第52.5話


「おかあさんいっちゃった、、、」


 お母さんが出ていくのを見送った結心は悲しそうにそう言った。さっきまではノリノリで青葉とお留守番する感じだったのに気変わりが早すぎる。私はお母さんを見送ったままずっとそこにいる結心に声をかける。


「ゆい、あおばのところにもどろう」


 お母さんが青葉の産休で休むまではお母さんが仕事に出かけて行っても寂しがってなかったはずなのに、いつもお母さんがいる日常に慣れてしまうと寂しくなるよね。


 玄関からまだ少し寂しそうな顔をしている結心を連れて帰ってくる。青葉はその間もぐっすり眠っていたらしく、まだ寝息をたてている。


「なにしておかあさんまってようか」


 戻って来た私たちは2人して考える。だって、青葉が寝ているからいつものようにピアノも弾けない。いつもは青葉が起きてもお母さんが居てくれたから良かったのだが、さっき出ていっちゃったしね。


 結局2人でゲームするとこにした。これなら音も出ないし、時間も潰せるからだ。


「はい、おねえちゃんのまけ〜」


「もういっかい!もういっかい!」


 ゲームをしていた私たちだが、集中しすぎて声がだんだん大きくなっている事に気づいていなかった。そして、それに私たちが気付いた時には時すでに遅しだった。


「あー!あー!」


 そう、青葉が起きてしまったのだ。この場合は起こしてしまったというのが正しいのだろうが今はそんなこと関係ない。そんな事よりも、まず泣き止ませることの方が重要だ。


「あー!あー!」


「あおば〜、こっちむいて〜。いないいないばぁ!」


「おねえちゃん、そんなんじゃいけないよ。こうだよ。いない〜いない〜〜、、ばぁ!」


「あーきゃっ!」


「「やった!」」


 2人で四苦八苦しながら青葉を泣き止ませる事に成功した。そして、その後も青葉の前で2人揃って変顔し続ける。


「つぎはこれだ!」


「わたしはこうだ!」


「きゃっ、きゃっ!」


「「あははははは!」」


 私は結心の顔、結心は私の顔、青葉は2人の顔を見てみんなで爆笑する。楽しい時間だ。


「ただいまー」


 そうして、みんなで笑っているとお母さんが帰ってくる。


「ちゃんとお留守番出来た?」


「「できた〜」」

「あー!」


「いい返事。結笑、結心ありがとうね。ちゃんと青葉も見ててくれて」


 お母さんに頭を撫でてもらう。うん、気持ちいい。お母さんの離れていく手を名残惜しそうに見る姉妹。しかし、その手は帰ってくる事なく白い箱に向かっていった。


「ちゃんとお留守番出来た人には、ご褒美がありまーす。詩織さんからもらって来たケーキです」


「「やったー」」


 それから青葉とお父さんを除いたみんなで、手作りケーキを頂いたのだった。手作りとは思えないぐらいすごく美味しかった。


〜姉妹と留守番 1時間〜

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