第14話「デートに誘うのとかありなんじゃない?」
「デートに誘う?」
「うん、いいんじゃないかしら?」
一夜明けて今日、私は有紗のショッピングに付き合っていた。
どうやら、彼女は彼女でしっかり恋愛をしていて今度仁志田君と二人っきりで水族館に行くことになったらしい。人の事は差し置いてグイグイと先に行ってしまう彼女に嫉妬が止まらないのも最近の悩みだったりする。
まぁ、こうして相談を聞いてくれるのは感謝してるんだけれどもね。
「そう、か……デートに」
「まぁ別に初めてってわけじゃないしいいんじゃないの? ほら、だっていろいろ手伝ってくれるって言ってたんでしょ?」
「それはそうだけど、私と今の雄太じゃ色々と違うと言うか……それにいきなり誘うのもなんだかなって」
「へぇ、お家で料理は振舞えるのにねぇ~~」
真剣に思ってそう言ったのに有紗は皮肉っているのかジュルジュルッと残りのシェイクを飲み干しながらそう言ってきた。
「別にあれはあっちから言ってきたわけで!」
「でもしたことには変わりないでしょ?」
「それは……まぁ、そうだけど」
「私からしてみれば好きな人にご飯を振舞う方が難易度高いと思うけど? ほら、不味かったら終わりじゃん?」
「そんなことで別にげんなりしないと思うけどね」
「うわぁ、なんか信頼し合ってるんだけど……怖いわ」
「そりゃ一回付き合ってたもん! 仕方ないじゃん! それに私にしてみればずけずけとデートに誘える方が難易度高いよ!」
「またまたぁ~~」
「またじゃないし! だいたい、勝負下着なんて早いこと考えてる有紗の方がおかしいわよ!」
ムカついてそう言うと有紗はぴくって止まる。
なんで、知っているのと言わんばかりの目で見つめてきて挙句私の肩に手をついて尋ねてきた。
「な、それを――どこで!?」
「どこでも何も、いっつもおこちゃまみたいなクマさんパンツしか履いてこなかった有紗が下着屋さんで真っ赤な下着を選んでるのを見たって雫ちゃんが言ってたわ」
「んな!? ま、まさか雫っちが……」
「えぇ、ちゃんと聞かせてもらったわ? クマさんのスポぶらにクマさんの子供用パンツからようやく卒業したんだねって言ってたわ。私もこれで有紗のロリっぷりとはおさらばできてうれしい限りね~~」
「んぐっ……な、なんで、どこでバレたの!!」
「いやぁ、なんか普通に下着屋さん通りかかったらいるのを見つけて普通に真っ赤な露出多めの下着を買っている所を見たって」
「……くそぉ、どうしてあの日に限ってなのよぉ~~」
「ほんと、胸だけ立派なもの持ってるのに。私に分けてほしいわ」
「っ」
落ち込みだしたと思ったら次は私の方を見てにヒヒと笑みを浮かべる。
「へぇ、小さいの気にしてるのね?」
「っ」
やばい、墓穴掘った。
有紗がめちゃめちゃ虎の威を借る狐というか、なんかきりっとしてる!
「いいわよぉ~~そこまで言うならウチがしっかりと揉みしだいて大きく育ててあげるけどぉ~~?」
「いきなり何言ってるのよ……触りたいだけでしょ」
ほんと、私の貧乳なんて触って何になるのか。
いや別に貧乳ってわけじゃないし、そういうわけじゃないけどさ。うん。だって日本人の平均バストサイズは確かBとかそのくらいだったもん!
私はB+くらいだし!
ぺったんこじゃないし、別に嫌じゃないし。これでもいいもん。これでもいいんだもん! こんなんでも一回彼氏できたもん! まぁ一回別れたけど……。
でもいいんだもん!
と思ったところで有紗が立ち上がり、とある方向に指を指した。
「あ、あそこにバストアップのプルプルゼリーが!」
何、そんなものあるの⁉
ばっと指の先を見るがそこには何もない。なんだ、又おかしなこと言ったのねと向き直ると腹を抑えながらプルプルと笑っていた。
「な、何笑ってるのよ……」
「い、いやだって……めちぇめちぇ気にしてるじゃんって、胸小さいのっぷぷ」
「うるさいうるさいうるさい!!! 大体そんなの関係ないでしょ! 今の話に!」
「はっはーん。別に喧嘩売ってきたのそっちじゃん? 隠す胸ないくせにめっちゃいい下着付けてるもんね~~時雨は。これじゃあ豚に真珠じゃない??」
「何を~~‼‼‼‼ そっちこそもったいない分不相応なもの持ってるんじゃないのかしらぁ?」
バチバチバチと火花がなり、私と時雨が飛び掛かろうとしたところで横から声がかかる。
「あんたたち、さっきから丸聞こえよ」
「「え」」
そこにいたのは話にも合った雫ちゃん。
ハッとなって周りを見るとこちらに異様な蔑みの視線を向けるマダムや家族連れたち。
「っ……す、すみ、すみませんでした」
「ごめん、なさい……」
第1次おっぱい戦争これにて閉幕!
「ってなわけで、デートに誘うのが一番手っ取り早いのよ!」
「時雨ってめっちゃ受け身だからね~~こういう時くらいガツンッと決めた方が私もいいと思う」
「わ、分かったわよ……」
結局、なんだかんだとひと悶着あり。
私はその日のうちにデートのお誘い文を送ることにした。
☆烏目雄太
その日の夜23時半。
委員会の議事録をまとめているとスマホがピコンとなり、送信元をみると「時雨」という文字が書かれてあるのに気づいた。
「なんだ、こんな時間に……」
時雨と言えば毎日22時までには寝るほど早寝早起きタイプなのに珍しいなと思いつつメッセージアプリの通知画面を開く。
開いて書いてあった文言に俺は少し戸惑った。
いや、まさか、昨日の今日でこんなことがあるかと目を疑った。
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