第15話「というわけで先輩のお前に相談がある」
「はいはいはい、そんなこんなで唐突にデートのお誘いが来たから言っていいか迷ってるって?」
「あ、あぁ、そうなんだよ……マジで昨日の今日でさ、びびったつーか。正直イラスト用の新しい機材買いたいからって理由で本当に俺誘うのかなって……」
翌朝の学校の昼休み。
俺は後ろの席に座る五郎と前の席に座る相沢を食堂まで連れ出して相談してみることにした。
ちなみに弁当は今日は無し。
時雨が用事があって作れないと連絡が来たのでいつも通り(?)のコンビニ飯だ。
――とコンビニのおにぎり片手に相談をしてみたんだが、早々二人とも顔がややおかしい。
俺は何か、変なことを言っただろうか。
なんか変に口角が上がっているというかなんというか、少し怖い。
「ねぇねぇ、いいんちょーは時雨ちゃんと付き合ってたんだよね?」
「え、いやまぁ、そうだけど」
「じゃあまず、一言いいかな?」
いつも頼りになる笑顔な相沢さんが目が笑っていない笑顔でこう言った。
「ねぇ、後輩面すんの、やめてくれない?」
「あぁ、全くもってその通りだ。俺たちの中にも礼儀あり、それが分からないのか? 兄弟?」
え、怖い。
なんかやっぱり怖いぞ、この二人。
いっつもは陽気で優しく接してくれる相沢さんと、五郎のやつは——いや、なんもないな、こいつはいつもと一緒かなぁ、すまん。
「おい、今なんか失礼なこと考えたよな?」
「え、いやっ——別に」
やばい、表情に出てたか。
ってそうじゃなくて、なんでこの二人はそんなに怒ってるんだ?
俺は別に真剣に相談してるだけのつもりなのに。状況が呑み込めなくて余計に怖い。
しかし、俺がモヤモヤしていると五郎のやつがニマァとしながらこう言った。
「まぁ、んなことは良くてだなぁ~~俺らは先輩面してくれないお前に腹立ってんだ」
「いや、別に——っていうか俺たち同学年じゃん。別に何でおれが偉そうにしてなくちゃいけないんだよ」
「お前が偉そうじゃないからイライラするんだ」
「えぇ、私も同じ委員長職だからこそイライラするわね。その言い方は」
「相沢さんも……」
どうやら、知らぬ間に俺が何かしたらしい。
皆目見当もつかんが。
すると、またもや五郎が尋ねてくる。
「おい、俺はどうした、俺の心配は」
別に他意はないが肩を揺らしながら聞いてくる五郎にイラっとして挑発する。
「五郎は……うん、別にいかな」
「おいおい、さすがに悲しいから勘弁してくれ」
「まぁまぁこのどんぐりハゲなんてどうでもいいから私の話を聞いてくれないかな? いいんちょーくん?」
「おま、ドングリハゲっ——だと!?」
いつの間にか色々と話が脱線していたが、今度は今度で二人の争いが始まった。
実際、五郎は野球部で坊主だしそれは言わずもがな。
俺も小学生の頃はハゲとかどんぐりとかおにぎりとか言って馬鹿にした気がする。あぁ、いやいじめじゃないからな。あっちだって陰キャとかロン毛だとか弄ってきたしどっちもどっちだと思っていただきたい。
にしても、そうかどんぐりハゲか……いいね。気に入ったかも。
「いいからいいから、ただの生徒は委員長の私に従いなさいな」
「なんだその急なカースト制度!?」
「え、知らなかったの? 高校の中で一番偉いのは生徒会長でその次が副会長で、その下に生徒会があって、その下に学級委員長会がくるんだよ?」
「じゃあ俺はなんだよ……」
「あなたはそうね、一番下。えたひにんかな?」
「ふざけんじゃねえ! ほぼ奴隷みたいなもんじゃねえか!! 急にタイムスリップもするんじゃねえよ!」
はぁ。
どうやら俺の相談はそっちのけの様だ。
喧嘩始めたし、俺は細々と飯でも食おう。
「「っておい」」
「何食ってるのよ」
「え、いやぁ——なんか喧嘩し始めたから。あ、もしかしてお二人は犬猿の仲ってやつ? 喧嘩するほど仲がいいっていうか?」
「こんな女との仲はないね」
「私もこのどんぐりハゲと仲良くはしてないわよ?」
「んだとぉ、この百合百合ロン毛!!!」
「うわぁ、あんた今どきLGBT馬鹿にするとか時代遅れすぎ……」
