第10話 冬から春の写真たち。

私は今、新たに集まった写真を整理している。

年末に薫くんとお母さんと食べたお鍋は美味しかった。

薫くんにお泊まりをしてもらう為にもお肉のちゃんこ鍋にしたらメロメロになって泊まってくれた。

流石に年末…年越しギリギリのリビングは寒すぎて遂にお母さんの部屋に行って布団で寝ていたが、私は皆に「薫くんは根性でリビングで寝るんだよ」と言って鷲雄叔父さんがお正月明けに薫くんの為に布団を一式買ってくれてこれで薫くんは堂々とリビングで眠れるようになった。

まあ実際はリビングで寝る時もお母さんが同衾しているのは秘密にしてあげている。


お正月の薫くんは大忙しだ。

5時に皆で起きて新年の挨拶を私達と交わしてお母さんの栗きんとんを食べて鶴田家に向かう。

朝一番に帰ってきた薫くんに美空さんが「背追い込みすぎて潰れても知らないわよ?」と笑っていて昴ちゃんさんが「平気だよね薫。だって薫は美空さんの息子だから強い子だよね」と言い、美空さんが「違いますよ。薫は昴さんの子供だから強くて優しいの」と新年早々やらかして「父さん、母さん、今年もなの?家がこんなだから俺は麗華さんに頼まれてサラダチキンでお邪魔してるんだからね?」と薫くんが突っ込んだ。


そして両方のお爺ちゃんお婆ちゃんの家に行くと薫くんは「たった一年で薫が男の顔になった」「一人暮らしって凄いわね」と褒められた。

照れる薫くんに美空さんはこっそり私から貰ってたあの日のソファでツーショットを薫くんに見せながら「本当、一人暮らしは凄いですね」と言ったらしい。

薫くんは血の気のひいた顔で「母さん?それ?麗華さん?え?」と言ったら美空さんは笑っていたと薫くんに言われた。


その話と同時に「麗華さん!なんであんなのあげるの!?」と来たが「やましくないならいいじゃん」と返したら「はい」と返事が来た。


そして3日の日はまた鶴田家は亀川家にくる。

皆、お父さんの席も用意してくれていて「ここは龍輝の席だ!」と鷲雄叔父さんの言葉の後で何故かノリのいい皆はひばりおばさんの「黙祷!」と言う言葉に皆で黙祷を始めたので写真は撮った。


お父さんに写真を送っていたことがバレたのはこの時で「お父さんの席はまだあるからね。頑張れ」と送ったらお母さんに「バカ、龍輝が辛くなっちゃうって」と怒られたが昴ちゃんさんに「えぇ、私達もお父さん居なくて辛いって報告してもいいですよね?」と聞いたら「そうだね。麗華さんのメールが励ましになっているってこの前メール貰ったよ」と教えてくれた。


「昴ちゃん!?龍輝とメールしてるの!?」

「まだ2回、薫が役に立ってるらしくて助かってるって言うのとたまに麗華さんがくれるメールが励ましになるってさ」


「教えてよぉ」

「この後言おうと思ったんだけどさ、とりあえず少し食べて落ち着いたらね」


昴ちゃんさんはお母さんが酔ったところで言うつもりだったのだろう。

酔ったところで「龍輝さん、少しだけ近況をくれたよ。頑張ってるってさ。仕事も復帰してバリバリ働いていて、でもそのお金をあの奥さんは受け取らないで実家の援助で暮らしてるって、だから麗華さんに何かあったら遠慮なく言うように俺に見守ってと言ってくれたよ」と言うとお母さんは泣いて申し訳ないと言った後で「でもね昴ちゃん!麗華のおかげだけど薫くんが泊まってくれて夜中に泣くと優しくしてくれるから頑張れてるんだよ!」と始まり、薫くんは真っ赤になって「貴子さん!?」と言うがお母さんはガン無視で昴ちゃんさんの胸で泣くと「薫くんはやっぱり昴ちゃんそっくりだ。胸の感じもよく似てるよ」と言ってしまう。


