番外編① ここらでちょっと小休止。〜これまでのあらすじと人物紹介〜

〜これまでのあらすじ〜


 ブラック部署で働く地方公務員であった私は、疲労困憊の仕事帰り、綺麗な冬の夜空に見惚れているとやってきたトラックに気づかず轢かれてしまう。しかし、目が覚めるとそこは見知らぬ土地、見知らぬ人、そして──見知らぬ自分。なぜか私は、男となって異世界に転生していたのだ!

 現実世界の煩わしさを忘れて、気ままな異世界スローライフを楽しめるのかと思いきや、この男──宰相であり王の代理者であるジェラルドが、オーギュスト王国になくてはならない存在であったことから「ジェラルドとして振る舞うこと」を要求される。

 メイド長のナンシーに絆され了解してしまった私は、王国のことを何も知らないまま、王の諮問機関であり、実質、国の意思決定を担う枢密院ノインラートに出席することに。偉いおじさんたちに囲まれた私はピンチを迎えるが、ナンシーの手助けもありなんとか危機を脱出する。

 ほっと息をついたのも束の間、今度はジェラルドの元で働く行政官たちが、報告書を持って列を成しているとのこと。執務室に引っ張っていかれた私は、夜中まで仕事をする傍ら、知識のなさからジェラルドとしてこの国を支える覚悟が揺らぐ。誰かに助けてもらうしかない──。そう考えた私は、ナンシーをメイド長からジェラルド付きの秘書官とすることに。

 心新たに国政へと向き合う決心を固めた私だったが、秘書官への変更手続きがままならないまま、オーギュスト王国を揺るがす事件が起きる。情報不足の中、混乱する現場での迅速な対応が必要だと考えた私は、隣国ルル王国と傭兵ギルドの衝突を収めるべく、唯一の味方であるナンシーを城に残し、行政官と兵士と共に西へ向かったのだった……。



〜人物紹介〜


わたし(25歳)

 駆け出しの地方公務員。親の反対を押し切って地元で就職せず、田舎を出て政令市で公務員になった。ひとり暮らし、恋人なし。友人とも大学卒業以降疎遠。

 配属先がブラック部署であったため、休日返上で朝から晩まで働いていた。戦友であった同僚のおかげでなんとか乗り越えてきたが、彼女が過労で倒れてから半年で遂に限界を迎え、眠気と疲労と虚無感でぼーっとしている際に、トラックに撥ねられ異世界へ転生してしまう。

 責任感が強く、情に厚いタイプ。そのため、同僚が倒れた際はかなり自責の念を感じていた。自分への苛立ちとやりきれなさから、理不尽な上司や職場に抵抗し続けていたが、心身ともにボロボロになっていく様子を見かねた同僚に止められる。論理的に物事を考えようとするが、最後の最後で、結局は感情で動いてしまうところがある。

 異世界転生ものに詳しくはないが、存在は知っている。そのため異世界転生という可能性に気が付いたが、「この世界も現実。生きて、生活している人がいる」という事実と、自分の価値を見失っていた際に言われた「あなたにしかできない、あなただけが頼り」という言葉に生来の性格が揺さぶられ、転生先の器であるジェラルドとして、彼が戻ってくるまでナンシーとこの国を支えることを決めた。

 なけなしの公務員知識と持ち前の行動力、そして論理的な考え方で、何とかここまでジェラルドとして振る舞うことができている──はず。

 天才であり秀才であるジェラルドとの差をプレッシャーに感じていたが、周囲に助けを求めることで、すぐには埋まらないその差を何とか乗り切ろうと試み始めた。


ノンフォーク公爵ジェラルド・アラン・ハワード(25歳)

 オーギュスト王国の宰相であり、王の代理者を務めるノンフォーク公爵家の当主。

 黒髪短髪、切長の鋭く黒い瞳。背が高く細身だが、肩幅が広く筋肉質なため、威圧感があり強い存在感がある。その風格と度重なる心労のせいで、年齢よりプラス5歳ほど老けて見られるが、まだ25歳。ただし、彼の中身である私も30歳ぐらいだと思っている。

 宰相であった父の補佐官として若い頃から公務に携わり、父親が他界すると跡を継いだ。先王から絶大な信頼を寄せられており、まだ若い王子を遺して亡くなる際、ジェラルドを代理者として立てることを推薦した。

 寡黙で冷徹。ナンシー曰く「無愛想で、そっけなくて、無口で、何を考えているかわからない」。賢く頭が切れる上に真面目で勉強家でもあり、的確な判断力で国の執政を担う孤高の存在。反面、誰かに頼ることを知らないため全て自分で抱え込み、結果、過労で倒れることに。その際に「私」がジェラルドの中に入り込んでしまったが、ジェラルドはなぜか自分の身体に誰かが入ることを予測しており、ナンシーに自身を殺すよう命じていた。

 

ナンシー・ディミティ(28歳)

 グレアムズ王城のメイド長。

 艶のある黒髪にアイスブルーの瞳が印象的な色白の美人。背は一般的な女性よりやや高め。

 かつては名門貴族の令嬢だったが、没落し路頭に迷うところを、当時のノンフォーク公であり宰相であったジェラルドの父親に拾われ、ハワード家のメイドになる。その後、ジェラルドが公務に携わり始めたころ、その教養の高さを買われて王城付きのメイドに、ジェラルドが宰相になるのと同時期にメイド長に抜擢された。

 本来の仕事に加えて、昔からの癖で忙しいジェラルドの身の回りの世話をしていると、いつの間にかお世話係が定着してしまった。王城の中でジェラルドと唯一日常の会話ができる人物であり、ジェラルドを弟のように思っている。

 歳の離れた腹違いの弟がいる。

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