悪魔

 その者は、大変強い力を持っていた。

 力はあるが、より強大なものに打ち勝つためにどんな手段でも使った。

 暴力、破壊活動、諜報・工作。故にその者は、悪魔と呼ばれるようになった。

 身に付けた自慢の宝石を眺め、悦に浸る。

 彼が起こす惨劇は、その世では当然あるものとされた。

 当の本人はそれに、わずかな哀しみを感じていた。

 社会から弾かれ、社会と対立し、攻撃を仕掛け続けた悪魔自身が、世界と一体化したのだ。

 悪魔や悪意は、気づかれないところに、しかし堂々とあるものなのかもしれない。

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無題 書い人(かいと)@三〇年寝太郎 @kait39

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