第51.5話


「「「「流れ星だ!」」」」


 夜空に流れた一筋の光に家族みんなの声が重なる。


「願い事できなかったね。流石に急にきた流れ星に3回もお願い事唱えるのは難しいか。結笑、結心、お父さんはできた?」


「「むりだった、、、、」」


「ダメだった。準備できとったら良かったんだけどね」


 みんなが願い事を唱えられなかったことに残念な気持ちで落ち込んでいると、また夜空に流れる星が一筋。そして、その光は徐々に増えていき、夜空いっぱいになる。


「「きれ〜」」


「本当に綺麗だね、、、、。あっ、願い事、願い事!唱えなきゃ」


 たくさんの流れ星が夜空に輝いているのが綺麗すぎて、家族全員で見惚ることによって、お願い事をするのを忘れてしまっていた。お母さんが思い出してくれたことで、こんな時にお願い事をし忘れるなんてことにならなくてすんだ。よかった、よかった。


 その後、私たちはお願い事を叶え始めたのだが、それが難しいのなんのって言ったらありゃしない。一つの流れ星が見えてから消えるまでの間はほんの少ししかないし、まず流れ始めを見つけることが難しい。


 夜空いっぱいの流れ星があるのだから、簡単に見つかるかとお思いだろうが、そうではないのだ。流れ星が多かろうが少なかろうが、見え始めを見つけるのが難しい。


 もう、流れ始めているという点では1番最初のいつ来るかな?みたいな疑問はないにしろ、頭の処理能力が追いつかない。見つけてから3回唱える口もない。


 まず、お母さんもお父さんも挑戦して、まだ成功してないってことは私たちは到底不可能だろう。


 と、そこまで考えて私は気づいた。お母さんもお父さんも結心も少し長めのお願いをして、全部言えていないのだ。じゃあ、めっちゃ短くなら3回唱えられるのではないかと。


 うぅーん。短くて簡潔なお願い事か、、。私は流星群が終わってしまう前に素早く考える。そして、考え付いたの願い事はこれだった。


「みんなしあわせに、みんなしあわせに、みんなしあわせに」


 やった、3回言えた!


 私は満足感に襲われる。その後すぐに流星群は終わってしまって、3回唱えられたのは私だけだった。


 車に戻る時に3回言えなかったことに明らかにがっくししているお母さんと、それが当たり前だと言わんような顔をしているお父さん。対照的な2人の反応が面白くて笑ってしまう。


 結心はお父さんよりらしく、そんなに残念そうじゃない。流星群が終わった後、普通に車に戻ってたしね。


 人それぞれの思いが残る天体観測も終わり、車に戻って来た。


 家に戻る私たちの車の中には私たちが書いた短冊が揺れているのだった。


(はやくあおばとはなせますように)

(ゆいとあおばとおしゃべりできますように)


〜星に願いを 1時間〜

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