ヒゲは男のロマン?

 千夏さんと下校中、髭が印象的な男性とすれ違う。

口髭・頬髭は少しだけど、顎髭は2センチぐらいあるように見えた。


髭といえば、漫画では主人公の師匠とか長老のキャラでよく見かけるね。

年長者ならではの渋さを、髭はフォローする感じだ。


僕にはまだ早いことだけど、髭をどうしたいか考えておこうかな。

父さんが毎朝髭剃りしてるし、髭とは長い付き合いになるからだ。



 「玲、あんた髭に興味あるの?」

千夏さんが訊いてくる。


さっきの男性を観てから、ずっと考え込んでいたからね。

そう思われるのは当然かな。


「うん。髭って、調整次第で渋く見えたりしてカッコ良いよね?」


「え? 全然…」

彼女にあっさり否定された。


「あんなに伸ばしてだらしないわよ。髭は毎朝きちんと剃るべきなの。寝癖を直すみたいにね。多少の剃り残しは仕方ないけど…」


そんな…。まったく共感されないなんて予想外だ。

千夏さんにとって、髭は魅力的じゃないのか。


…だったら千春さんにも訊いてみよう。

大人の女性なら、わかってくれるはず。…多分。



 千夏さんの家に寄ってすぐ、僕はリビングにいる千春さんに訊くことにした。


「千春さんは、髭についてどう思いますか?」

きっと好意的な意見を言ってくれるはず…。


「急にどうしたの? 玲君?」

普段の僕とは違う雰囲気を感じたか、戸惑う千春さん。


「玲。まだ髭のこと気にしてた訳? 実は…」

千夏さんはさっきの件を説明する。


「…そういう事ね。髭は…、清潔感に欠けるから好きじゃないわ」


清潔感…。これまた、難しいことを言われたな。


「髭があると、小汚く見えるって事ですか?」

千春さんに詳細を求めることにした。


「…端的に言えばそうね。玲君のお父さんは、髭を剃らないかしら?」


「毎朝剃ってますよ」


「でしょ? 髭について良く思わない人がいるから、玲君のお父さんは毎朝頑張って剃ってるのよ。髭をそのままにすると、お手入れをサボりがちな人に見えるの」


「髭の手入れをしっかりすれば、小汚く見えませんよね?」

無精髭だから嫌われるんだ。そうでなかったら、きっと…。


「確かにそうだけど、そこまでするのはかなり髭にこだわりがある人よ。そんなに頑張るなら、剃ったほうが楽じゃない?」


この2人の、髭に対する考えはわかった。この母娘だからなのか、女性全体で考えるべきなのかは謎だけどね。髭は男のロマンかもしれない…。



 「玲。何で髭に熱くなってるのよ?」

千夏さんが納得できない顔をしている。


「千夏さんは、髭を生やした渋い年長者キャラをカッコ良く思ったことある?」


「もちろんあるわよ。けどそれは、そのおっさんがカッコ良いのであって、髭は一切関係ないわ!」


「本当にそう? 髭が引き立て役になっていると思ったことは?」


「まったくない!」


断言されてしまった…。この2人に、髭関係の話はしないでおこう。


「…なるほどね。玲が髭にこだわる理由、渋い男になりたい訳か」

ニヤニヤする千夏さん。


「まぁ…。そういう事になるかな…」


「玲君。髭がなくたって、渋くてカッコ良い男の人になれるから頑張って♪」


「はい…」

とりあえず、希望だけでも持っておこうかな。



 「…玲君。鼻の下のそれ、口髭よね?」

千春さんは僕の顔を見つめる。


床屋の時に剃ってもらうだけで、自分で剃ったことがない。それに鏡で顔を細部までチェックしないので、どれぐらい生えてるか把握してないのだ。


千春さんの顔がすぐそばにある。…恥ずかしいな。

そう思ったら何故か、彼女の唇と僕の唇が触れる。


…すぐに離れたものの、何だったんだ? 事故のはずないし…。

考える時間を与えず、千春さんは再び僕にキスをする。


何やら股間を触られている感じがするけど、キスに集中していてよくわからない。


…10秒ほど経っただろうか。千春さんが離れ、僕達のキスは中断された。


「千春さん。急にどうしたんですか?」

僕の口髭を観てたはずでしょ?


「玲君の唇が柔らかそうだし、恥ずかしがってる様子が可愛いから、つい♪」


キスの理由はわかった。次は股間の件を訊こう。

千春さんがキスしてきた時、千夏さんが触ってきたのだ。


彼女を観たところ、訊く前に答えてくれた。


「大きくなるのを確認してたのよ。触ってチェックするのが一番だし♡」


予想通りの答えだ…。千夏さんらしいね。


「母さん。玲もも気持ち良さそうだから、キスを続けて!」

千夏さんは僕のズボンをすぐ脱がし、パンツだけにする。


「りょーかいよ。千夏ちゃん♪」

千春さんはリビングにあるソファーに、僕を押し倒す。


これから激しい第2ラウンドが始まろうとする…。

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