千春さん、新たな属性を知る

 登校前、待ち合わせ場所に向かうと既に千夏さんがいた。

僕はいつも通りに来たから、彼女が早いことになる。


「玲、おはよう」

千夏さんは満面の笑みだ。


「おはよう、千夏さん。なんか良いことあった?」

笑顔の理由が気になる…。


「今日ね、またエロ本が届くのよ。楽しみだから早く起きて来ちゃった♪」


千春さん、また買ったあげたんだ…。


僕と千夏さんは18歳未満なので、千春さん名義で18禁アイテムを買ったようだ。こうするのは、今回で2回目になる(前回は『年齢制限の謎』の時)


本当はいけない事だから、千春さんが何か条件を出して買ったんだと思う。

…いや、彼女自身がエロ本に興味がある線かも?



 放課後になってすぐ…。


「玲、さっさと帰るわよ!」


「うん」

待ち遠しいのはわかるけど、がっつき過ぎじゃない?


そして帰宅後、すぐリビングに向かう千夏さん。

するとダンボールが開いており、千春さんが早くも読んでいた。


「…おかえり。我慢できないから、読んでるわ♪」


「気にしないで。…アタシもさっそく読も♪」

そう言って、適当な1冊を手に取り読みだす。


僕も読んじゃおうかな…?


適当にダンボールを漁ったところ、個人的にタイプの女の子が表紙のエロ本があったので、手に取って読むことにする。


黙々とリビングでエロ本を読む3人。

世界広しといえど、こんな事をするのは僕達だけだろう…。



 「ねぇ、千夏ちゃん。ちょっと訊いて良いかしら?」

あるページで手を止めた千春さんが、彼女に訊く。


「何?」


って何ていうの?」


「『男の娘』よ。って書くの」


「へぇ~、男の娘…。私、好きかも♪」


男の娘は多くのゲームや漫画で登場するから、千春さんが好んでも不思議ではない。


現実ではまず見かけないから、気になったんだろうね。



 さっきの質問からしばらく経過した後…。


「これは…、どういう嗜好なのかしら? う~ん、難しいわ」

独り言を漏らす千春さん。


「母さん? 今度はどうしたのよ?」

千夏さんが気になったので尋ねる。


「女の子の体に、お〇ん〇んが付いてるのよ。一体、どういう事なの?」


初めて観たら驚くだろうね…。


「それはね…、っていうのよ」


「ふ〇なり?」


「そう。マニアックなジャンルなのは否めないわ…」


「…まだまだ知らないことが、たくさんあるのね」


千春さんは、漫画などの2次元に縁がない。なのでといった、非現実的なことを受け入れるのに慣れていないようだ。


急かすことでもないし、温かい目で見守ったほうが良さそう。



 「…ちょっと待って。男の娘とふ〇なりって、あんまり変わらないわよね?」

情報整理と気持ちを落ち着けた千春さんは、千夏さんに尋ねる。


男の娘は、女の子のような男の子。

対しふ〇なりは、女の子の体にが付いている。


どちらも、女の子のような外見は共通しているね。


「ぜんっぜん違う!」

千夏さんが強い口調で否定する。


「…え?」

ぽかんとした顔をする千春さん。


「体付きは、母さんが言う通り似てるわ。けどが全く違うの!」


千夏さんのスイッチが入ったようだ。口を挟んじゃいけないな。


「男の娘の人格は、男で固定よ。けどふ〇なりは違うわ。男の人格に膨らんだ胸やがあるのと、女の人格に〇んぽがあるのとでは、話が違うでしょ?」


「…確かにそうね」

千春さんは少し考え込んでから答える。


「でしょ? いろんな人の嗜好に対応できるように、ジャンルもあるのよ」


…改めて、千夏さんのエロ知識にビックリしたよ。

少年漫画より、エロ本のほうが読み込んでるじゃ?



 「…いけない。これ以上読んだら、夜ご飯が」

新たなエロ本を取ろうとした千春さんだったけど、急いでキッチンに向かう。


やっぱり主婦は大変だな…。一方、千夏さんは変わらず読み続ける。


…そういえば、このエロ本達はどこに保管してるんだろう?

前回のを合わせ、そこそこの冊数になったはずだけど…。


「千夏さん。このエロ本って、どこにしまってるの?」


「アタシと母さんの部屋の引き出しよ。何があっても、父さんに見つかる訳にはいかないからね。厳重に隠してるって訳よ」


「なるほど…」


納得の理由だけど、隠しきれなくなったらどうする気なんだろう?

そう疑問に思ったけど、他のエロ本が気になるので読み続けることにした。

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