リスと松ぼっくり

 秋になると、ニュースとかで紅葉の特集が増えるよね。


カメラマンが紅くなった木々をカメラに収めようとすると、落ちている松ぼっくりや野生のリスも映り込むことがある…。


のどかなワンシーンだけど、隣にいる千夏さんは落ち着かない様子だ。


「松ぼっくりとリスを同時に映しちゃダメだって…。気付かれちゃう」


彼女はを思い浮かべたようだ。繋げて読むと、そのままだからね。


「千夏さん大丈夫だよ。子供は、そんなのわからないから」


下ネタで気まずいのは、子供に意味を訊かれることだと思う。

松ぼっくりとリスを観て気付く子供がいたら教えて欲しい…。


「大人がわかるじゃん。子供って、大人の変化に敏感なのよ!」


「確かにそうね。千夏ちゃんの言う通りだわ」

微笑む千春さん。


いくら敏感でも、下ネタとは思わないでしょ…。



 紅葉を映していたカメラマンは、リスにターゲットを変えたようだ。

野生動物に会えるほうが珍しいから、理由はわかるけど…。


ターゲットになったリスが拾ったのは……、どんぐりだ。


「どんなら、セーフかしら?」

千夏さんはそう言うけど、気が気でないのは明らかだ。


リスは何故かどんぐりを捨てた。傷んでたとか?

その後、また別の物をつかんだ。


それは…、クリだ。千夏さんが危惧する組み合わせになってしまう。


「リスとクリはヤバいって! クレーム来ちゃうわよ!」


千夏さんが卑猥な気持ちで観てるから、そう思うんでしょ…。

普通の人は、何とも思わないよ。


「あのリスさん、まるで千夏ちゃんを困らせてるみたい♪」

千春さんはクスッと笑う。


どんぐりを持って千夏さんを安心させた後、本命のクリを持って彼女を振り回したって事かな? ただの偶然だけど、そう考えると面白いな。



 「秋って、エロい言葉が多いわ…」

紅葉特集が終わって画面が切り替わった後、息を整えた千夏さんが言う。


クリ関連とリスが出てくる秋が強烈すぎるんだよ…。


「実際、秋はHに向いた季節だけどね♪」

千春さんが補足する。


「どういう事ですか?」

Hに季節なんて関係ないと思うけど?


「春にが出会ったと仮定した時の話だけど…」


よくわからないけど、前置きがいるのか。


「夏は暑すぎるし、冬は寒すぎるからHする気力が湧かないわよね。春は出会って間もないから、Hする関係は早いと思うの。だから過ごしやすい秋が向いてるのよ♪」


それに秋の夜は涼しいから、物理的に距離を縮めやすいね。

なるほど、今の千春さんの説明は納得できる。


「…え? ちょっと待って。Hする気力が湧かない?」

千夏さんが理解できない顔をする。


「一般的な話よ、千夏ちゃん♪ 夏バテしてる時や、脱ぐのに躊躇する冬は厳しいと思うけど…」


「夏バテしてる時こそHでしょ! 暑い時に辛い物を食べる感じでさ。冬だって激しくれば、すぐ暑くなるって!」


人は他の動物と違い、繁殖期がない。そうなると、千夏さんの言い分が正しいかも?


でもそれは理論上であって、実際は千春さんの言う通り季節の向き・不向きはあるように感じる。気候やイベントも重要な条件だしね。


誕生月を細かくリサーチすれば、どちらが正しいかハッキリするけど…。



 「普通の人は、夏と冬にムラムラしたらどうする訳?」


千夏さんのように、季節問わずる気なのは珍しいのかも…?


「やっぱり、1人ですることが多いでしょうね」

千春さんが答える。


1人ならパートナーの体調や事情を考えずにできるから、そうなるだろう。


「え~、1人で? 絶対物足りないって!」

納得できない様子の千夏さん。


「玲だって、1人でしたくないよね?」

彼女は僕に訊いてくる。


「まぁ…、そうだね」

いつも2人とHしてるから、1人の時は休憩しないと持たないよ…。


「私達はいつでも大丈夫だから、気軽に誘って欲しいわ♪」


「そうそう。年がら年中OKよ♡」


この母娘って、やっぱり一般的ではないよね…。そう思う僕であった。

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