第28.5話
すごいスピードで、皿の上のクッキーがなくなっていき、ついに最後の一枚となった。
私は結心に取られないように素早く手を伸ばす。すると、それを阻止するように結心が私の手をはたき落とした。
「いちゃ!」
私が痛がっている隙に、今度は結心がクッキーに手を伸ばす。それを見逃さず私は、結心の手をはたき落とす。
それを繰り返すこと数分。結局クッキーはどちらの手にも渡っていなかった。しかも、無能な争いだとわかり、そこから口争いが始まった。
その間、ずっとお父さんとお母さんは微笑ましそうに見ている。
「おねちゃ、いっぱいたべてたしゃん!」
「そんあにたべてあいもん!ゆいこそ、たべてたしゃん!」
「おねちゃ、よりたべてあいもん!」
「「むーー!」」
私たちが怒ってふくれっ面になる。それを見たお母さんとお父さんはスマホで写真を撮りながら、ニコニコしている。
これは仲介を期待してはいけないだろう。
その後も言い争いは続くが、決着はつかない。抹茶のクッキーはまた残っていると言うのに、後一枚のチョコクッキーの倍率がすごい。
けど、私も食べたいので、いくら妹の結心だといえど、簡単に譲るわけにはいけない。
私たちは言い争うことにも疲れて、視線を交わしている。いや、この場合は睨み合っていると言った方が良いだろうか。
私は、一旦気持ちを落ち着かせようと、皿の上に残っているチョコクッキーをみようとした、、、、、。しかし、見れなかった。見れなかったと言うか、あるべきはずの場所になかった。
どこだ、どこに行った?私のチョコクッキーは。結心も周りをキョロキョロしているし、犯人ではない。じゃあ、誰だ?
はっ!
私は気づいてしまった。今まで黙って写真を撮っていたはずのお母さんの口がもぐもぐしていることに。
「「おかーしゃん」」
ビクッ!
同時に気づく姉妹。驚くお母さん。
「「くっきーたべた?」」
ビクッビクッ!!
問い詰める姉妹。口をさらに動かしながらびくつくお母さん。
私たちがじっと見ていると、観念したお母さんが白状した。
「だって、2人ともずっと食べないんだもん。これは食べていいかなって。ごめんね」
そんなふうに謝ってきた。言い返したいところだが、お母さんの言ってることは事実だし、クッキーを作ってくれたのもお母さんだ。
私たちは怒るにも怒れずに黙ってしまう。でも、2人とも食べたかった気持ちはあるのでどうもやるせない気持ちだ。
そんな私たちの前に、2つの小さなチロリチョコが置かれる。お父さんが持ってきたやつらしい。冷蔵庫の隅にあったそうだ。
賞味期限も大丈夫だし安心して、2人仲良く食べる。これで、さっきのクッキー喧嘩もひと段落だ。
ありがとう、お父さん。ちゃんと2つあるものを持ってきてくれて。
〜姉妹喧嘩 1時間〜
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