第21話 Follow Me

最近、俺の扱いが空気になりはじめている


「てかおいっ!あの鎌無くなってねぇか!?」


「まさかぁ!?あのケインってのが持ってっちゃったのかぁ?」


「あれ?置き手紙?」


「『これはお前たちが持つのには危険なので、俺が押収しておく』って...ふざけんなッ!!!」


元々、あまり喋らない俺だったが、周りが賑やかになるにつれて、微妙に孤独を感じることが増えた


俺の名前はスレイ


生まれながらの勇者として、日々魔王討伐に向けて戦っている


「まあいい、さっさと行くぞ!」


「相変わらず焦りんぼさんだねぇ〜、ちょっとはゆっくりしたらどうよ〜?」


「俺の性格に合わねぇ」


「そうかぁ〜」


「よし、しゅっぱーつ!」


ルシアも、若干レイズに気があるように見えるが...


「ほらスレイ、何ボーっとしてんだ、そんなんじゃすぐやられちまうぞ」


「あ、あぁ、了解リーダー」


リーダーは凄いと思う


一見脳筋バカに見えるが、采配に長け、いつも会話の中心に立っている


俺たちはずっとリーダーの言う通りに動いている。それがいつも、最善策だからだ


だが、俺はゆっくり動くのが好きだ


目的地に進むことをいつも考えているリーダーとは違い、路端の花を見て、小鳥のさえずりを聞きながら歩くのが俺の好きなことだ


正直なところ、ずっと振り回されているので、疲れている


それでも


「ほら、どっち向きに動けばいいんだ?魔石使って調べてくれ」


「そうだったな」


自分でも忘れかけていたが、元の道へ辿り着けるように魔石を置いていたんだった


マイ魔石ポケットから取り出す


えーっと、どれだったか...これだこれだ


取り出した魔石はぼんやり光っている。魔石の角度を変えてみると光の輝き方が変わる


「こっち方面だ、よし行こう」


「よーし、ナイスだスレイ」


ナイスなスレイ...ナイスレイとか、なんか、語呂がいい


そんなバカなことを考えながら、歩きだす


「相変わらずスレイは気が利くわよね。どっかの誰かとは違って」


「んだぁ!」


「お前ら後でぶん殴る、絶対殴る」


リーダーはいつも、こうはいうものの、決して手は出さない。短気に見えて、余計なことはしない人だ


...


気が利く、か...


「お褒めに預かり、光栄だ」


「何を今更、お前がいないとパーティーがまともに動かないんだからな、しっかりしろよ」


「そうか」


「そうだ、お前いつも魔石をどうやって集めてるんだよ」


「ああ、それか、拾ってるだけだ」


「そんなにたくさん落ちてるものなのかよ?」


「ちゃんと周りを見て歩けば、割と見つかるものなんだ。魔力を感じたら、一体どんな魔石なのか、色々いじってみるんだ」


「ふーん、鑑定スキルでも持ってたら楽なのにな」


「まあ、そうだな」


鑑定スキルか


スキル自体、レベルが上がった時や、何かしらの条件を満たしたり、絶体絶命の危機を乗り越えたときとか、色んなタイミングで身につくものなのだが、なぜか俺たちフラワーフラグメンツは全くスキルを持っていない


普通に持ってる人は沢山いる。その中でスキルが身につかない俺たちは単にセンスがないのか


ま、いつかは手に入るだろう。まさに希望的観測だが、楽天的に考えるほうが、楽だし長続きする


俺たちは他愛もない話をしながら、森を出た


「ここが...森の外かぁ、結構変わっちゃったねぇ〜」


そういえば、すっかり馴染んでるギーチェだが、これは勇者パーティーに入ったってことにはならないのか?


何も影響が無いことだし、まあ、大丈夫なんだろう


「ここがセンド平原か」


「大分見晴らしが良くて、綺麗な感じ〜」


ああ、綺麗だ。朝焼けと相まったこの景色は、これからの旅が良いものになることを思わせる


さて、まずはひと頑張りから、コツコツやっていきますか


この景色で気力を回復させて、これからの激しくなる旅に臨む


あせらず、ゆっくりと。それが、俺。スレイの信条だ

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