第6話 渡来愛菜からの手紙。
お父さんは謝罪行脚をした。
まずは亀川のお爺ちゃんとお婆ちゃんだったが、鷲雄叔父さんから全部聞いていたお爺ちゃんは「気にすんな!別にお前のアレが腐っちまった訳じゃねえ!」と励まし?て、お婆ちゃんは「変なのにモテたわねぇ。もう気にすんのはやめなさい」と励ます。
ひばりおばさんは「乙女ね」と変な励ましをして、鷲雄叔父さんは「そこで立ち直れねぇと昴ちゃんさんと美空さんに申し訳が立たねえぞ?」と言っていた。
お父さんはそれでも自分が許せないと田中のお爺ちゃん達の所に行って洗いざらい話してきた。
お母さんも着いて行って「私も…私が悪いんです」と謝って「そんな事はない。貴子さんと龍輝は夫婦の問題に向き合ってただけ」「うまく行きかけていたのに邪魔した女が悪い」と言った後で昴ちゃんさんと美空さんの所に電話をして「バカ息子のために尽力くださってありがとうございます」「これからもよろしくお願いします」と言ったらしい。
お父さんは「貴子、許してくれ」と言って丸坊主にして出社をした。体重は10キロ近く痩せて丸坊主で事態の重さを理解した会社はお父さんにキチンと再発防止に努めると謝ったらしい。
謝って済む問題ではないと思う。
そして気付けば夏になっていた。
鷲雄叔父さんが「8月に皆でパーっとやろうぜ?な?」と盛り上がった時、渡来愛菜から弁護士宛に郵便が届いた。
そこには「田中龍輝の子を妊娠した。勿論産む」と書いてあった。
弁護士さんは美空さんから刺激の強い内容は事前に美空さんに一報入れる事になっていた。
それはお母さんもお父さんも鷲雄叔父さん達からも頼まれていた美空さんは「私でもこんなにショックなんです。昴さん、龍輝さんの所に行きましょう」と言ってくれて次の休みに朝から来て「龍輝さん、落ち着いて聞いてください」と昴ちゃんさんが始めてくれた。
「弁護士さんから連絡が来ました。なんでも例の彼女からお手紙があったそうです」
お父さんはそれだけで震えた。
ようやく坊主頭はマリモみたいになっていて、お母さんと私、薫くん達で笑い飛ばしていてお父さんも徐々に笑顔が戻ってきていた、そこでの渡来愛菜の再来にお父さんは震えてお母さんも愕然とした顔をした。
「て…手紙にはなんて…」
「読みますか?聞きますか?」
「昴は読んだのか?」
「いえ、話だけ聞きました」
「済まねえ…読んでくれないか」
「では俺が読んでここで読む内容だとしたら読み上げますが、不適切なら内容だけ伝えますね」
昴ちゃんさんは手紙を取り出して読むとものすごい怖い顔で顔を顰めた後で「龍輝さん以外は読まない方がいい内容です。亀川や麗華さんは読むべきではない。龍騎さんも読むなら落ち着いてからの方がいいです。今は内容だけ伝えます」と言った。
お母さんが「昴ちゃん…怒ってる…」と聞くように口にすると昴ちゃんさんは「怒るよ。命を馬鹿にしている。亀川や麗華さんの事も馬鹿にしている」と言って怒りをあらわにした。
その怒る昴ちゃんさんの手を美空さんが握って「落ち着いてください」と言う。
深呼吸した昴ちゃんさんはお父さんに「渡来愛菜さんが妊娠したそうです。そして何があっても産むそうです。そして父として産まれてくる赤ん坊と渡来愛菜と共に生きて欲しいそうです。キチンと妻として支えて後悔させない。幸せにするという意味合いの文章が書かれていました」と告げた。
私は後でお父さんに「私も娘だから読ませて」と頼んで読んだ手紙は酷かった。
軽薄という言葉が最適な手紙だった。
[龍さんへ
アタシのお腹には龍さんとのBabyちゃんが来てくれたんだよ。
あの日以来会えてないけど、酔って本音の出た龍さんは泣きながらアタシを抱いてくれたよね。アタシがもっとと頼んだら応えてくれて超嬉しかったんだ。
アタシは龍さんへの気持ちは本物だからシングルマザーになっても産むね。
でも出来たら龍さんを幸せにしない奥さんとバイバイしてアタシを奥さんにして?
アタシ龍さんを幸せにするよ。
Babyちゃんのお姉ちゃんも龍さんが頼んでくれてお姉ちゃんも仲良くしてくれるなら4人家族もOKだよ。
最後にもう一度書くけどアタシはシングルマザーでもBabyちゃんを産むね。龍さんとのBabyだから愛するよ。ちゃんとした大人にするね。でも龍さんと家族になれたら超サイコーだからアタシを選んで欲しいな]
そんな内容だった。
国語の勉強で薫くんが「麗華さんの手紙は友達には良いけど真面目な手紙には使えないから頑張って書けるようになろうね」と教えてくれた事が思い出された。
お父さんはその話に震えて「殺してくれ…死なせてくれ…」と言って頭を抱えて泣き叫んだ。
この時は手紙の内容を読んでいない私達だったが事態の深刻さにお父さんは壊れかけてしまった。
だがそれを昴ちゃんさんは許さなかった。
「龍輝さん!しっかりしてください!亀川と麗華さんのことを考えて踏ん張るんです!」
「す…昴?」
「確かに赤ん坊のお父さんは龍輝さんなのかもしれない。認知云々、お金で解決するのか、裁判で争うのか、亀川や麗華さんを幸せにする方法を考えるんです!」
「お前…なんなんだよ?優しいのか?厳しいのか?」
「俺にもわかりません。でもこれは亀川と麗華さんにも決められない事です。龍輝さんが答えを出すことです。話なら聞きます。頑張ってください」
お父さんの肩に手を置いて強い言葉で励ます昴ちゃんさんを見てお母さんが「昴ちゃん…」と声をかける。
昴ちゃんさんはお母さんを見て「亀川、亀川にも悪いところがあったとしてもこれは亀川が責任を感じる話じゃないよ。ただ、龍輝さんを最後まで見守ってあげてね。話ならいくらでも聞くからね。抱え込んじゃダメだよ?」と言うと、お母さんは涙を堪えて「うん。わかった」と言った。
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