番号の語呂合わせ

 いつものように、千夏さんの家のリビングでのんびりする3人。

そんな中、千春さんが携帯を持って悩んでいる様子だ。


「ねぇ千夏ちゃん。私の携帯の暗証番号って何だったかしら?」


「1940よ」


それを聴いた千春さんは、早速入力する。


「…解除できたわ、ありがとう。ついど忘れしちゃった」


母娘であっても、ロック解除の暗証番号は教えないよね?

僕、両親の暗証番号知らないけど…。


「千夏さん。千春さんの携帯の暗証番号知ってるんだ?」

気になるので訊いてみる。


「今みたいなことが起こるしね…」


「一応メモはあるんだけど、千夏ちゃんがそばにいるから訊いちゃった♪」


メモはあるのか…。1人の時に困っても安心だね。


「ちなみに、千夏ちゃんの暗証番号は『0721』よ♪」


「アタシだけが知ってる訳じゃなくて、教え合っているの」


「そうなんだ…」

この2人なら、まったくおかしくないな。



 「玲の携帯の暗証番号は何なの?」

千夏さんが訊いてくる。


本来そういうのは教えちゃいけないけど、この母娘は信頼してるので問題ない。


「この携帯を買った月日にしてる。○○○○だね」


「誕生日にしなかったんだ?」

質問してくる千春さん。


「暗証番号に誕生日はダメって言われまして…」


情報漏洩とか気にしないから誕生日が一番楽なんだけど、携帯ショップの人にそう指摘されたから仕方なく変えた感じだ。


「玲君もなのね。私も最初誕生日にしようと思ったの」


千春さんもか。誕生日は忘れないから、定番だよね。


「それが無理だから、アタシが考えた番号を母さんが使ってるのよ」


「千夏さんが考えたんだ?」


「そう。1940イクよ~って覚えやすくない?」


エロの語呂合わせか…。千夏さんらしいな。


「本当は1919イクイクにするつもりだったんだけど、同じ数字の繰り返しはお店の人に推奨されないって言われたから変えたの」


1919は直球すぎるし、1940のほうが良いと思うな…。



 「千夏ちゃん。登録してる〇〇というサイトから『パスワードを変更してください』って連絡来たんだけど…。また新しいの考えてくれる?」


「良いわよ」


暗証番号とかパスワードを考えるのは、千夏さんの担当なのかな?


「パスワードって何度も変更してると、ネタ切れになるわよね…」


彼女はうんざりとした様子を見せる。


「うん。気にしないで使い続ける人もいるみたいだけど…」


「…玲。アタシと一緒に新しいパスワード考えてくれない?」


「そんな…、良いのが思い付かないよ」

センスに自信ないし…。


「玲君。千夏ちゃんとの共同作業、断っちゃうの?」


共同作業って…。千春さん、どういうつもりなんだろう?


「ねぇ、玲。良いでしょ?」

上目づかいで僕を観る千夏さん。


ここまで頼られてるんだ。僕なりに頑張ろう。


「…わかった。協力するよ」


「ありがと。じゃあ早速考えましょうか。…10コほど」


「10コも!?」


「そうよ。後回しにしてた分を含めてるから」


安請け合いしちゃったかも…? 何はともあれ、これから知恵とアイディアを出して新しいパスワードを考えるとしよう。

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