薫くんは真っ赤で「あの、その」と言ってどうしたらいいか悩んでいる中、「ああ、そうだね。龍輝さんも薫が亀川を慰めてくれてるから安心して頑張れるって言ってたよ。亀川が撮った写真だよね?麗華さんがくれたって奴が俺のところにも来たよ」と言ってソファでツーショットの写真を出して見せると「ごめんね。薫くんに甘えちゃってるんだよ」とお母さんは謝る。


「いいよ。平気だよ。薫ともそれ以上もそれ以下もなければいいんだからさ」

「優しいなぁ昴ちゃん」


お母さんはその後美空さんにも謝ると美空さんは「気にしないで。それに薫も女っ気がないからちょうどいいのよ。まあ年頃の麗華さんとだとキチンとお話しなきゃダメだけど貴子さんはしっかりしてるから平気よ」と言ってくれる。


私は真っ赤で俯いてローストビーフを食べながら勧められるままにビールを飲む薫くんに「良かったね親公認だよ」と言うと「麗華さん意地悪すぎだよ。あれを龍輝さんにも送るとかヤバいよ」と言われた。


そんな薫くんは虎徹から「薫くん!今度ウチにも来て俺と寝ようぜ!」と誘われていた。


そういえばその虎徹にもだいぶ救われた。

新学期になって同じ中学からきた奴らに揶揄われかけた時に虎徹が「どけ雑魚ども」と現れると「麗華!龍輝おじさんの不在中、学校では俺が守ってやる!」と言ってくれた。


「ちなみに麗華、新たなレートが発表された。聞いてくれ」

「虎徹?」


「ひと針2,000円に新たに追加されたのは麗華の敵を蹴散らして停学1日一万円!反省文1枚2,000円!なんと退学なら百万円が支給される事になった。だから俺に容赦も躊躇もない!」


そう言い切った虎徹は絡んできた連中に「雑魚ども!俺の百万になれ!かかってこい!」と言うとパタリと揶揄いは無くなった。


ちなみに近所住まいの子達は「あの新しいお母さんヤバい」と言って教えてくれた。

ゴミ出しルールはかろうじて守るが町会の掃除当番とかは「私はBabyちゃんがお腹に居るし、龍さんはお疲れだからパスで」と言ってしまうとかで評判は悪い。

元々、無理やり略奪婚で評判が悪いのでそれが加速した。


お母さんは後一年は専業主婦をする事になっている。

今リズムが乱れて私の就職活動に問題が出るくらいならあの女の慰謝料で生活をする話になっている。


なのでお母さんは美空さんのお許しを得て薫くんの部屋の掃除までしている。

薫くんは照れに照れて困っていたが、お母さんは「男の子の部屋からエッチな本が出てこないとは…、鷲雄なんて最後の方は置き場がないって教科書捨ててエッチな本にまみれていたのに」と言って笑っていた。

その時撮った薫くんの部屋で掃除機を片手にポーズを決めるお母さんの写真もある。


次の写真はバレンタイン。

私とお母さんで手作りのチョコを作ってこれでもかと彼女感を出したチョコを薫くんに送った。

真っ赤になった薫くんがチョコを食べるのをお母さんと私で挟んで写真を撮った。


ホワイトデーはお母さんに奮発してもらい、薫くんには3人で過ごす1日デートに付き合ってもらった。

ご飯屋さんで3人で並んで撮ってもらった写真は本当に薫くんはお母さんの彼氏か私の彼氏に見えてしまう。



薫くんは泊まる日数をもっと減らしたがったが、週の半分はウチで夜ご飯を食べてお母さんと寝ている。

やましい事も何も起きない健全な夜に驚いてしまうが、まあ20歳近く歳の差もあるから仕方ない。

ただ薫くんも慣れたのだろう。熟睡しながら薫くんの胸で寝るお母さんの頭を撫でたりしている。


彼女ができた時にヤキモチとか凄そうだ。

まあ出来たらそこら辺がOKな人に彼女になって貰いたい。


そして4月のお花見。

今年は土日が晴れていて桜も遅くて後半でも咲いてくれた。

そこで撮った集合写真には亀川家のメンバーと鶴田家のメンバー。そして田中のお爺ちゃんお婆ちゃん、そしてお父さんが写っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る