第4話 平凡女子大生、声優彼女のライブに行く。①

「フンフンフーン、フンフフンフー」


夜ご飯とお風呂を済ませ、少し休憩していると、可愛らしい鼻歌が聞こえてくる。


琥珀こはくちゃんがリビングにある大きな鏡の前で鼻歌に合わせて踊っている。


長い髪を揺らしながら、ウサギが跳ねるように踊っている。時々、首を傾けたり、ウインクしてみたり。


もうすっかり自分の世界に入っている。


そう、琥珀ちゃんは明日ライブなのだ。

私も招待されて関係者としてライブを見に行けることになった。


今流行りのアイドルアニメから派生した声優ライブ。ラブ◯イブ!とかア◯マスとか色々あるみたいだ。

琥珀ちゃんが前に説明してくれたことがある。

私はアイドル系のアニメはあまり見ないので、分からない。

琥珀ちゃんが出てるのはなんだったかな。ゾから始まるやつ?ん、いや、シから始まるんだったかな。どうでもいいや。可愛く歌って踊る琥珀ちゃんが見れるなら、私は大満足である。



琥珀ちゃんは今日も1日中ライブリハーサルだったのに、家に帰ってきても確認がてら練習している。

真面目だなぁ。これがプロ意識というものか。


私は家に帰ったら、基本だらだらしてしまって何も出来ない。

高校生時代も家に帰ったらリラックスし過ぎて全く勉強に手がつかなくなるので、テスト前は学校に残って勉強していた。


家は居心地が良すぎて、アイスのように溶けてしまう。ただダラダラ休憩する場所に過ぎない。

だから、家で勉強や仕事ができる人は凄いと思う。


今の様子を見るにきっと、琥珀ちゃんは家でもちゃんと勉強する高校生だったに違いない。



ふと時計を見るともう23時をまわっていた。

琥珀ちゃんは、振り付けの確認に夢中で時間の経過を全く気にしていない様子だった。


「琥珀ちゃん、もう23時だよ!お風呂入って寝た方がいいんじゃない?明日のために体力回復しておかないとー」


「あっ、もうそんな時間?お風呂入ってきまーす」


少し汗をかいた琥珀ちゃんはタオルと着替えを持って、スタスタとお風呂場に向かった。


人気声優の踊る姿をこんなに近くで拝見できるのは、彼女である私の特権なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る