あの本は、電子書籍でお願いします

 部屋を片付けるより、新しいエロ本を買うペースのほうが早い2人。

そうなると、僕が預かる分が増える訳で…。


このままだとマズイよな。母さんに怪しまれる可能性が増えてしまう。

何とか2人を説得する方向にしないと。



 ある日。千夏さんの家のリビングでのんびりしている時、2人に声をかける。


「千春さん・千夏さん。新しいエロ本を買うペースを落とすべきでは?」


「無理ね」

千夏さんが即答する。


「そうしたいのは、山々だけど…」

理解を示してくれる千春さん。


「僕が預かれる量にも限界があります。そうなる前に対策しないと」


「玲。あんたなら、どういう対策をする訳?」


「やっぱり…、しかないんじゃない?」

漫画を紙で読む千夏さんが納得するかどうか…?


「電子書籍ねぇ~…」

彼女は、明らかに乗り気ではない。


「電子書籍なら、今みたいに場所に困ることはなくなるよ」

読み心地は大きく異なるけど、それは慣れてもらうしかない。


「これ以上、玲君に迷惑をかける訳にはいかないし…。そうしましょうか」

千春さんは納得してくれたぞ。後は…。


「でもさ~、電子書籍ってパッと読めないのが不便よね…」


本を手に取って、読みたいページを読む。その手軽さは、紙のほうが上だ。

千夏さんが渋るのはわかるけど…。


「千夏ちゃん。玲君は見返りなしで、私達のワガママを聞いてくれてるのよ。だったら、私達も行動を変えないとね?」


千春さんのフォローがありがたいな。


「……わかったわよ。そういう方向で良い」


完全に納得したようには見えないけど、これで解決するな。


「じゃあ預かってる分は、近い内に返しますね」

今ある分は、うまくやりくりして欲しい。


「お願いね、玲君」



 後日、預かっていたエロ本を全て返した。

電子書籍は届くまでのタイムラグがないので、買ったらすぐ読むことができる。


そのせいだろうか。2人がタブレットを観てる時間が激増した。今回の件をきっかけに、千春さんがタブレットを2台購入したようだ。


年齢制限の関係上、千春さん名義で買うのは変わらない。けどアカウントの紐付けはできる。なので違うタブレットでも、購入したエロ本を共有できるのだ。


電子書籍になって一見問題なさそうだけど、ある事がやりにくくなった。

それは、2人が買ったエロ本を僕が読むことだ。


現物のエロ本なら、気軽に手に取って読むことができる。

しかし電子書籍だと、どちらかに頼んでタブレットを借りなければならない。


2人のことだ。お願いすれば貸してくれると思う。けど、ひと手間かかるのは否めない。電子書籍は貸し借りしにくいことに、なってから気付いたんだ…。


2人だけエロ本を読んでるのが、悔しいというか仲間外れにされたというか…。

このモヤモヤ、どうやって解消しよう?



 別の日。僕は思い切って千春さんにお願いすることにした。


「千春さん。僕が欲しい電子書籍のエロ本を買ってください! お金は出します」

彼女のアカウントに、僕好みのエロ本が履歴に載っちゃうけど…。


僕の部屋は、2人と違ってスペースに困っていない。

けど現物のエロ本は、母さんにバレる可能性が付きまとう。


なので電子書籍にした。それを読むには、アカウントの紐付けが必要だね。

2人のタブレットを借りれば、紐付けは不要だけど…。


僕のお願いを聴いた千春さんは、驚いた表情をした。…何でだろう?


「玲君が私にHなお願いをしてくれるなんて…♪」


ちょっと意味が違うような…?


「前のあんたなら、そんなお願いしなかったと思うわよ。変わったわね」

近くにいる千夏さんも、意外そうなコメントをする。


この2人と関わるようになってから、Hの経験と知識が増えたからね…。

僕も男だし、以前とは興味の持ち方だって変わるよ。


「玲君が肉食になった記念に、1冊買ってあげるわよ。私のおごりで♪」


「良いんですか!? ありがとうございます!」


「めちゃ嬉しそうじゃん、玲」


「そりゃ嬉しいよ。エロいことは、いつでも楽しめるから」


僕は2人の影響で少しずつ変わり始めるのだ…。

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