寝相トーク

 千夏さんと一緒に登校中、彼女が話しかけてきた。


「玲って、寝る時の姿勢わかる?」


朝っぱらから寝る話をするの? 眠気を誘う気がするけど…。


「僕は仰向けだね」


「アタシは横向いて寝ることが多いわ」


お互い、一般的な寝方だと思う…。



 「少数派に『うつぶせ派』もいるらしいわね」

寝相トークを続ける千夏さん。


「へぇ? 初めて知ったよ」

寝相について他人と話したことないからな…。


「うつぶせでよく寝れるわよね。試したけど結構きつかったわ」


「試したの?」

何でそんなことをしたんだろう?


「うん。昨日寝つきが悪くてさ、色々な体勢をしてみたのよ。その時うつぶせになってみたんだけど、息しづらいからすぐ止めたわ」


「そうなんだ…」

肺を下向きにするからね。大体予想がつく。


「玲は止めといたほうが良いわよ。を下敷きにするからさ」


想像すると、が可愛そうに思えてきた。



 放課後になり帰宅早々、千夏さんは寝相の件を千春さんに話す。


「私も玲君と一緒で仰向けね♪」


「うつ伏せで寝たことある?」


千夏さん、その件にも触れるのか…。


「ないわ。だって胸がね…」


胸が大きい女性がうつ伏せになるとしたら、身体の中心に寄せるか逆に離すことになるのかな…? 僕にはサッパリだ。


「玲と母さんは、うつ伏せに向いてないわね…」

つぶやく千夏さん。


確かにそうなるかな。男性全員はを気にするし、胸が大きい女性はさっき考えた通り不向き。僕と千春さんは、なるべくやらないほうが良いと思う。



 「……てことはさ、アタシ達3人の中で一番ほふく前進が速いのって、アタシにならない?」


急に訳が分からないことを言い出す千夏さん。


「…千夏ちゃん。それって、どういう意味かしら?」


千春さんですら、困惑した表情をしている。


「玲はが、母さんは胸が気になるから、うつ伏せが苦手よね。アタシはどっちにも当てはまらないから、簡単にほふく前進ができるって事よ!」


千夏さんはドヤ顔で言うけど、日常生活でほふく前進をする機会なんて存在しないよね?


「…そうだね。千夏さんの圧勝だよ」

よくわからないけど、彼女を持ち上げておこう。


「千夏ちゃんには、叶いそうにないわ♪」

千春さんも僕に合わせて持ち上げる。


「でしょ。うつ伏せプレイは、アタシに任せなさい!」


こうして、もうちょっとだけ千夏さんを持ち上げた僕と千春さん。

その後は何事もなかったように、袋菓子を開けて3人で食べるのであった。

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