風呂のお約束にツッコむ彼女
千夏さんの部屋で、ちょっと? 古い漫画を読んでいる僕。
昔って今とは違って規制が緩いから、過激な表現やシーンが多いよね。
そういう物珍しさに惹かれるな…。
早速、あるシーンに目が離せなくなる。それは、主人公の学年が修学旅行先のホテルに泊まっている時だ。
お風呂の時間になり、お調子者の男子数人が柵の反対側にある女湯を覗こうと試行錯誤を重ねる。運悪く覗きが女子達にバレ、すぐ男湯を出ようとするが…。
いかつい男性教師に叱責され、厳しい罰を受けることになる…。
覗きをストレートに表現するのは、昔ならではだね。
「こういうのって、男女同時に入らなければ済む話じゃん!」
いつの間にか、千夏さんが隣から覗き見してたようだ。
「そうしないと、話が成立しないから仕方ないんだよ…」
本当に覗き対策をするなら、早めに済む男子を先に入らせる。
その後全員出た事と忘れ物の有無を確認してから、女子が入れば問題ないはず。
男湯・女湯の入り口前に、女性教師が1人でもいれば完璧だね。
用が済んで忘れ物がない男湯に入る男子はいないから、簡単にチェックできる。
「覗きのシーンを観てたって事は、アタシ達の着替えを覗きたいの?」
ニヤニヤしながら僕を観る千夏さん。
「そんな事しないよ!」
覗きは絶対ダメなことだ。
「そっか…」
千夏さんはそう言いながら、Tシャツを脱ごうとする。当然ブラも見えてしまう。
「千夏さん!? 何してるの?」
彼女は僕の慌てた様子を観た後、脱ぐのを止める。
どうやら、からかわれたようだ。
「アタシが目の前で脱ぐのをガン見しておきながら『覗きはしない』って言われても、説得力がないんですけど~…」
覗きがダメな事なのはわかってるけど、現場に遭遇したら僕は耐えられるのかな?
…って、そんな現場に遭遇することなんてないから心配無用だったよ。
小腹がすいたな…と思った時、千夏さんの部屋の扉がノックされる。
「母さん? どうしたのよ?」
扉を開けず、そのまま返事する千夏さん。
返事を聴いた千春さんは、扉を少し開けて顔を出す。
「そろそろ小腹がすくころかな~と思って、おやつを用意したんだけど…」
「食べる!」
テンションを上げる千夏さん。
「僕もすいているところです」
千春さん、グッドタイミングで助かるよ。
僕と千夏さんは、早々に部屋を出てリビングに向かう。
キッチンで手を洗った後、ダイニングテーブルに着きおやつを食べる3人。
そんな中、千夏さんがさっきの覗きの件を話し出す。
「母さん。玲がね、漫画のお風呂覗きに夢中なのよ。アタシ達も覗かれるかも♡」
「玲君が覗くなんて、あり得ないわ。だって…」
千春さんは、わかってくれるようだ。本当に嬉しいなぁ。
だって…、の後が気になるけど。
「私達と一緒に入るんですもの♪ 覗ける訳ないわよね?」
僕の意思は関係なく、強制混浴になるって事?
「でもさ、玲に覗かれながら入るお風呂ってゾクゾクしない?」
この場合は、寒気とかじゃなくて興奮のことだね…。
「え~。私はそう思わないわ…」
珍しく母娘の意見が割れたな。
「玲君は私達に覗かれながらお風呂に入りたい?」
千春さん、僕に振らないでほしい…。
「いえ、まったく」
「玲はMだからイケると思ったのに…」
残念そうな顔をする千夏さん。
そこまでいくと、ドMでしょ。『ド』を付けるレベルだと思う。
「ウチのお風呂は狭いから、3人で入れないのが残念だわ」
千夏さんがつぶやく。
この家のお風呂が狭いわけでなく、大人1人と高校生2人が同時に難なく入れるお風呂なんて、一般家庭にないでしょ。
「そうよね…。温泉旅館にでも行けば何とかなるかもしれないけど」
それでも、大衆浴場じゃないと無理なのでは?
「温泉旅館ねぇ…。アタシ、知らない人の前で裸になりたくない!」
「私もよ、千夏ちゃん。部屋の一室に大きいバスタブがあってほしいわね♪」
そういう部屋って、高級なのでは? 知識がないから勘になるけど…。
「3人だけでお風呂、入りたいわ~」
「ね~」
最後に千春さんが同意してから、この話は終わる。
お風呂の件は抜きにして、知らない所に千春さん・千夏さんと行くのは良いかもしれないな。宝くじみたいに、いずれ起こると信じて待ってみようかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます