第2話 2-2

「まず、二十よりも大きな二桁の数を思い浮かべてくれ。何でもいいぞ。おっと、二桁の数って分かるか?」

西岡先生が恵美と聡子の二人に揶揄するような笑顔を向けます。


「それぐらいあたし達にだって分かりますよ〜!」

聡子が脹れっ面を作ります。二桁の数とは十から九十九までの数のことです。

西岡先生は二十よりも大きな二桁の数を要求しているので、二十一から九十九まで

の数を思い浮かべれば良いことになります。


「えっと二十よりも大きな、二桁の数ね・・・・」

恵美が独り言を呟いています。思案の結果、恵美は二十一、聡子は七十三を思い浮かべました。

「思い浮かべたようだな。じゃあ、思い浮かべた数の十の位の数と一の位の数を足してみてくれ」


「えっ! 十の位と一の位を足す、ですって!?」

聡子が驚きの声を挙げます。


「あ、あたし達にそんな高度な計算ができるかどうか・・・・」

恵美の顔は、一抹の不安を隠しきれない、まさにそんな表情になっていたのであります。

「大丈夫だ、自信を持て。恵美、聡子、お前達はやればできるんだ! Y es; you can:なんじゃぞ!!」


西岡先生は不安に苛まれている恵美と聡子を叱咤激励したのであります。

「はい! 分かりました、先生。できるだけのことはやってみます!!」


 恵美と聡子の二人は声を合わせて頷いたのでした。

それは全身全霊を捧げ、思い浮かべた二桁の数の十の位と一の位の数を足すという、

決意表明の表れでもあったのです。


恵美の思い浮かべた数は二十一。十の位の数が二、一の位の数が一でありますが故に、

十の位の数と一の位の数を足すと三となることが分かるのであります。


一方、聡子の思い浮かべた数は七十三でしたから、

同様の考えで彼女の十の位の数と一の位の数の和は十となります。


「せ、先生・・・・何とか十の位の数と一の位の数を足すことが・・・・できました」

恵美が命からがら、息絶え絶えになりながらも、

何とか苦難を乗り越え目標を達成したというサインを西岡先生に送ったのでございます。

「あたしも・・・・、できました・・・・・。本気でもう駄目かと思った」

聡子も恵美に続きます。


「まことかッ! 何ということじゃ。これだけの難業をこんな短時間でこなせてしまうとは!

お、お主たちは賢者としての大いなる素質を秘めているのかも知れん・・・・」

西岡先生が驚きの表情を露わにして言います。そして、

「では、次の試練じゃ」と続けたのであります候。


「ゴク」

恵美と聡子の息を呑む音が如実に教室内に響き渡ります。


それは例えるなら、エンジン音を聞いただけでブルドーザーの音と認識できるような、

とにもかくにも・・・・つまり、要は言いたいのはそれだけ緊張が増したってことなのであります、はい。

「次は、最初に思い浮かべた数から十の位の数と一の位の和を引くのじゃ」


西岡先生が言い終えるのとほぼ同時に、

「な、なんですってーーーーーッ!?」

と、教室内に聡子の断末魔の叫び声が響き渡ったのです。

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