謎のスイッチが入る千春さん
いつも通り3人で千夏さんの家のリビングで過ごしていると、『チンチーン♪』という自転車のベルを鳴らしたような音が聞こえる。何なの、この音?
「私の携帯の着信音だわ」
千春さんはそう言って、リビングにあるカバンを漁り始める。
何とか見つけた彼女は、慌てて出て行った。電話かな?
それから数分後。千春さんが戻ってきた。
「パート仲間からだったわ。『明日、シフト代わってくれない?』 ってお願いされちゃった♪」
千春さんは、短時間のパートに出ているのだ。
「大変ですね…」
「困った時はお互い様よ♪」
「それより母さん。着信音変えたのね」
千夏さんも知らなかったのか…。
「ええ。この間、パート先で着信音が被ったことがあってね。変えたのよ。でも変えるなら、個性も必要じゃない? それで色々考えて、あれにしたの♪」
あの着信音、重要なのは自転車のようなベルじゃなくて『チンチーン♪』のほうだろうな。そう考えると、選んだ理由に納得できる。
赤の他人が聴くと『自転車が趣味なのかな?』程度になるのがミソだな。
「アタシは内蔵されてる候補から適当に選んだけど」
「僕もそうだよ」
着信音なんて知らせるためにあるんだから、こだわる必要ないと思うけど…。
「それだと寂しいというか、物足りない感じしない? 2人とも?」
「母さんの言いたいことはわかるけど、誰に聴かれるかわからないのよ。恥をかきたくないし、無難なやつにしちゃうって」
落書きにキノコを描いて恥をかいた千夏さんが言うと、説得力がある…。
「僕も千夏さんと同じですね。そこまで気にしたことがないです」
仮にこだわるなら、携帯本体やカバーのほうが良いよな…。
「甘い、甘いわ。特に千夏ちゃん!」
千春さん、何故か熱が入ってるな。よくわからないスイッチ入った?
「…何がよ?」
「他の人に聞かれるかもしれないから、無難な音にする…。そういう考えもあるでしょうね。だったら、下着も無難で良いのかしら?」
何で急に下着が出てくるの?
「嫌よ! 玲にエロい目で観てもらうために、色やデザインにこだわりたいわ!」
「それと一緒よ。些細なところもこだわらないと、その人の魅力は徐々に減っていくの。もし千夏ちゃんの魅力が減ったら、玲君はどうするかしら?」
「玲! 別れるなんて言わないわよね!?」
弱気になったであろう千夏さんは、僕にぴったりくっついてくる。
「絶対別れないから。千夏さん安心して!」
「…母さんの言う通りだわ。着信音であっても、手抜きしちゃダメね」
「わかってくれて嬉しいわ♪」
あっという間に千夏さんを引き入れたな。千春さん、恐るべし。
「玲! あんたも変えなさいよ!」
「…わかった」
今反論すると、絶対面倒なことになるので承諾する。
そう言われても、候補が全くないんだけど…。困ったな…。
こうして、新たな着信音探しをする僕と千夏さん。
未だにしたい着信音が浮かばないし、彼女の候補を参考にするか。
「千夏さん、良いのあった?」
「そうね…。今のところはこれらかな」
言い終わった後、候補の着信音を流す千夏さん。
1つ目は『パシャパシャ』という音だ。水たまりを踏んだ時の音っぽい?
これが個性になるの?
「玲のアレが、アタシの中で動く時の音に近くない?」
それなら『クチュクチュ』みたいな粘着性がある音になると思う…。
でも連想はできるから、遠からず近からずって感じ?
間違いなく、千夏さんの個性が出てるな。
「もう1つはこれ」
…ん? 何も聞こえないけど? バイブだけなの?
「音がないこそ、バイブの存在が引き立つの。バイブといったら、おもちゃよね」
当たり前のように言われても…。これも千夏さんらしいな。
「最後はこれ」
『ひゅー』という風の音だ。冬に聴いたら鳥肌が立つ気が…。
「風と言ったら、スカートがめくれるラッキースケベよね。これは玲向けかな?」
僕達とエロは切っても切れない関係だけど、着信音と関連付けるのは難しい…。
「この3つの中なら、どれが良い?」
正直、どれも微妙だな。もうちょっと考えるべきか…。
いや、今の状態で考えても無駄だ。Hで気分を変えよう。
「千夏さん、さっきのバイブだけの状態にして」
「わかったわ」
彼女は携帯を操作し、止めるまでバイブが続く状態にする。
僕は千夏さんの携帯を持っている手をつかみ、自身の下の敏感ポイントに震えてる携帯が当たるように位置調整する。
「もう、真面目に選んでよね。 …あん♡」
早くも千夏さんは気持ち良さそうだ。
「ゴメンゴメン。Hしながら考えるからさ」
Hをすれば音が出る。その音で候補を見つけるとしよう。
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