ポイント管理

 「あっ♪ お値打ちになってる♪」


千夏さんの家のリビングでのんびりしている時、チラシを観ている千春さんが嬉しそうに独り言を言う。


「でも、ここって…」


嬉しそうな反応から一転したぞ。何なんだろう?


「母さん、何かあった訳?」

千夏さんも気になったか…。


「お得商品を見つけたんだけど、この店でもらえるポイントをほとんど使わないのよ…。どうせポイントが付くなら、いつも使うポイントのほうが良いわよね?」


「そうだけど、ポイントにこだわり過ぎるのも…」


僕も千夏さんと同意見だ。ポイントに振り回されるのは、本末転倒じゃない?


「主婦はね、に敏感なの。だからポイントにこだわるのよ♪」


僕だってお小遣いをやりくりしてるけど、千春さんの場合は家計だからな…。

やりくりの規模が違うし、責任だって大きく異なる。


僕の想像以上に、苦労してるはずだ…。



 「玲君のお母さんは、ポイント管理してるの?」

千春さんに訊かれる。


「してますよ。会計時にポイントカードを出すのを観たことがあるので。ただ…」


「? どうかしたの? 玲君?」


「前、ゴミ箱に母さんのポイントカードがあったんですよ。なので千春さんに比べたら、貯めるポイントを選んでるかもしれません」


そう考えなきゃ、ポイントカードを捨てないよな…。


「ポイントカードを捨てたって事? もったいなくない?」

千夏さんがツッコむ。


「多分、残ってるポイントを使い切ってから捨てたんだと思う。そのポイントは貯める気がないってことだろうね」


わずかなポイントに翻弄されるなら、使い切ったところで縁を切る。

お得さには欠けるけど、ゴチャゴチャ考える手間は減るよね。


「玲君のお母さんは、思い切ったことするのね。私には真似できないわ…」


「単に、めんどくさがりかもしれませんが…」


ポイントとの付き合い方は、人それぞれだ。その人に合った距離感で十分だよね。



 僕の話を聴いてから、千春さんは電卓を使い始める。

おそらくポイントの還元率とかを含めて、お得になるか計算してるんだろう。


「…さっきのお買い得商品を買ってくるから、2人とも留守番よろしくね」


「わかりました」


「うん。いってらっしゃい」


千春さんはハンドバッグを持って、足早にリビングを出る。


結局、ほぼ使わないポイントをもらうことになるけど、それはどうするのかな?


これだけお得にこだわる千春さんの事だ。『もらえるものは、もらっておきましょ♪』と思ったのかな?


もしくは今回の買い物を機に、使う機会を増やすとか?


千春さんのマメな行動を観ると、母さんがズボラに思えてきた。

色々大丈夫だよね…? 母さん?

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