学校であり得ないことが起こる

 現代文の時間。担任の冬城先生が、クラスを見渡して言う。


「…私が副担任の頃、担任だった高橋先生が『相談員』のことをみんなに話したらしいわね」


そんな話もあったような気がする。


…じゃなくて、あったあった。佐下が玲に『千春さんを相談員に勧誘して欲しい』と言ってたっけ。


これ以上思い出すと、佐下を殴りたくなるからやめとこ。


「…その相談員だけど、今廊下で待っているのよ」


廊下にいるの? 明らかに面倒そうなのに、物好きな人もいるもんだわ。


冬城先生は廊下に顔を出し「入って下さい」と言った。

その物好きな人って、一体誰なんだろう…?



 冬城先生が呼んだ人は…、何と母さんだった。

母さんは、壇上にいる冬城先生の横に立ち…。


「皆さん、初めまして。相談員の古賀千春です」


「千夏さん、どういう事!?」

隣の席の玲が、アタシに訊いてくる。


「知らないわよ。アタシも今知ったんだから!」

母さん…。アタシには言って欲しかったなぁ…。


「…私が古賀さんのお母さんに声をかけた理由は、おっぱいが大きいからよ」


それと相談員に、何の関係がある訳?


「さすが先生だぜ! 男心がわかってる~♪」


佐下の奴…。人の親を嫌らしい目で観るとか、ありえないでしょ!!



 「相談員は、信頼関係がないと成り立たないと思うんです。皆に信頼されるため、私の秘密を話します」


母さんの秘密って何? 娘のアタシですら、心当たりがない…。


「私の秘密…。それは、千夏ちゃんの彼氏の玲君とHな関係を結んでいるんです」


………。


静寂に包まれる教室。


アタシが知らない間に、 玲と母さんはそんな関係になってたの?

必死に情報を整理する中、佐下が大声をあげる。


「千春さん、嘘ですよね!? 今村君とHしたことあるって」


「本当よ。玲君はテクニシャンなの♡」


「玲! ちゃんと説明して!!」

徹底的に訊きだしてやる!


「千春さんは、見ての通りナイスバディでしょ? あの体を観たら、男はイチコロだよ。誰でも手を出したくなるって」


「だよな。さすが今村君」

佐下の奴が、玲に共感する。


「アタシ達まだHしたことないのに、先に母さんに手を出した訳? 信じられない! 何考えてるの!?」


「うるさいなぁ…。貧乳の千夏さんは、静かにしてて」


「貧乳ですって~!! 言って良いことと、悪いことがあるわよ!!」


泣いて謝っても、許さないんだから!!!




 「…って夢を見たのよ。どう思う?」


玲と一緒にいるのは楽しいけど、話のネタに困ることはある。

なので、今朝見た夢について話してみた。


「キャラ崩壊がひどすぎるよ…」


「まぁ、そこは夢だから気にしないで」

現実ではあり得ないシチュエーションを見られるのが、夢の良いところでしょ!


「夢オチって、最後に『夢だったのか』と思うものでしょ? 千夏さんの夢は、序盤から夢オチってわかるよね」


「うるさいな~。そういう玲は、夢を見ない訳?」

アタシの夢に文句言うなら、玲の夢はどうなのよ?


「見ることは見るけど『高いところから落ちる』とか『何かに追いかけられる』みたいな、ストーリー性がない夢だね。千夏さんの夢は面白そうで羨ましいよ」


「夢が面白いねぇ…。考えたことなかったわ」

話し合う事でもないからね。話のネタがあったら、話さないか…。


なんて他愛無いことを話しながら、アタシ達は学校に向かうのだった。

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