第2話
おぎゃーー
その日、その声は分娩室に響き渡った。
そう、自分は赤ちゃんになっていたのだ。今日で、生後6日目になった。
まだ手足は、自由に動かせない。せいぜい指が動かせる程度だろうか。自分の体が思うように動かせない事にむしゃくしゃしていた時だった。
おぎゃーー
おおっと、びっくりした。
自分の泣き声ではない泣き声が病室の中に響き渡った。
何かの意思表示を母親にしているのだろう。確認したい気持ちがあったのだが、動けずに断念し、母親へ全てまかすことにした。 結構な勢いで泣いていたはずだが、母親に抱かれるとすぐに泣き止み、今は自分の隣のベットでスゥスゥと寝息をたてて眠っている。
この子と自分は、母親が同じで同じ日に生まれた。所謂、双子というやつだ。
お腹の中にいた時に感じた正面のごつごつと感じたのもがこの子だったらしい。前は、一人っ子だったからきょうだいが出来てうれくし思っている。
仲良くしていこうな、きょうだい。
と、こんなことを思っていると病室の扉が開く音が聞こえてくる。なんだか今日は多い気がする。自分達が生まれてからこんなに人が集まったのは、初めてではないだろうか。
今の病室には、5、6人の人がいる。なにやらこれから何かがあるらしく、そわそわしているのが見ていて伝わってくる。
母親と父親は今は、何やら色紙のようなもと筆ペンのようなものを出そうとしていた。
あれ?なんだか父親と祖父?が揉め始めたぞ?
父親が筆ペンを手に持っている。祖父?が筆と硯を持っている。
「赤ちゃんのいるとことなんですから、もし硯がひっくり返ったらどうするつもりなんですか!!」
「離れた場所で書けばよかろう!一生に一度しかないんじゃぞ!ちゃんとしたもので書いてやりたいじゃろうが!」
両者一歩も譲らない。どっちの言い分もわかるが、一体何をしているのだろうか考えていると、隣の子が泣き始めた。
おぎゃーー
まぁ、そうなるよね。
その瞬間、父親も祖父?も、お互いを見て冷静に戻ったらしい。
「お義父さんの言うこともわかりますが、やっぱりこっちで書かせてもらえませんか?この子たちがいるところで書いて披露したいと思うんですよ。」
「そうじゃな、こっちも初孫ができて、気持ちが舞い上がっとったらしい。同じ場所で書いて、同じ場所で披露する。そっちの意見がやっぱりよいの。それでいこう」
あっ、やっぱり自分の祖父だったんですね。
そんな事は置いといて、無事、色紙には筆ペンで書くこと解決したらしい。
ナイス、きょうだい。
そんなことを考えていると、母親と父親が一枚ずつ色紙に何かを書き始めた。書き終わったのか、母親は満足げに父親を見る。
「はい、じゃあ、披露したいと思います。」
そして色紙をみんなに見せた。
「この子たちの名前は、
です。」
この日から自分は、
〜名前披露の1時間前〜
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