男子校・女子校の不思議

 千夏さんの家のリビングでのんびりしてる時、千春さんが彼女に話しかける。


「千夏ちゃん。あそこの女子校、来年度から共学になるらしいわよ」


「へぇ~。そういう話、結構聴くようになったわね」


「今は少子化ですもの。学校を残すために、だと思うけど…」


千春さんが言った女子校とは、僕と千夏さんが通う保坂高校よりちょっと遠いところにある女子校のことだろう。


学校名と場所は大体覚えてるけど、男の僕には縁がないのでうろ覚えだ。


「アタシさ、その女子校に進学しようかな~って思ったことがあるのよ」

僕を観て話し出す千夏さん。


「そうなんだ? どうして止めたの?」

理由が気になるな。


「保坂高校のほうが近いしね。それに、女子校ならではの雰囲気がわからないから怖くなっちゃって…」


学校見学はどこの学校にもあるけど、見学と生徒になるのは違うよね。


「もし女子校に行ってたら玲に会えなかった訳だし、行かなくて良かったわ」


そう考えると、人との出会いって一期一会だな。



 「女子校とか男子校ってさ、不思議だと思わない?」

千夏さんが妙なことを言い出す。


「何が不思議なの?」

そんな事、思ったことないな…。


「アタシの予想だけど、そういう学校に行く1番の理由は『異性が苦手だから』だと思うのよ」


1番になるとは思えないけど、動機にはなりそうだ。


「けどさ、外に出たら異性はあちこちにいる訳じゃない? どう足掻いても、異性との交流は避けられないじゃん。だったら共学で良いでしょ? 男子校・女子校が存在する理由がわからないわ」


今は男女平等の時代だから、どんな事も男女共に接する機会がないとおかしい。

千夏さんの言う通りだな。


「漫画である『男だけの村』とか『女だけの国』みたいのがないと意味ないって」


「……千夏ちゃん。難しいことは言わないけど、多感な時期は異性となるべく関わりたくない人だっているのよ。男子校・女子校は、無駄じゃないわ」


千春さんが異議を唱える。


「異性と関わりたくない…?」

ピンとこない千夏さん。


「そう。千夏ちゃんだって、玲君以外の男の子にジロジロ見られたくないでしょ?」


「当然よ。そんな奴はゴミと変わらないから、アタシからは話しかけないわ」


いくら何でも、それは言い過ぎだよ…。


「異性に対する考え方って、人それぞれなのよ。大人になっても異性となるべく関わりたくなければ、大変だけど自分に合う所を探すことになるわね…」


千春さんは胸の大きさから、異性にジロジロ見られることが多いはず。

だから色々思う事があるんだな…。



 「じゃあさ、女子校が共学になるのって裏切りみたいなもんじゃん!」

千夏さんは納得できない様子で話す。


さっき彼女が言った『異性を避けたいから』という理由で入学した生徒にとっては悲報だよね。だからといって、気軽に転校できる訳がない…。


「それは…、さっき言ったでしょうね。何が何でも、在籍している生徒が全員卒業するまで学校は残さないといけないし」


学校が存続するには、生徒の存在が欠かせない。

男子校・女子校が共学になるのは、おそらく苦渋の選択なんだろう。


「そっか…」

考え込む千夏さん。


次は何を言い出すんだろう? と思っていたら…。


「よく考えたら、女子校が共学になったってアタシに関係ないじゃん。母さん・玲。付き合わせて悪かったわね」


「千夏ちゃんの目の付け所は良かったと思うわよ♪」

微笑む千春さん。


「僕もそう思う。今まで1度も考えたことなかったしね」

当たり前のことに疑問を抱くのは、大切なことだと思ったよ。



 「玲は女子校に変な期待を抱いてないわよね?」

再び妙なことを訊いてくる千夏さん。


「急にどうしたの?」

何か期待することある?


「どこかで『男は女子校に願望を抱きやすい』というのを聴いたのよ。キスとか胸を揉み合う百合が日常茶飯事だと思う人が、いるとかいないとか…」


「そんな願望はないし、期待もしてないよ」

人によって、百合は意識するかもね。


「玲は大丈夫だと思うけど、一応言っとくわ。というのも、大変なんだから」


千夏さんの表情的に、実体験なんだろうか…?


「それは男だって同じだから、わかってるよ」


男と女って違いばかりが注目されるけど、意外に似ている部分のほうが多いかも?

そう思いながら、この話は終わっていく…。

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