〇〇の1時間前

雨琴

0年目

第1話


・・・ ・・・ ・・・


ここはどこだ?


 何かに覆われている。

 自分の周りは真っ暗で何も見えない。見えないと言うか目がひらけない。

 周りで何か動いているのを感じるんだが触ったり、匂いを嗅ぐことさえできない。

 外の音はよく聞こえないが、騒がしい気がする。


待て、今、自分は息をしているのか?


そんなことを思った。だって、感覚的に自分の周りは何かで満たされているように感じるからだ。

 自分は、さっきまで普通に家に向かって帰っていたはずなのになんでこんな状況になっているのか? 


 よし、まずはこの状況を整理してみよう。


 自分はさっきまでいつも通りの1日を過ごしていたはずだ。

 朝起きる、学校へ行く、授業をうける寝る、帰り道でうずくまってる妊婦さんに出会う。救急車を呼び病院へ送る。そして家に帰る。

 うん、何も変わった事はない平凡な1日だった。えっ、妊婦さんを助けているのが平凡じゃないって?

 いやー、自分巻き込まれ体質なもので、ちっちゃい時から、いろんなことがあったものでこれぐらいのことでは非日常とは言えなくなってしまったんです。はい、悲しいことに。

 

 全然、わかんないなぁ。

(ちなみに息をしていない事は分かった。だって周りで泡の音しないし、してる感覚無いんだもん)


 巻き込まれ体質の自分であるが、こんなことは初めてである。

 息はしてない、手も足も動かせない、目も開けられない、外の音が大きく、騒がしくなっている感じがする。

 これは結構まずい状況なのではないかと考える反面、まぁ、生きているんだしなんとでもなるだろ、と軽く考えている自分がいる。


 おっと、動きが活発になったな。


 自分の体を押し付けるかのように体の周りが動いていた。少しだけ正面のごつごつが気になるな。

 実は、さっきからこんな状況が続いている。しかし、こんなに動いたのは初めてだ。外は地震でも起こっているのだろうか?

 そんなことを考えていた時だった。

 急に自分の体が動き始めた。どんどん周りの押し付けが強くなるのを感じる。何か狭いところを通っているようだ。

 そしてそこを抜けた。


 おぎゃーー


んっ?


〜自分が生まれる1時間前〜

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る