ペロペロは見えないところでお願いします

 「まったく、見えないところでやってほしいわ!!」

下校中、隣にいる千夏さんが僕に愚痴をこぼす。


気持ちはわかるけど、そんなに怒らなくても…。


彼女がここまでキレている理由…。それは帰りのSHRショートホームルームまで遡る。


担任の冬城先生が急用で早退したので、今まで会ったことがない先生が僕達の教室に来た。外見はおじいちゃんだけど、実際の歳は不明だ。


そのおじいちゃん先生がプリントを配る際、指先を数回ペロッと舐めたのだ。

隣の席の千夏さんが「え…」と言ったのが、はっきり聴こえたよ…。


そのプリントを受け取ってちょっと説明を聴いた後、SHRは終わった。

その後校門を抜けたあたりで、さっきの愚痴を聴かされる…。



 「おばあちゃんから聴いたんだけど、歳をとると指先が乾燥して紙をめくりにくくなるんだって。だから舐めるんだよ」


小さい頃、おばあちゃんの行動に疑問を抱いて訊いたことがある。


「そんなの知ってるわよ!! アタシが気に入らないのは、。受け取るアタシ達の気持ち、考えて欲しいわ!」


千夏さん、マジ切れしてるな…。何とかフォローしよう。


「さっきのプリント、大した内容じゃなかったしすぐ捨てちゃえば良いよ」

大切なプリントじゃないんだ。気にし過ぎは良くない。


「そうだけどさ…」

それでも彼女の怒りは収まらない。


結局、千夏さんの怒りを完全に収めることができないまま、彼女の家に着く。



 「千夏ちゃん、機嫌が悪そうね~」

リビングに入った僕と千夏さんを観て、千春さんは言う。


「母さん、聴いてよ!」

早速怒りの原因を話す千夏さん。


「指先を舐める先生か…。確かに嫌よね」


「でしょ!」


千春さんもそういう経験があるのか、千夏さんに寄り添っているのか。

どっちなんだろう? 両方かも?


「人の癖についてあれこれ考えても、どうにもならないわ。だから受け取る私達が考えを変えないといけないのよ」


「考えを変える? どんな風に?」

千夏さんが質問する。


それは僕も気になるところだ。


「プリントについたツバは、だと思えば良いのよ♪」


何とも強引な…。それで千夏さんは納得するかな?


「そっか。これからプリントにツバがついていたら、だと思えば良いのね」


「そういう事♪」


「…そう思えば、さっきよりはイラつかないわ」


僕はピンとこないけど、千夏さんが納得したなら問題なさそうだ。


「ストレスやイライラに、真正面から立ち向かう事はないの。考え方・視点を変えれば、減らすことだってできるのよ♪」


考え方や視点を変えるか…。僕も覚えて実践してみよう。



 「…ストレスが減ったら、Hしたくなったわ」

恥ずかしがらず、普通に言い出す千夏さん。


良かった。いつも通りになってくれたよ。


「さっき言ったのは、あくまで一時しのぎだからね。ストレス解消はちゃんとやらないとダメよ♪」


Hは疲労感を伴うけど、ストレス解消になるね。早速始めようか。

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