ムジカ・ジャーマンスープレックス
偽教授さん主催の自主企画・少年杯(「少年」呼びする年上女性が出てくる物語の祭典)に参加しようと思って書いた作品です。
◆タイトルとコンセプト
私生活で大変苛々することがあり、ぶつける先もなかったので、代わりにキレ散らかしてくれるキャラクターを書きたくて書きました。
タイトルで完全に出落ちですが、他に浮かばなかったのでそのままにしました。これに限らずタイトル考えるの苦手です。
あいみょんの好きな曲で『生きていたんだよな』というものがあるんですが、その中で
“「今ある生命を精一杯生きなさい」なんて綺麗事だな 精一杯勇気を振り絞って彼女は空を飛んだ“
という歌詞があります。
一時期、希死念慮がある友人と数年行動を共にしていたことがありますが、曲を聴いてまさにこれだと思いました。
「生きて欲しい」なんて薄っぺらい言葉はこちら側の願望でしかないと、まざまざと思い知らされました。
本人が精一杯使う勇気の方向なんて、他人が決める資格は無いのです。
じゃああの時、私はどうしたら良かったんだろうか?
どんな言葉を掛けたら良かったんだろうか?
未だに答えは出ません。
なので「死ぬな」という懇願以外のアプローチが出来るかを考えてみて、いっそ死ぬのがどうでも良くなるほどキレてみたらどうかなと思って書き始めました。
ここまで書いてみて、もう少しポップなコンセプトにしても良かったなとも思います。
風の噂ですが、友人はまだ生きていて元気そうです。
◆キャラクター
一人称視点は僕。
いじめられっ子中学生です。とにかくキレ散らかされているうちに、最終的に自分もキレて大暴れします。
自殺未遂の理由がちょっとワンパターンだった気がしますが、あまり掘り下げるとキャッチボールが長くなるのでやめました。
これくらいの年頃って、学校が世界の全てなので、そこで生きていけなければ死ぬしかないという視野の狭さがあるのではと思います。あくまで個人の感想です。でも決して、誰も笑うことはできないと思います。
ヒロインはムジカ。
二十代くらいの女性。
キレてる理由の大きい部分は「安易にポップに死んで解決しに来てんじゃねえカス」かなと思います。
題材が重いので、憂さを吹き飛ばすように見た目をとにかく派手にしました。
キレ散らかすこと以外決まってなかったので、プロットの段階では全然ブレブレで書きづらいキャラクターでした。
しかし『飛び降り自殺を図ったが失敗し、脚に後遺症込みの大怪我を負った』『実は昔は真面目ちゃんで、周囲のプレッシャーやら親の過干渉やらで人生が嫌になった』という設定が降ってきてからは途端に書きやすくなりました。
ムジカは本名ではなく、多分本名は優香とかで、死にかけて一旦自分が『無地』になったからそう名乗っているとかそんなだと思います。
これまでもこれからも、過去に自殺を図った自分が誰かの自殺を止める資格はあるのか、という悩みに苛まれ、それでも目の前に次々に自殺志願者は現れ、自己陶酔が凄い相手に嫌気が差し、やっぱり理不尽にキレ続けるんだと思います。
最後に出てくる男性はダムの管理会社の人で、ムジカが昔飛び降りした時に引き止めたものの目の前で飛び降りを決行され、救急車を呼んだという過去があります。
◆本文
題材だけだととにかく重く暗くなるので、それを吹き飛ばすようにムジカにキレ散らかしてもらいました。
が、私自身のキレ方にバリエーションが無かったので「どうキレたら理不尽か」を軸に会話を考えました。結果文量の割には書き終わりまでに時間がかかっています。
◆舞台・その他設定
「飛び降り自殺って失敗することもあるらしい」と昔誰かに聞きました。前述の友人だったかな。
死にそうで死なないかもしれない高さで、キャッチボールする余裕がある広さを確保でき、人目に付きにくい場所を考えた時、ダムにしようと思い立ちました。
キャッチボールをホームランで打ち返す理不尽なシーンは早い段階でプロットにあったので、何とかキャッチボールをさせようとしています。
例え文章の上だろうと、キレ続けるのって疲れるなと書いてて気付いた作品です。
しばらくこういうのは良いかな、と個人的に思っています。
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