第4話 子竜の魔王
「魔王が復活だと!? シール殿!それは本当か!?」
施錠された城の扉の前でルドンは、シールの言葉に思わず声を上げた。
「はい! 自分は一切嘘を付いてません!なのでこの事態を終息させるには、再び復活した魔王を倒す必要があります! 国王陛下!どうか自分に出撃許可を!」
濡れ衣を着せた魔王を今すぐに倒したかった
「うむ…しかし、シール殿?それでは疑問が残るのだが…」
ルドンは、顎に手を当てて街の魔物を見渡してると魔物の子供と目が合った。
魔物の子供は、嬉しそうに手を振り、ルドンも笑みを浮かべながら手を振り返すと改まった様子で
「もし、魔王が復活して攻撃を仕掛けて来たと言うのなら。何故、魔物達は、あんなにも大人しくしているのだ? いや、
ルドンの言葉にシールは、ドッと冷や汗を噴き出して「そっそれは!アレです!」とルドンの言葉に被せる様に言った。
「復活した時の魔力が膨大過ぎて無意識に非戦闘の魔物達も送っちゃったんですよ! 多分絶対きっと間違い無くそうだと思います!! いやぁ魔王ってうっかりさんで───ヘブッ」ゴンッ!
シールは、必死に笑顔を作って話したがその様子にルドンは、睨む様に目を細めた。その直後、シールの隣に居たケルベロスが
「し、失礼いたしましたぁあ! 実はシール殿。魔王の
ギーは、ルドンの機嫌を取る様に慌てて身振り手振り伝えた。
「ふむ…家が消し飛び、地形すらも変えてしまったのに。タンコブと突き指で済むとはな…まぁ良い、出撃を許可する」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!!」
顔を踏まれたままのシールは、地面に
ケルベロスが手を退け、シールは「それでは!」と満面の笑みで起き上がると背を向けた途端。ルドンは、その背中を睨んだ。
「シール殿、一つ確認したいのだが、何も
「へぁ!?ぁあぃ!も、モチロンですよー!」
シールは振り返る事無く、声を裏返しながら答えると逃げる様に階段を駆け下り、王国の中心部にある教会を目指した。
「あぁ…教会がぁ、また教会がぁ…」
ギーは、走り去るシールの背中を見つめながら膝を崩した。
「大丈夫か?ギー大臣。それより魔王が心配だ。すまないが、もう一度、国民の避難が完了したかの確認を取ってくれ。念の為にジト隊長を連れて教会へ行こう」
──…王国の町…──
ドドォン!ドガガガァアアアン!!
シールは、巨大な砲弾の様に建物の壁を次から次へと壊しながら、魔物を避けて教会へ一直線に向かっていた。
「えぇ!?何今の怖っ!!」「あの人、一回魔界に来てた人だよね…?」「…ほんまや!ってか、なんで服着てへんの?」
魔物達は、建物が崩れる振動と巻き上がる土煙に包まれながらパンツ一丁で走り抜けるシールの背中を見ていた。
「そう言えば、さっきまでそこに居た、化けサメとタンポポはどこに行ったんだ?」
トウモロコシの様な角の生えた魔物が見渡しながら言った。
「さあ?もう人間の避難終わったみたいだし。探検しに行ったんじゃない?現世なんて滅多に来れない訳だし」
木掘りコウモリ様な魔物は、そう言って地面に転がる果実を手に取り頬張った。
──…教会…──
教会が視界に入るとシールは、更に加速してその背に巨大な空気の球体を作り出した。その風圧に建物は吸い寄せられる様に崩れ出し地面も巻き上げられた。
そして、シールは教会の目の前でピタリと立ち止まり巨大な空気の球体だけが、頭上を通り過ぎた。途端───バガアアアアンン!!
