第6話 合流
──…そして今…──
「あっはははは!!邪道行為だなんて大袈裟だなぁ!俺が民衆を人質にママルマちゃんを脅して世界を救っただけじゃん! この武勇伝で皆笑顔になれるハッピーエンドじゃん!」
笑うシールに対してママルマは、少し泣きそうになりながら「アタシのこの気持ち、どうすれば良いのさ…。マジで信じられないんだけど…」と言った。その時。
「国王陛下ぁあ!」
鏡の向こうからモーリの声が聞こえてきた。その声に「モーリだ!!」ママルマは、嬉しそうに小さい翼を
「モーリィ?あのおっかない巨人の事か? おーい、こっちだぞー」
鏡に映る大きな背中にシールは、呼び掛けながら顔を近付けた途端───ゴパァアン!!
モーリは、振り返ると同時にシールの顔を力一杯に殴り飛ばした。
──…教会の外…──
教会へ向かうその道中。ルドン達は、ギーの召喚した使い魔に乗っていた。
「ああっ!な、なんと言う……!」
教会が見えてくるとガーゴイルに掴まるギーは、扉の無くなった崩壊寸前の入り口に顔を泣きそうにしかめた。
「急ごう!」
ルドンとジトを乗せたケルベロスが教会に踏み入ろうとしたその瞬間。
パアァン!と言う音と共に奥から目にも止まらぬ速度で何かが飛び出して来た。
ドゴゴオオオン!
間一髪の所で避けたケルベロスとガーゴイルは「大丈夫か?」と3人に聞いた。顔を合わせて頷く3人は、息を潜める様に教会の奥に目を向けた。
教会の奥には、鏡から生えた巨大な腕と小さなピンク色の子竜が居た。
「国王陛下、お下がり下さい。ケルベロス、国王陛下を頼むぞ」
ジトは、そう言うと素早くケルベロスから下りて腰の剣に手を掛けながら奥の2体を睨み付けた。
「っ!誰じゃ!? 何じゃお前らは! ん…?お?おおー!? お前はもしかして!ルドン王かぁ!? おい!モーリ!早く早く!早く行くのだぁー!」
張り詰めた声と共に振り返る子竜のママルマだったが、ルドンと目が合った途端、目を輝かせて鏡から伸びるモーリの腕を引き
「ちょ!?女王陛下!どこに向かわれてるんですか!?早く戻って下さいよぉ!」
鏡からモーリの心配そうな声を響かせて来るママルマにルドンを乗せたケルベロスは「しっかり掴まっててね」と体を低く構え、ジトは「止まりなさい!」と手早く剣を抜くと刃を光らせた。
その様子にママルマは、怯む様子を見せずジトの目の前まで来ると満面の笑みでジトとケルベロスと見上げた。
「君達は、ルドン王の部下か!流石はルドン王だ!とっても強そうなんだな!」
「…君は、何者だ? 国王陛下に何の用だ?」
まるで自分の事の様に喜ぶママルマにジトは、少し困惑気味になりながら足元の子竜を見下ろした。
「ん?分からんのか? まぁこんな姿じゃ無理も無いな。アタシは、誇り高き魔界の王!名はママルマだ! んで、この腕が側近のモーリの腕だ! 魔物と人間の共存の為にルドン王に会いに来た! 勇敢なる強き者よ!アタシ達に敵意は無い! ここを通してはくれないか!」
ママルマは、先程までの無邪気な姿とは、打って変わって胸を張りキリッと見据えた目でジトを見上げた。
ママルマの眼差しにジトは、息を飲み、剣を
「とんだご無礼を働いてしまい申し訳ありません!どうぞ、お通り下さい!」
その様子にケルベロスは「ジ、ジト!?」と困惑したがジトは「安心しろ、この御方は本物だ…!」と耳元で言った。
ケルベロスから下りたルドンは「ママルマ様…!?な、何故その様なお姿に!?」と困惑しながら目線を合わせる様に膝を着いた。
ジトを通り過ぎたママルマは、モーリの腕を離すと感極まった様子でルドンに飛び付いた。
「長かった…やっと…やっとじゃあ!会いたかったぞぉ!ルドン王~! グスッ。怖かったよぉ…!」
胸の中で泣くママルマに困惑してるルドンは、手を添えてその小さな頭を撫でる事しか出来なかった。
「ルドン国王陛下。お初に御目見に掛かられる事に心より感謝いたします。同時にこの様な大変見苦しい姿でのご挨拶を御許し願います」
「い、いやいや。そんな
するとママルマは、顔を上げて「全部あのド腐れ外道がやったんだ! こんな姿になったのも!連れて来られたのも全部だ!」と訴える様に言った。
ママルマの言葉にルドンとギーは「あー…」と察しが付いた様子で溜め息の様な声を漏らした。
「ママルマ様は、今のお姿になられる遥か前から現世に憧れを抱いておりました。そして、数年前。長年溜めた魔力でやっとの思いで結界を破ったのです。その節は、大変ご迷惑をお掛けした事を改めて謝罪いたします。しかし、その願いは叶う事はありませんでした。ルドン国王陛下…アレは、一体何なのですか…?」
モーリは、少し声を震わせて、まるで目でも付いてるかの様にルドン達の後方、教会の外の土煙が立ち込める地面を指差した。
咄嗟にルドン達は、土煙の中の歩く影を凝視した。ジトは「お下がり下さい!」と言いながら再び腰から剣を抜き構えると続く様にギーは「お前達も行くのでげす!」と使い魔に指示を出した。
プゥッ!
「あ、屁出た。全く~!酷いじゃんか!いきなり殴るなんてさぁ!あ、鼻はこっちか」
放屁の音と共に土煙から現れたシールは、剥がれたズタボロの顔の皮をマスクの様に被っていた。顔を被り終わると虚ろから浮かび上がってくる目をギョルリと転がし、何事も無かったかの様に傷を消した。
「…って!ルドン国王!? それにギーじいさんまで!見ない顔もあるけど…何で皆揃ってるの!?」
目の前のルドン達を見るや否やシールは、驚きの声を上げて目を丸くした。
しかし、絶句し硬直してるルドン達の様子に「え…?あれ?もしかして、臭います? それは申し訳無いです」と平謝りした。
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