第2話 1-1
むかしむかしあるところにオババという魔法使いの老婆が、
森の奥深くにある大きな屋敷に一人暮らしていました。
そんなある日、オババの家に一人の少女が訪ねて来ました。
「初めまして。あたしはレイラと言います。あなたが偉大な魔法使いのオババ様ですか?」
少女は恐る恐る訊きます。
「いかにも。この私に何の用かの?」
オババはまるで目の奥を覗きこむかのような、そんな不気味な顔をしていました。
ところがレイラは、不気味なオババの表情に臆する様子もなく、
かえってむしろ笑顔を作って
「あたしもあなたのような偉大な魔法使いになりたいのです。どうか弟子にして下さい」
とオババに弟子入りをお願いしたのです。
「ほう。なかなか肝のすわった子じゃ。レイラよ、何故魔法使いになりたいのじゃ?」
「あたしは限りなく繰り返される平凡で退屈な毎日が嫌になりました。魔法を覚え、
毎日を楽しく楽に生きたいのです。でも、厳しい修行とか、そういうの面倒
臭いから手っ取り早く教えて下さい。どうせそんなに難しくないでしょ? 魔法覚えるのなんて」
「・・・ほう。なかなか肝のすわった子じゃ(ある意味)」
「さ、じゃあ勿体ぶってないでさっさと教えて下さい」
魔女オババは、レイラの図々しい態度に怒る様子もなく、
「良いじゃろう。ただし、条件がある。この手紙をチック村の村長に届けてきて
ほしいのじゃ」
と懐から手紙を取り出しました。
「え~、面倒くさいなぁ。チック村ここから結構遠いし~。自分で行けばいいじゃ
ないですか、瞬間移動の呪文でも唱えて。そんなことより早く魔法を教えて下さい。
時間が勿体ないでしょ」
するとオババはレイラに向かって両手を振りかざし、ある魔法をかけたのでした。
みるみるうちにレイラの顔が泣き顔へと変わっていきます。
「偉大なる魔法使いオババ様、ああああ、あたしが間違っていましたです! 図々
し過ぎました。この世に神様が十人居たとしたら、誰一人としてあたしの行いを
お許しにならないことでしょう。今こそ、はっきりと目が覚めました!!」
涙を流しながらレイラは訴えます。
「では、チック村までおつかいに行ってくれるかの?」
「行きます!!」
レイラがキラキラと目を輝かせながら頷きました。
「本当に大丈夫かい? 山あり谷ありの長くて辛い旅になるやも知れんが」
「覚悟は、できています!」
レイラはオババに対し、とても真摯な眼差しを向けながら、手紙を受け取りました。
そして、いよいよ出発の時です。
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