「はっ。じゃあお前だって坊主を馬鹿にするんじゃねえってんだ。どっちも同じだ。特別扱いとかするんじゃねえっ」
「はっはーん。そう? あなたには分からないのね、有紗ちゃんの可愛さを~~女の子は最高なのよ? 可愛くて綺麗でキュッとしてて~~」
「んな!? おまえっ、まさか俺の有紗と……!?」
「いや五郎のじゃないだろ」
「うっせえリア充が!」
「っひ」
なんだよ、別に言ったっていいだろうが。
それに俺には彼女はいないぞ。元カノだし。
「んで、そろそろ相談に乗ってくれないかな?」
「ん、あぁ、そうだった」
「私も忘れてた……なんかこのどんぐり頭のせいで忘れてた」
「おい、一言余計だ。あとこれ以上言うな、そろそろ傷つく」
「有紗ちゃんに慰めてもらえばいいでしょ?」
「……その手があったか‼‼‼」
「おいおい、二人とも斎藤さんはものじゃないんだぞ……」
「ん、そ、そうだな! 俺が自分の力でやんなきゃだめだもんな! おお、なんか今度のデートもすっごく行ける気がしてきたぞ」
「……それで、こっちはどうすりゃいいんだよ。てかなんで勝手に五郎の相談会になってるんだよ」
「あはははは~~それで、えっと、いいんちょーもデートに行くんだっけ?」
苦笑いを浮かべながら視線をこっちに移した相沢さん。
いつもは真面目に楽しく委員長をやっているはずなのに、なんかこうもなると話しづらいな。
「誘われたんですよ、さっきも言ったじゃん」
「あぁ、それもそうね……えっとね。そうだね。一応一緒に行くつもりなんでしょ?」
「まぁ、そりゃ――断る勇気なんてないし、もちろん俺も行きたくはあるので」
「それなら普通に行けばいいんじゃない?」
「え、いやぁでも俺たちって一回付き合ってたんだよ? そんな軽く言っていいものなのか不安だし」
実際、デートは何度もしたことがある。そりゃキスだってしたことあるんだ。デートくらいは割と早めに済ませているし、付き合う前から二人で出かけることだってあった。
あの頃は俺も時雨も積極的でお互い気負わず話せていたが——今や色々と違いすぎて逆に初めて言ったカラオケデートよりも不安だ。
何を話せばいいのか、何をしたらいいのか、何をしたら喜ぶのか。
時雨の好きなものはわかってはいるけど、だからと言ってそれで胸を張れるほどのデートをできる自信がない。
「それなら時雨も一緒でしょ? そこは2人で模索していけばいいんじゃない? ほら、時雨ちゃん別に悪い子じゃないし」
「まぁ、そうだけど……」
「時雨ちゃん結構敏感だからねぇ~~私が色々すると反応しちゃうけど、やっぱり怒ったりしないし優しくていいじゃない? 男の子にはちょっとツンツンしてるっぽいけどさ~~」
「……」
結構敏感?
色々反応?
え、二人で一体何をしてるの?
「あ、これ言っちゃいけないんだっけ?」
「はい?」
「ごめんごめんこれはうそね、わすれて~~」
いや、できるか。
この事についてあとでしっかり聞いておくか。
「ま、まぁ、そんなに言うならゆっくりやっていくけどさぁ」
「あぁ、そうそう! そうよ、ゆっくりいけばいいの! 早く付き合いたいって気持ちでいると失敗するし、コツコツ重ねよ!」
サムズアップして言ってくれる相沢さん。
なんか不安だけど、頑張ってみよう。
家に帰り、時雨にメッセージを送る。
『明日、でいいならいく? 学校帰りに」
『うん。じゃあ玄関でね』
【あとがき】
というわけで投稿遅れてしまってすみません。
ちょっと伸びがガクッと下がってしまって書く気が起きなかったって言うのもあるんですが毎日投稿はしたいので何とか間に合いました。まじすんません。
二度目の金曜日と言うことで明日から彼女とデートに行く読者様も多いんですかね~~。そんなことを思いながら書いてみました。デート誘い回。次回からはデート回になるのでお楽しみに~~。
PS:書きすぎてカクコン用が書けない負のスパイラルに陥りました。あと800フォロワー突破ありがとうございます。
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