅ?」
「ああ、聞こえるぞ」
ギーチェから連絡が来た。見つけたか?
「多分伝説のお花畑ぇ?見つけたんだけどねぇ...」
「ん?どうした、歯切れが悪いな」
「なんというか...ねぇ...とにかく来てもらえるぅ?」
一体なんだというのか。ただの花畑でないことは分かっているような言い方だったが、それにしては嬉しそうじゃないな
「分かった、どこへ行けばいい?」
「私が目印におっきな木を生やすからぁ、その根本に来てくれたらいいよぉ〜」
「分かった」
「スレイさん達にもこっちの方から説明しておくよぉ〜」
「了解」
さて、行くか
遠くで巨木が伸びていくのが見える
「あの根本に行けばいいんだと」
「へいへい、結構歩くけど仕方ねぇな」
そして、その巨木に向かって歩き出した
......
...
白い花が見え始めた...なるほどあれが伝説の花畑なのか。思っていたよりも小規模で、伝説といった感じはしないが
「あ!来た!おーーい〜!」
ギーチェが手を振っている
で、その隣でルシアが寝ている
「よく見つけたなー。さてさて、例の噂は本当なのか...」
レイの言葉が気になった
例の噂?
そして、俺はギーチェの元へ辿り着いた
ルシアはどうしてしまったのだろうか、さっきから寝言をぶつぶつ呟いている
「えへ、えへ、えへへへへ、あー、うん、はい、で、ですね...このっ!このっ!...残念...あ、イノウエさん。ん〜」
まあ、ただの寝言だろう
そんなことを考えていると、重大な一つのことに気づいた
「あれ?この辺...に花があったんじゃなかったっけか?」
「うん...それがねぇ〜」
確かに花畑はギーチェ達の足元にあったはずだった
「この花...近づくと消えるみたいで...」
...
「は?」
「ほ〜、噂は本当だったかぁ」
......
...
そして、スレイ達とも合流し、その花についての話をしていた
「と...いうことなんですよ。それでは実験してみましょうかね〜」
簡潔に言えば、ギーチェの言った通りだ
"近づくと消える花"
細かい仕組みは分からないが、ある程度近づくと透明になる特性を持っていて、それが伝説と呼ばれる所以なんだそう
「では、この花は根っこごと掘り起こすと一体どうなるのか!」
どうやら透明でも感触はあるそうで、ロゼが丁寧に掘り起こしていく
すると
「あれ、あっれ〜?急に感触が無くなっちゃいましたよ!!」
「残念ながら、お持ち帰りは不可能と」
レイがそう言った。そして、その手には小瓶があった
「それに入れる予定だったと」
「はい...レアな花だし、手に持っておきたいな〜と...とても残念です...」
「なるほど、これは面白い花だ」
スレイは石といい、自然由来のものが好きなのだろうか
「では、気を取り直して、今度はレイに手伝っていただきましょう」
「よしきた」
なんだなんだ〜?
「...」
レイが目を閉じ、意識を集中させている
そして、目をカッと見開き
「「ゾーーーン!!」」
なぜかロゼも一緒に叫ぶ
すると、周りの景色が一変した
空は消え、辺りの景色は白い六角形の壁のようなものにかき消された
「なんだこれ?」
俺は口に出してしまっていた
「これはですね、レイのスキルです。戦う時に周りを巻き込まないようにする、いわゆる便利スキルなんですけど、今回の実験のために習得してもらいました」
スキルってそんな簡単に習得出来るのか?俺たちのセンスが悪いだけなのか...
「んでぇ?このあとなにするのぉ?」
「この花は周りの風景を使って上手くカモフラージュしてるんじゃないかと言われています」
仕組みは相変わらず謎だが、魔法の一種なのだろうか
「なので、このように隔離してしまえば透明じゃない、本来の色が分かるんじゃないかと思いまして!」
......
...
しかし、花は依然消えたままだ
「あれれぇ、おかしいなぁ。本来の色、もしくは壁の白色になるとと思ったんですけど...」
そして、俺は花の元に行ってみた
花に触れようとするが、どこにも感触がなく、見当たらない
「ん?確かこの辺だったよな?」
...
「ない...」
え?
「ないです!というかもしかして...」
...
全員が息を呑む...
「全部枯らしちゃったかもです〜!!!」
...
やってしまった
......
...
壁は消え、また景色がもとに戻る
太陽が少しずつ沈んでいく。沈みきってないことから、原因が俺たちにあることは明白だ
「まあ、落ちこまないでください...すぐに枯れてしまう花なんですから...」
スレイがフォローに回る
...
「いえ、これはまた一つ、いいことが分かりましたよ...」
「と、いいますと?」
「きっと、太陽の光が無ければ枯れてしまう花なんですよ!」
なるほど?
「このスキルは周りを完全に隔離する。光源は壁から照射されているから、光の有無とか、そんなんじゃないんだろうな」
「また一つ知識が増えました!枯らしちゃったのは残念ですが、良いことが分かりましたよ!!」
満面の笑みを浮かべて、こちらを見る
えらい前向きなことで...
「あ、出来た」
いきなりギーチェが何かを言い出した
「なんか言ったか?」
ギーチェの方を見て聞く
どうやら地面を見て何かを突っついているようだが
まさか...
「ほらほらぁ、こっち来て触ってみてよぉ〜面白いからぁ〜」
言い方が中年オヤジだ
「え?なんですか.........もしかして、これって!」
ロゼは虚空を見つめ、なにかをしている
「そぉそぉ!この花の生やし方も分かっちゃったよぉ〜!」
...
「またか」
「またらしい」
「どういうことだ?」
「パンダがちくわからはえてきてる〜」
ルシアはまだ寝ぼけている...
にしても、相変わらず、ギーチェはさりげなく凄い事をやってのけるやつだ
「えへへぇ〜」
ギーチェの柔らかく、優しい表情
探究心をくすぐる事象に対して、ドキドキしながら目を光らせるロゼ
そんな、優しい世界
俺の心も、柔らかくなっていく気がした
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