彼女の夢
ゆう
第1話
大好きな友人が亡くなった。
彼女が亡くなった翌年から、わたしは彼女の夢をみるようになった。
はじめの頃の夢は、2人で一緒に遊ぶ夢だった。夢の中では、彼女は元気に過ごしていた。彼女がもしも生きていたら、本当にあったかもしれない日々だった。夢の中のわたしは、彼女が亡くなったことを知らなかった。本当に楽しそうに2人で遊んでいた。
夢の中がとても楽しかったから、目が覚めると現実とのギャップに心底悲しくなって、いつも大泣きしていた。「ちがうよ。彼女は、本当はもういないんだよ。だからもう会えないんだよ」と、泣きながら自分に言い聞かせていた。
でも、夢を見続けると、だんだん夢の内容が変化してきた。
次の夢では、夢の中のわたしは彼女が亡くなったことを知っていた。だから、夢で久しぶりに会えたことをとても喜んでいた。
「久しぶり!やっと会えたね。もう夢じゃなきゃ会えないから。ほんとに嬉しい。来てくれてありがとう。話したいこといっぱいあるよ」
会話の内容は覚えていないけど、2人でえんえんおしゃべりして、楽しそうに笑っていた。
ふと目が覚めたとき、「もうあんな時間はこないんだな」とわかって、自然と涙がとまらなかった。ぽっかり穴が空いたような気持ちで、呆然としたまま、ただただ悲しかった。
本当に幸せな夢なのに、いつも目が覚めたら、しばらく涙がとまらなかった。とめかたもわからなくて、朝から予定がある日は困って途方にくれた。
でも、さいごの夢は、初めて泣かなかった。
夢の中のわたしは、彼女が亡くなったことを知っていた。そして、亡くなった彼女といつもみたいに、一緒にお出かけしたり、ランチに行ったりして遊んでいた。本当に楽しくて、わたしはとてもはしゃいでいた。そして、最後にお買い物に行ったお店。わたしはレジで、知らない店員さんからこう告げられる。
「彼女はもう亡くなっています。この時間はは今だけ。本当に今だけですよ。ちゃんと理解してくださいね。」
わたしは、びっくりして固まった。何か言わなくちゃと思っても、言葉がつまって何も言えない。でも内心、とても怒りながら思っている。
そんなこと、全部わかっている!あなたに言われなくても、ちゃんとわかっている。でも、今はこんなに楽しいのに。なんでそんなひどいことを言うの?
自然と流れる涙をとめられず、思いっきり泣きながら、嗚咽でさらに何も言えないわたしは、怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになりながら、知らない店員さんの顔をぎゅっと睨み付けている。
そして、目が覚める。
目が覚めた後は、なんだかとても疲れてぐったりした気持ちになる。でも、夢の中で思いっきり泣いたせいか、現実のわたしに涙は流れない。
泣かずにすんだことにほっとしながらも、「せっかくなら楽しい夢のまま終わりたかったのに」と微妙な気持ちになる。
現実で大泣きするのと、夢の中で思いっきり泣くのは全然ちがうけど、泣いた後はどちらもぐったりする。「そこは同じなんだな」と心から納得する。
夢で泣いても、また会いたいな。
また来てくれますように。
彼女の夢 ゆう @chappo
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