第14話 チートでパーティーハウスに入居する

晩飯がてらに物件を見に行くことにする。


冒険者が帰って来る時間帯なのか、ギルドの前には何人かの見知った顔がたむろしていた。


俺は貰った合鍵で精肉店跡に入る。






「一階が店舗かあ。


この間取り、肉屋か解体屋に特化した間取りだなあ。」






「兄弟子、微かに肉の臭いしますね。」






『俺達は麻痺してるけど、一般の人からしたら生臭いかも。』






「俺も乾燥屋だから鼻がマヒしてる。


臭いはわからんな。 でも、ああ分かる。 何か独特の臭いあるな。」






まあ、解体を始めたらこんなものじゃないけどな…


次に地下部屋を覗いてみる。


あまり使ってなかったのか、ここは新築の様に綺麗だった。


扉の無い無造作なブチヌキ空間である。






「ドラン、ここで乾燥行ける?」






「地下丸々乾燥に使うのか?」






「いや、どのみち敷居が無いから単一の目的にしか使えないだろ?


リフトもあるし、ここなら干し肉系を楽に作れるんじゃないか?」






「リフトはありがたいな。


うん、ここならスペース的にも十分だし、肉系か皮系を干せるよ。


食品衛生法があるから、両方同時には干せないけど。


単価の高いものだけを処理すれば、ここは儲かる空間になる。」






二人は俺を見る。


あ、そっか。


俺が判断しなきゃいけないんだ。






『一番キャッシュを稼げる体制にしましょう。


乾燥室の事はよく解らないんですけど、専門家のお二人から見てそれが儲かるなら


一旦その態勢にしてみましょう。』






続いて2階。


事務所っぽい間取りの部屋や、倉庫っぽい部屋がある階。


オフィス階なのかな?








3階に昇る。


リビングやらダイニングやら。




「ここは共用スペースですね。」




「結構生活感あるな。」










4階。


生活用の部屋が6つ。


これが寮なのかな?


シャワールーム・トイレもある。






5階。


ここは生活用の部屋が3つ。


一つ一つの部屋が大きい。


4階が独身寮とすれば、こちらは家族寮・夫婦寮の間取り。


広めのシャワールームとトイレ。








屋上。


小さい倉庫の様な建物がある以外は、洗濯干場の様になっている。








『みんな。


この物件、どう使いますか?』






「あー。 


あくまで乾燥屋視点で言わせて貰うとな?


地下と1階だけで、充分ペイできるわ。


貴重な皮を屋上で干させてくれれば、尚Goodだな。


冒険者ギルドの隣という要素もあって、どうやっても儲かる立地だと思う。


後、1階店舗に直接荷車搬入出来るのが強いな。


通りに面してカウンターもあるし。」






「思ってたより綺麗だから、軽く掃くだけで使えると思う。


残置物も使えるの多そうだし。」






ラルフ君とドランさんが宿に荷物を取りに行ったので、俺とバランで残置物チェック。


3階の倉庫に精肉機器・厨房機器が充実していて助かる。


業務用の燻製器や中型製粉ミキサーも見つけた。


今夜から施設を使いたいので、冒険者ギルドの売店が閉まる前に買い物に行く。


清掃道具一式、飲料・簡易食(カロリーメイトみたいな奴)を購入。


ギルドの奥にある商店街で閉まりかけの家具屋を見つけたので、寝具4人分を買わせて貰う。


大将の機嫌が良かったのか搬入してくれる。






男所帯なので、それだけ揃えれば一晩くらいは何とかなりそうだった。


皆でホコリを落すと、4階の独身部屋を割り振った。


バランが「チートの物件なんだから5階の広い部屋を取りなよ。」と勧めてくれたが、降りるのがしんどそうだったので4階の部屋を貰う。


日本とは仕組みが違うのか、シャワールームの水が出たので汗だけ流して、その日は寝た。






朝起きてから改めて独身部屋を見回すと、ベッド・タンス・食品用収納箱が揃っており、もうこれだけで暮らして行けそうだった。


3階に降りるとリビングで3人が食事をとり始めており、ドランさんが俺にもミートリゾットを出してくれた。




『すみません。


俺だけ遅く起きてしまって。


ドランさん頂きます。』






「家主なんだからもっと堂々としろよw


ガッツリ儲けたら美人メイドを雇おうぜ!」






「賛成!」


「賛成です!」


『賛成!』






朝食時にこれからの予定を決める約束だったのだが、「美人メイドと恋に落ちたらどうする?」という話題で盛り上がる。


いや、本当に恋に落ちてしまったらどうしよう?


割とマジに悩む。




そこからは惰性。


何となく1階に降りて、皆で解体場のセッティング。


足りない備品をバランとラルフ君が買いに行く。


次いで、地下にドランさんと乾燥器具を配置する。


肉屋の地下室だけあって、壁に台所みたいな作業スペースが埋め込まれていて、これはかなり良物件らしい。






「卸値はスパイスジャーキーが一番高いから、塊肉を干してから香辛料処理しよう。


こっちに下ろす肉の優先順位はベア・オックス・スネーク・トードで頼む。


後は漬込槽が欲しいな。  この後買ってくるよ。」






『3階の倉庫にそれっぽい物がありましたよ?』






「え? マジ?  助かるなぁ。」






『燻製器っぽいのとか製粉機っぽいのも見かけました。』






「おおおお!


いきなりイージーモードに入ったなぁ。」








3階の倉庫を漁ると当たり前のように漬込槽があり、スライス器や骨カッターなどの業務用品まで発見出来た。


ドラン曰く、「乾燥屋的に勝確!」とのこと。


素人目に見ても『解体屋としても勝確』な気がする。


その後、ドランが店内を雑巾掛けしだしたので、俺は店前を掃く事にした。






何人かの冒険者に「肉屋再開するの?」と聞かれたので『解体屋にしようと思います。』と答えると皆が嬉しそうな反応をしてくれた。




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弊サークルのメイン活動は音声作品制作なのですが、何か作って欲しい作品があれば気軽にお声掛け下さい。


(by 蒼き流星ボトムズ)


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