第54.5話


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

@母 結衣華目線


 司会者?いや、進行役と言った方がいいのかな。まぁ、どっちにしろその人の一言で学校説明会が始まった。


 最初はその人の自己紹介から始まり、挨拶がある。やたら話が長いし面白くもない。この人が小学生の前で話すとめんどくさがられるんだろうなって、私は見てて思う。


 自分の職業柄、多くの人と会うのだが、話は長く、それなのに要点が分かりづらい人はめんどくさがられたり、話をちゃんと聞かれない人が多いのだ。


 実際、開始して10分ぐらい経った時には、隣で話を聞いていたはずの碧さんは、夢の世界に旅立っていた。私の周りもそういう人が多い。


 私はあくびを堪えながら、話が終わるのを待つ。結局その人の話が終わるまで、20分ぐらいを要した。その時には起きてちゃんと話を聞いている人は、全体で3分の2入ればいいんじゃないか程になっていた。


 最初の長い話が終わり、ようやく本題になる。そう、学校説明会だ。これまでのはただの世間話&自分の話だったから、本当に無駄な時間だったとしか言いようがないな。


 私はとりあえず、まだ隣で気持ちよさそうに寝ている碧さんを起こす。


「ふぁ〜、私寝ちゃってましたか。やばいな、なんか重要な話ありましたか?」


「無かったですよ。ようやくここからが本題です」


「そうですか。じゃあ、ここからはちゃんと聴かないとですね」


 碧さんのいう言葉に私は苦笑いしながら頷く。


「じゃあ、学校内の説明と教育方針、授業内容などの説明をさせて頂きたいと思います」


 前ではさっきまでの人が端に移り、進行を開始する。あくまで会の進行なので、説明などは他の人がするようだ。


 話をする人が変わってからはすごく聞きやすくなった。よく要点もまとめられており、話がわかりやすい。さらに聞く人たちが思わず、耳を傾けるようなテンポのいい話し方。


 それが、各項目で話す人ほとんど全員だ。なんでさっきの人は、ここで働けているんだろう。と思うぐらいだった。


「以上で、学校説明会を終わりたいと思います。今日はお越しいただいありがとうございました。また、お子様方の入学式の時にお会いしましょう」


 説明を聞いている時間は一瞬で終わった。最初の人の話の2倍ぐらいあったはずなのに、説明の方が時間が短く感じられたのだ。


 それは、最初の話を聞いてなかったはずの碧さんも同じなようで、説明は終始聞いてきた。


「説明すごく分かり易かったですよね!」


「そうですね。最初の話に比べて、本当に聞き易かったです」


 私たちは帰り道、今日の話をまとめるように2人で確認し合いながら楽しく話をはずなせたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜新入生説明会 1時間〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る