第4話:開戦

【階級制度】


この大陸には五つの国があるが、それら全ての国の兵士階級は統一されている。


「白銀」

才能に恵まれた者の階級、人智を超えた化け物の集団、他の兵士とは違う圧倒的な実力を持つ。


「ゴールド」

ある程度の実力を得ている者の階級、作戦の指揮を任せられたりする、この階級が一般兵士で辿り着ける最高到達点。


「シルバー」

中堅兵士の階級、一般的な階級で、基本的には入隊からおよそ10~20年でシルバーに昇格する、最も人数の多い階級でもある。


「ブロンズ」

新米兵士の階級、新兵の9割はブロンズからスタートする、成り上がるのも、くたばるのも自分次第。


この中でも白銀は化け物の中の化け物、説明不可能な力を使ったり、実際に化け物になる奴もいると聞く...私が国を滅ぼす作戦を実行する上で、避けては通れない障壁になるだろう。


...このオーラ...初めて会うけど私には分かる、あのピエトロとかいう軍人よりも...森で襲ってきた狼よりも...圧倒的に強い。


彼女は間違いなく、白銀だ。


「...ねぇ、聞いてる...この狼...」


赤髪の女が狼の生首を人差し指と親指でつまんでプラプラと揺らしている。


「...知りません。」


...国を滅ぼすと言っても、計画的にやらないといけない、この女も私の敵だ、必ず殺す、だけど...今戦っても私が殺されてしまうだけ...、ここは、全力で切り抜ける。


「...そぅ、知らない...そっか...」


赤髪の女性が席を立つ、...背が高い、180cmは越えているだろう。


「...なら、質問を変えるね。」

「...どうして...【悪魔】を連れているの...?」


「...!!」


...まずい、どんな方法を使ったのか知らないけど、グレモリーを一発で悪魔と見抜いた、...それにこの人は、悪魔という存在を知っている...?なら、私が悪魔の力で軍人達を皆殺しにしたのもバレてしまうかもしれない。


...こうなったら、殺すしかない、彼女は今油断している、白銀といえど、隙を付けば一撃で仕留められるかもしれない......どうする?殺すか......?殺す...殺す...殺す...ッ!!!


「...うぇぇ~んッ!!お姉ちゃぁぁぁん!!この女の人怖いよぉぉ!!」

「...!?」


赤髪の女を指さして唐突にグレモリーが泣き出す、彼女の性格を知っているからだろうか、1ミリも可愛くないし情が湧かない。


「.........」

「...カマをかけてみたんだけど、ごめんね、人違いだったみたい...」


...赤髪の女がグレモリーを人を見る目で見ていない事は気になるが、グレモリーの嘘泣きで何とか切り抜けた様だ。


グレモリーを泣き止ませるふりをしていると、いつの間にか赤髪の女は店から出て行ったようだ。


「...えへへぇ...どう?私のおかげだよねぇ...ほめてほめてー!!」


「...ありがと...」















「...スカーレット様...店の様子は...」


部下の兵士がスカーレットに話しかける。


「...うん、いたよ、悪魔と...契約者の女の子。」

「...悪魔の匂いは分かりやすいね。」


「...では...」


「うん...」

「今夜殺す。」
















村から持ってきた金額はあまり多くない、私はグレモリーとご飯を食べた後、武器屋で一番安いナイフを二本購入し、一番安い宿屋に泊まることを決め、今はその宿屋の二階の部屋の中でグレモリーと休んでいる所だ。


「今夜はここで寝るのー...?」


グレモリーがニコニコと微笑みながら私に話しかけてくる、あの店で白銀を追っ払えた事が嬉しかったらしい。


「ねぇねぇ、もっと褒めてよぉ、ねぇねぇ」


私のベットの中に潜り込んでくる、正直うっとおしい...彼女が少女の姿をしていなかったら、このナイフで首を一刀両断していたかもしれない。


「...ねぇ、なんか焦げ臭くない...?」


グレモリーが私のベットでもぞもぞと動き回るのをやめると、ベットから顔を出して、辺りの匂いを嗅ぐ。


「...ねぇ、ほら?」

「...ほんとだ......まさかッ!!」


急いでベットから飛び出し、部屋の窓を開ける。


...宿屋が燃えている、最悪だ、火を付けられた、...一体誰に...


「...シファちゃん!!あれッ!!」


グレモリーが指を指したその先には、例の白銀女が背中に大きな大剣を背負って立っている。


「...シファ...って言うの...?あなた...」

「...良い名前...だね。」






「...くそッ!!!」


やられた...火の勢いがどんどん強くなる、一刻も早くここから脱出しなければ...


かと言って、扉から階段を降りれば火に飲まれる、窓から飛び降りても、あの白銀女と戦う事になる、今の私では、あの女に勝つ自信は...


.........いや、何を言っているんだ...?


私の敵は国だ、初めから勝率なんて無いに等しい、なのに...なんで...どうして私は戦っている...?


なんで私はあそこから生き延びた...?初めは死ぬつもりだった、一刻も早く死んで、お姉ちゃんの所に...お姉ちゃん......お姉ちゃん.........。








「シファ!!こっちこっち!!」


...古い記憶、お姉ちゃんが笑顔で私に向けて手招きをする。


「...みて!!花飾り!!シファに似合うと思って作ったの!!」


「............」


「...!!やっぱり似合う!!ふふん...それでこそ私の妹!!」


「...お姉ちゃん...」


「...ん?なぁに?」




「私...頑張る...お姉ちゃんのために...」
















「...白銀だろうと...なんだろうと...」

「...全員殺すッ!!!!」


両手にナイフを構え、助走を付けて窓ガラスを壊し、飛び出す。


「...その殺意...いいね。」




シファンナ・アンラン

VS

マゼンタ・スカーレット




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