第26話「鋭い姉さん」


 ファミレスから出て二人を家まで送り俺たちも家に帰宅する。


 まさかのまさか、継母の連れ子が元恋人だった――それも最近修羅場に遭遇して秘密を守るために色々してもらっているという条件付きな色々と修羅場に染まっている元恋人だったなんて頭のおかしなシチュエーションになっていたっていうのに意外にもなんとかなるものだ。


 現実は小説よりも奇なりと言うが——なんだかなって感じだ。

 とはいえ、まだまだここからし、余り気負うのもよくない。

 

 まぁ考えてみれば、一緒に住んだりするところまでは決まってないようだし、一応この家のアパートを借りてもらって関係が落ち着くまでは様子を見るらしいからなんとか隠し通すこともできそうだ。


「ユウちゃん、先に風呂入ってきなよ」

「ん、あぁ。わかったよ」


 靴を脱いでると洗濯機に洗剤を入れようとしていた姉さんにそう言われて服を脱いだ。


 隣で上着を脱いで下着一丁になっていると隣から視線を感じる。


「なんだよ、そんなにジロジロ見て」

「ん〜〜。別に?」

「目がエロいんだけど」

「はははっ。まさか、ユウちゃんの事は大大大好きだけどさすがにねぇ。発情なんて……はぁ、はぁ、し、してないんだよぉ〜〜、はぁ、はぁ」


 うちの姉さん、怖い。

 鼻息が荒くなってるし、俺が下着まで脱いだ途端齧り付くように見てくる。


 この人、時雨にも同じようなことしたりしないかな。あいつ、絶対に鼻の穴へし折る勢いで殴るだろうし。そう言うことしなければいいけど。


「——って、なんかユウちゃん、失礼なこと考えてないかなぁ?」

「え、失礼⁉」

「あぁ、やっぱりそうなんだぁ~~」

「い、いや別に……そう言うわけではないけど。姉さんが今みたいなこと時雨n——じゃなくて時雨さんに言わないかなと思って心配で」

「……ま、まさか、ユウちゃんっ! お姉ちゃんの事そんな目で見ていたの⁉」


 痛い痛い。

 俺の反応に姉さんは肩を掴んで揺らしてくる。


「いや、だって姉さん誰にとっても同じ感じだし――時雨さんが少し心配で」

「……むぅ。なんか、すっごく悪者扱いされてる気分なんだけど?」

「まぁ、ね?」

「うわぁ、ユウちゃんもしかして私を悪者にして時雨ちゃんの事狙ってるんでしょ~~」

「な、なわけ! そんなわけないだろ!」


 なんかまぁ、すっごく今のシチュエーションにそっくりって言うか。狙ってないとも思ってはないけど——ってあれ、姉さんの顔が少し。


 おっと、まずい。

 ことが事のせいでつい強く言ってしまった。


「あれ、どうしてそこまで否定するの? なんかそれだと時雨ちゃんにひどくない?」

「あ、いや……別にそう言うことじゃない、けど」


 ミスった。

 少し苦しかったが誤魔化すと何か分かってくれたようで「ふぅん」と呟いた。


「じゃ、姉さん。俺入るから」

「あ、そうだ」

「え?」


 さすがに姉さんの前でおっぴろげるのも何か嫌で出て言ってくれるのを待っていると——何かに気が付いたのか手のひらに拳をポンッと落とした。


 すると、俺の方を見て一言。


「ねぇ、せっかくだしさ。私と一緒にお風呂入らない?」

「え、な、なんで?」

「んーなんとなく? 久々にさ、いいでしょ?」

「……いや流石にそう言う年じゃな――」

「いいわよね?」


 満面の笑み。

 何か裏側に怖いものを感じてこくりと頷く。


「そぉ、いい子ね。じゃあ先に入っていて」

「う、うん」


 まったく、どうしてこうなったんだ。





 先に身体や髪を洗っておいて湯船につかって待っていると後からタオルを巻いた姉さんが風呂場の中に入ってきた。


「まったぁ~~?」

「待つも何も望んでないんだけど」

「何か言ったかな、ユウちゃん?」

「なんでもない」

「うん、いい子ね!」


 怖くて姉には逆らえない。

 俺の事が好きなのか、どうなのかよく分からないな。もしかしてこれが尻に敷かれる夫って言うやつなのだろうか。


 そんなことを考えていると姉さんは鼻歌を歌いながら髪を洗い始めた。姉さんは意外とあまり美容には力を入れていないようで家族兼用のシャンプーを手に取って泡立たせる。


 まぁ、男ばっかりの家系だったから無理もないだろうけど、巷で聴くが女子はその辺気にするらしいし、そう言われると不思議なものだ。


 ちょっと皮肉なのが、姉さんは意外にも顔は整っていて、肌も綺麗なところだけど。


「ふぁ~~なんかこう見るとユウちゃんも大きくなったよね~~」

「まぁ、高校生だし」

「あははっ、そうだねぇ。あそこもすっごくたくましくなって!」

「どこ見てるんだよ、姉さんは」

「え、胸の事だけど?」

「胸?」

「胸筋だよ~~まったく、ユウちゃんはお姉ちゃんとそう言うことしたいのかなぁ?」

「なわけないだろ! そんな試すようなことしてっ」

「あはははっ‼‼ ごめんごめん!」


 紙を洗い流しながら高笑いする姉さん。

 いつの間にかタオルが落ちて、胸が露わになっていた。


 思わず乳房に目が吸い寄せられて、すぐさま目を逸らそうとすると急にこんなことを言い出した。


「あぁ――っとそうだそうだ」

「ん、な、何?」

「時雨ちゃんのことなんだけどさ」

「うん?」

「もしかして、二人って知り合いか何か?」



 その質問に思わず絶句する。

 そう、俺の姉さんは勘だけはものすごく鋭いのだ。




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