第3話 2-1
ここはとある公立高校。今は放課後。
私(聡子)とクラスメイトの恵美は、教室の窓から野球部がグランドで練習している様子をぼんやり眺めていた。
「あ~あ、ヤダな~。またしても数学の補修だなんて」
恵美が不満を漏らす。前にも言ったかも知れないけど、私と恵美は数学が大の苦手。
いよいよ進級の危機という事で、今週の木曜日もまた補修を受けさせられている。
「西岡先生は若くてカッコイイんだけど、数学の先生ってのがマイナスポイントなんだよな~」
・・・て、先週も同じような発言をしなかった?繰り返しになるけれど、その西岡先生こそが、私達二人の補修を受け持ってくれている教師なの。
すると教室の前の戸が開く。西岡先生のご登場よ。
「さ、今週も頑張って数学のお勉強と行こうか」
私と恵美は、またしても、そうまたしても半分うんざり顔になりながら席に着いた。
補修授業という事もあり、私達は隣同士に座っている。先生も机を半回転させて私達と向き合うかたちで目の前に座った。
「おいおい。今週もかよ?そんな顔しないでくれよ」
西岡先生は苦笑いを浮かべた。
「だって数学って全然サッパリなんだもん。もうちょっと分かり易くならないのかしら?ねえ先生?」
先週と殆ど同じコメントだよ、恵美。
「あのな~、毎週っていうか、ずっと伝えてるつもりなんだけど、数学ってのはきとんと学べば誰にでも・・・」
恵美がすかざず手で制する。
「理解できる学問なんだよ。ただ、積み重ねが大事な学問だからな。分からないところをそのままにしてしまうと・・・(以下略)」
でしょ?先生、と、恵美がニヤけた顔で後を続ける。
「私達のために熱弁奮っててくれるのは嬉しいんですけど~、補修なんかやめて一緒に遊びに行ってくれたらもっと嬉しいかも~」
と私も続けてみる。
「おいおいおいおい。そんな事したら色々と問題だってのに。同じやり取りを何回繰り返すんだよ?」
カーン。ボールがバットの芯にヒットした。心地の良い乾いた音がこの教室に響き渡る。
それが何かのスイッチになったのか、先生の表情が微妙に変化した。
「よし、じゃあ。今からあるクイズを出してやる」
「またですか~!?」
とすかさず私。すると今度は西岡先生が手で制し、
「先にクイズに正解できた方は、今日の補修は免除だ。帰っていいぞ」
と恵美と私を交互に見ながら言った。
「マジすか!」
キラキラと目を輝かせながら身を乗り出している恵美。
良いじゃん良いじゃん。私も心の中で思いながらニコリと相好を崩していた。
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