第1話 2-1

 季節はまだ秋だというのに記録的な寒波が到来し、雪が降り積もっている。


「できたぁ♪」

四つ子の姉妹とその母親である怜希は家の庭で雪だるまを作っていた。きちんと

顔も描くと、とても可愛らしい表情が出来上がった。

「可愛い雪だるまさんができたね」

怜希は四つ子達に語りかけた。

「うん」

四つ子達が皆満足そうに頷く。


四つ子の服装・格好はどれも同じだったが、長女と四女は青色の長靴を、

次女と三女は赤色の長靴を履いていた。長靴には名前が

書いていないので、二足の青の長靴のうち、どちらが長女のものでどちらが四女

のものなのか、怜希には皆目見当がつかない。赤のものにしたってそうだ。


しかし、四つ子達は皆、どれが自分の長靴なのか分かるのだそうだ。

だから、間違って次女が三女の長靴を履き違えてしまうということはなかった。

子供達にしか分からない見分け方があるのかな、と怜希は考えたものだが

結局は分からなかった。


四女「じゃあ、あたしは中に戻ってようっと」

雪遊びに飽きたのか四女は足早に家の中へと入っていった。


その後怜希と長女、次女、三女の三人が雪合戦をしていたが、

頃合いを見計らって怜希は家の門の前の雪かきを始めた。

門に通じる通路も含め、路面の凍結を防ぐためだ。


陽も暮れ始め、次第に冷え込みが増してきた。

「そろそろ寒くなってきたから、家の中に入って暖まってなさい」

と、怜希は三人の娘達に向かって声をかけた。

「は~い」

娘達は寒い寒いと言いながら家の中に入っていった。


怜希が雪かきを再開させる。

古くからの土地持ちの家柄でるため、家は大きく庭も広い。門も立派なつくりを

しており、雪かきをするにもなかなかの重労働だった。


「これぐらいでいいかしら」

作業を終わらせた怜希は顔をあげ、ふと先程作った雪だるまの方向を見た。

するとおかしなことに気がついた。


雪だるまの頭が無くなっているのだ。怜希は訝りながら、急いで雪だるまの方へと歩み寄った。

周りを見渡すと数十メートル離れたところに頭を発見した。

近くに行ってみると、五人で苦労して描いた顔が滅茶苦茶にされている。


「せっかく作ったのに。あの子達の誰かがイタズラをしたのね!」

怜希がこう言うのは、滅茶苦茶にされた頭の近くに真新しい足跡が残っており、

それが家の玄関先へと続いていたからだ。足跡は複数のものではなく一人だけのものだった。

つまり、イタズラ犯は単独犯ということになる。

しかも、頭のある位置は門からは死角の位置となっていた。


事実、怜希も誰がいつ雪だるまにイタズラにしたのか全く分からなかったのだ。

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