身近にあるけど不思議な物

 「ねぇ、玲。何か思い付いた?」

下校中、隣にいる千夏さんが話しかける。


「全然。千夏さんはどう?」


「アタシもダメ…」


今日の化学の時間、担当の桜井先生が課題を出した。


それは『身近にあるけど、仕組みがわからなかったり不思議な物を1つ挙げ、それについて詳しく調べよ』というもの。


簡単に言えば、になるかな。ただし、実在する物に限るそうだ。


期限は1週間後。慌てる必要はないけど、今の内に考えておこうという事で現在に至る…。



 「…あ、思い付いたわ。『携帯』はどう?」

千夏さんが閃いたようだ。


「携帯か…」

老若男女問わず使っているけど、仕組みを理解して使っている人は皆無だよね。


「良いと思う。課題に合ってるしね」


「アタシは考えたんだから、玲も言いなさいよ!」


千夏さんの言いたいことはわかるけど、急かさないでほしい…。


「う~ん…、『地球』とか…?」

僕達は地球人でありながら、地球についてよく知らないよね。


「それ、身近なの?」


「身近だと思うけど…」


住人にとって、家の問題は身近だよね?

だから地球人にとって、地球のことは身近だと思うけどな~。


「他の候補も知りたいし、母さんに訊いてみましょ」


「そうだね」


千春さんは、なんてアドバイスしてくれるかな…?



 帰宅後。千夏さんはリビングにいる千春さんに経緯を説明する。


「面白いテーマね♪ 色々あるけど…」


その中で、何を言うんだろう?


「男の人のお〇ん〇んかな♪」


「…え?」

千春さん、どういうつもりなの?


「ふざけてないわよ。私と千夏ちゃんにはないんだから、不思議なものよね?それなら、課題のテーマに合うと思うけど?」


「…確かに。何でもっと早く気付かなかったんだろ?」

千夏さんの目は、僕の股間にくぎ付けだ。


「玲君は、私達の体に疑問を抱いたことはないの?」


「ありますけど…」


女性の体は、絶対より不思議に満ちている。赤ちゃんをお腹の中で育てて産む。よくわからないけど、凄いとしか言いようがない。



 「アタシのテーマは決まったわ♡」

未だに僕の股間を見つめてるな…。


「千夏さん、本当にそれで良いの?」


「母さんの言った通りよ。課題に合ってるんだから、問題ないでしょ?」


「そうだけどさ…」


千夏さんがをテーマにしたので、僕も同じにした。

不思議に思う事は事実だし、これから代案を考えるのが面倒だからだ。


けど、内容が内容だからマニアックなことは書けず、保健体育で習った範囲でまとめるのだった…。



 そして1週間後。化学の時間になり、桜井先生が課題のことを話しだす。


「みんな、課題はやったか?」


もちろんやったよ。内容は置いとくけど…。


「今日から数回に分けて、課題で調べたことを前に出て発表してもらうからな!」


…え? 嘘でしょ? 女性の体について書いたことを、みんなの前で言うの?


女子達に絶対ドン引きされるじゃん!


「発表する順番は、あいうえお順だ!」


しかも、今日発表することが確定してしまった…。

今村いまむら』だから、最初のほうなんだよね。


…隣の席の千夏さんが、ホッとした表情を見せる。

今日は『古賀こが』まではいかないと踏んだかも?


今日、黒歴史が生まれちゃうんだな…。

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