キャッシュレス談話

 千夏さんの家のリビングで3人のんびりしている時、千春さんが声をあげる。


「玲君は、というのを使ったことある?」


「ありますよ」

とはいえ、何かあると怖いから現金と半々ぐらいで使ってる感じかな。


「母さんはクレジットカードがあるんだし、使わなくて良くない?」

千夏さんが指摘する。


「そうなんだけど…。時代の流れに取り残されないよう、一応知っておきたいじゃない。それで色々調べてみたら、何とかペイがいっぱいあるんですもの。困っちゃう」


そういうのに詳しくない人から見れば、似たようなものがたくさんある感じになるのか…。僕も全容を把握してる訳じゃないし、気持ちはわかるけど。


「アタシは『ペイ』というふざけた響きが好きじゃないから、使う気にならないわ…」


ペイって英語の『Pay』が由来だから、ふざけてる訳ではないんだけど…。

言葉の響きって、印象に大きく関わるよね。


「そうかしら? 私は好きよ♪ 可愛いじゃない♪」


可愛いと思ったことないな…。千春さんのセンスは独特かもしれない。



 「玲君。私に合うペイは何になるのかしら?」


「ペイとポイントは、密接に関わっているんですよ。なので何のポイントを貯めてるかで、ペイを選ぶと良いですよ」


…言ってから思い出した。千春さんがいろんなポイントを必死に貯めていることを。

そんな状態で、このアドバイスはダメだな。余計混乱させてしまう。


「なるほど…。私のようなおばさんは、付いていくのがやっとだわ…」


付いていくのがやっとのおかげで、僕の説明の違和感に気付いていないようだ。


「玲君のお母さんはどう? ペイを使いこなしているかしら?」


「いえ。一時期は興味を持ったんですが『面倒』と言ってからは、放置ですね」

母さんのようなタイプは、会計時に出すポイントカードが精一杯だ。

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