閃光と共に地面が波打つ程の衝撃波に教会の厳重に施錠された鋼鉄の扉は、
「ふー、よしっ!」
シールは、気合いを入れる様に声を張り上げて、瓦礫や木片が散乱する、今にも崩れそうな教会に
教会内は、まるで床がひっくり返ったかの様に散らかっていた。
参拝用の椅子は、天助や壁、一番奥の壁画の女神の顔や、女神を崇める民の尻に突き刺さっていた。
窓ガラスも全て割れ、床一面に破片の
裸足のシールは、足裏に深々と刺さり込むガラス片すら気にも止めない様子で歩みを進めていた。
そして、教会内で唯一無傷の祭壇に辿り着くと、祭壇を包む純白のクロスをシールは、何の
すると、祭壇のクロスの下からは、
シールは、クロスで汚れた手を顔を拭うと、木箱に手を
ゴゴォン!バァン!
シールは、水晶玉と鏡を
だが、鏡は浮き上がる様に独りでに支え無しに起き上がり、水晶玉も吸い寄せられる様に鏡の前に転がった。
シールは、水晶玉を鷲掴みすると、水晶玉に魔力を送りながら鏡の前で
間も無く水晶玉の中で赤紫色の
王座には、赤いマントが被せられた丸い何かが鎮座していた。
ゴォン!ゴン!シールは、水晶玉を投げ捨てて、
「おーい!魔王!居るんだろ!? 大変なんだ!!助けてくれぇ!!」
ピキッピキピキ…!
シールの声に反応する様に割れる音がした。シールは、音の元と思われる王座の丸い赤いマントを凝視した途端。ボォォ!と被せてあったマントが燃えて中から、薄ピンク色の子竜が現れた。
「うっさいなぁ誰? アタシの寝むりを邪魔するのは?」
突然、現れた子竜に「うぉお!?」興奮気味に声を漏らしたシールだが、少し考えた後、目を丸くした。
「え…?もしかして、魔王…?」
鱗の発達してない羽毛に包まれた子竜は、眠たそうに顔を擦っていたが、シールの発言にニヤリと笑みを浮かべた。
「フフン!
高らかに声を張り上げて、威嚇の様に翼を卵の殻を壊しながら広げて卵の殻を割ってみせたママルマは、目の前の靄に映るシールの顔に目を丸くして指を差した。
しかし、同じ様に目を丸くして動かないシールに「フン! 恐れできょえ…声も出ないか?」とママルマは嬉しそうに言った。
「……マルルちゃんの餌は? 放し飼いはいける?飼育環境教えて?」
シールは、そう言いながら鏡に手を突っ込み鏡の中のママルマを卵ごと取り出した。
「ぇ!?ちょっ!何をする!?止めろ!」
シールの手を噛んだり抵抗していたママルマだが、シールの痛がる事も無く疲れた様子に、申し訳なさそうに噛むのを止めて卵の中で丸まった。
「はぁ…それで?何の要なの? お前大ッ嫌いだけど、話は聞き流してあげる」
ママルマの言葉にシールは、涙目になり「ゆっくりでいいよ」と
最初は、しゃくり上げながら話していたがママルマを撫でている内に、その顔は、和やかになっていた。
「それでね?このままだと俺の、勇者としての威厳が無くなっちゃうんだよね~。だからね?復活して間もない所悪いんだけど、もっかい消し炭になってもらっても良いかなぁ~?」
和やかに笑うシールに対してママルマは、再びその手に噛み付いた。
「アホボケカス!死ね!ってか触んな!汚物!ゴミ!
「わぁ!よく噛まずに言えたね~! よぉしよしよし!怒っても可愛いねぇデへへへ!」
ママルマは、怒りに体を震わしながらシールの手を弾くと素早く地面に降り立った。
「キモい!マァジで死ね!! ってか魔界で、アタシの世界であんな邪道行為しておいて、よくオメオメと顔を見せられたなぁ!」
「…? 邪道、行為?」
ママルマの言葉にシールは、記憶を
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