第14話


 桜が満開です。すごく綺麗。


 1週間前が嘘かのように桜が、咲き誇り町を鮮やかに彩っています。生まれから、ちゃんと桜を見るのは初めてで感動してしまいます。


 私たちは今、お外をお父さんと散歩しております。自力で1歩、2歩歩けるようになったと言っても、外に出るのにはベビーカーは必須アイテム。ベビロテしてます。


 今回、お母さんは家でお留守番。散歩に行く前にお父さんと何か話していたけど聞き取れませんでした。しかし、さっきからお父さんがスマホをチラチラ確認しているので、結構重要な事なのではないのでしょうか?


 けど、危ないのでしっかり前見てね。お父さん、さっきから、私の顔には桜の花びらが、、


「くしゅっ」


 あっ、、くしゃみ出ちゃった。


「んっ?あぁ、結笑の顔が桜の花びらだらけだね。写真取ってお母さんに見せてあげよう」


 いいから、花びら取ってお父さん!


 そんな、私の願いは届くはずもなくお父さんは、写真を撮り続けている。なんで、結心の顔は綺麗なままなのに、私にだけ花びら降ってくるんだろうか?


 ようやく、写真を撮り終えたお父さんが花びらを取ってくれる。私は、ムズムズがとれてスッキリだ。


 私は、晴れやかな気分で散歩を続けている。周りの景色は動いていないが。私は歩けない。景色が止まっているということはお父さんが止まっているということだ。さっきから、何回止まっているんだろう。


「えっ!買い忘れたものがあるから買ってきてだって?結笑も結心も今日は起きてるよ。どうするの?、、、そっか、そんなこと考えないから大丈夫か。じゃあ、買って帰るよ。もう、大丈夫だよね」


 どうやら、お母さんからの電話だったらしい。お父さんは、電話を切ると近くのコンビニに寄ってチャッカマンとロウソクを買った。


 そして、今は家に帰っている途中なのだが、お父さんが偉く上機嫌だ。そんなにチャッカマンとロウソクを買えた事が嬉しかったのだろうか?不思議だ。


 そんなことを考えていると、アパートの前まで戻ってきた。すると、また景色が止まる。お父さんがメールを打ち始めたのだ。そして、そのまま1分ぐらい待っていると返信が来たようで部屋に戻り始めた。


 今日は、途中お父さんが止まる事が多かった。なんでなんだろうなと考えていると、家の前に着いた。そして、お父さんが家のドアを開けると、そこにはお母さんが立っていてこう言った。


「結笑、結心、一歳の誕生日おめでとう!」


〜初めての誕生日 1時間前〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る