第10話「掃除しなきゃやばい!※時雨視点」


☆鹿住時雨


 ま、またやってしまった……。

 今週末に……雄太が私の家に来ることになってしまった。


「はぁ……どうしよぉ」


 金曜の夜。

 私は明日に控える料理振舞い会に向けて絶賛後悔中だった。やり残していた再提出用の課題をしながら机に突っ伏し、浮かんでくるのは雄太が家に来ると言う不安。


 もちろん、どうすればいいかを有紗には相談した。だけど本人は嬉しそうな顔でこんなことを言ってくるんだ。


『うお、もしかして時雨って処女卒業?』

『んな!? そ、そんなわけないでしょ!』


 私だってそこまでいかなくてもイチャイチャくらいはできるのかなって考えたけど、雄太はきっとそんなことは考えていない。


 純粋に私のご飯が美味しかったから食べたいだけと思うし。


 そんな私の胸の内など知らず、有紗はずけずけと続けてこんなことも暴露してきた。


『っちぇ、そういうのじゃないのか~~。すっごく面白そうだなって思ったのにねぇ』

『面白いも何もそんなののために家には呼ばないし……それに、高校生だよ? そんなの早いよ……そういうのは大人になってからでしょ』

『そんなことないと思うけどね?』

『またまた、それこそそんなことないって』

『いやぁ、ほらね。相坂ちゃんだって雫っちだってこの前彼氏としたって言ってたよ?』

『え⁉』


 あ、あの……のほほんとして天然な相坂さんと天真爛漫でスポーツにしか興味がない雫ちゃんが!?


 と驚いた。

 

 え、何、今の高校生って大人の階段上るのが普通なの? 彼氏とそういうことするのが普通なの?


 私なんて、雄太と付き合ってから手をつなぐのにも1カ月はかかったのに。ほぼ毎日のように一緒に登下校していたけど恥ずかしくて……というか、一緒にいるだけでよかったからそういうことはしてなかった。


 まぁ、あれは私が恋をして馬鹿になっていたからだとは思うけれど。

 にしてもハグをしたのも3カ月たってからだし、キスなんて一回しかしなかった。


 聞けば聞くほど分からなくなる常識。

 私がおかしいのかな——と思ってしまう。


 もう、訳が分からなくなってきた。


 そんな暴露に振り回されながら、結局最後に言われたのは「楽しんでね~~付き合えるかもね~~」の放り投げと言っても過言ではない言葉だったし。


 余計に混乱させられただけで、正直もう考えないで寝てしまいたいところだ。


 と、目を閉じようとしているとガチャリと部屋の扉が開く。


「あら、しぐちゃん。もう寝ちゃうの?」

「ママ……」

「ん、どうしたの?」


 取り込んだ洗濯物をクローゼットに仕舞いに来たママだった。

 ちなみに、私の家庭は典型的な母子家庭で私とママの二人暮らし。パパもいるにはいるけど、実際のところ私はパパの顔を覚えてはいない。離婚したのは1歳ごろらしい。


「うーん。いや、別に」

「別にって顔がすっごく暗いわよ? こう、死にそうなキ〇ショット・アセ〇ラオリオン・バードアンダーブレードみたいに」

「そんなにかなぁ……阿良々木君に助けてもらいたいね、私も」

「おぉ~~しぐちゃんも読んでくれたのぉ?」

「ママがめっちゃ薦めるからでしょぉ。仕方なくよ」

「あらあらぁ~~そんなこと言っても本棚一面にシリーズ全部あるのは誤魔化せないわよぉ~~」

「勘のいいアダルトは嫌いだよ」

「あだるとびでおはきらい?」

「ママ、私は娘だと思うんだけど。下ネタはきついよ?」

「ごめんねぇ~~、テヘペロっ」


 見て分かる通り私のママはこんな感じで小説とアニメが大好きなオタク系だ。言葉の端々にネタを使ってくるせいでこっちまで覚えてしまったほどだ。


 物語シリーズに関してはハマったのは認めるけど……うん。


 って、そんな話をしている場合じゃない! 

 明日来てもらうことになってるんだから、ちゃんとママに言っておかないと駄目よね。


「ママ」

「ん~~どうしたの?」

「明日、友達がここに来るんだけどいいかな?」

「友達? 有紗ちゃん?」

「違うわ」

「ほう……てことは、男かしらね?」

「んぐっ……」

「わかりやすいわね~~まぁ、時雨の事だから大丈夫わよ?」

「い、いいの? ママ明日いないでしょ?」

「え、あぁ、うん。大丈夫よ! とにかく、高校生の身分で楽しむ分にはいいわよ!」

「そ、そっか……分かった」

「にしても彼氏と別れてすぐなのに乗り換えるのが早いわねぇ~~隠し事でもあるのかしらねぇ~~」

「んぐっ……」


 右フック。

 私は其れをもろに食らってガタッと席から崩れ落ちる。


 確かにママには付き合っていたことも別れたことも言ったがまさかここまで痛い所を付いてくるなんて。


 怖い、ママ怖い。


「やっぱり。それじゃあお相手さんは誰かしらぁ?」

「……べ、別にそれは良いじゃない」

「ん~~、言わなきゃダメ」

「そ、それは——ずるい」

「言わなきゃだめだわよ?」

「……」


 怖い、ママ怖い。

 これだから勘のいい大人は嫌いなんだ。


「か、烏目雄太……元カレよ」

「え、元カレ?」

「そうよ」


 そう言うと驚いて体をのけ反った。


「にしても元カレと。それじゃあ復縁?」

「いや、別にそう言うわけじゃないけど。まぁ……多少は」

「へぇ……いいねぇ、青春よねぇ~~」

「揶揄わないでよっ」

「別に揶揄っていないわよ?」

「嘘つき、顔がめっちゃ笑ってる」

「それは生まれつき~~しぐちゃんにも受け継がれているわよ?」

「え?」

「にやけてるわよ」

「っ⁉」


 思わず振り返って鏡を見ると真っ赤な私の顔が見える。

 別に笑ってはいない。

 騙されたと思って振り返る。


「んじゃ~~明日はお楽しみに~~」

「ちょ、ママ!」


 気が付くと扉ががバタッと閉まってしまった。


「……んもぅ、ママまで」


 しかし、直ぐに又開いて付け足す様にこう言った。


「あ、避妊はちゃんとするのよ?」

「っ~~~~う、うるさい!!!!」



【あとがき】 


 1日2回連続投稿ということでやっていきました~~どうでしたでしょうかね

 ひとまず読んでいただきありがとうございます。明日ももしかしたら2回投稿するかもなのでよろしくお願いします!


 次回は「時雨と雄太の行き違い、そしてツンデレる」です!

 お楽しみに~~


PS:なぜだか今日星がたくさんもらえました。意味が分かりませんが~~ありがとうございます( ^)o(^ )


 

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