保健室で遊ぶ?
体育が終わり、着替えるために1人で教室に戻ろうとしている時…。
「今村君!」
僕を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、クラス委員長の田沢さんだった。
「良かった。教室に戻る前で…」
男子は教室、女子は更衣室で着替える。
なので僕が教室に入ると、声をかけるのが遅くなるのだ。
「どうしたの?」
「実はさっき、古賀さんがグラウンドを走っている時に転んじゃって…」
「千夏さんが!? 大丈夫なの?」
体育は男女別だから、千夏さんの怪我について知る由もない。
「大丈夫よ。私が保健室まで付き添ったから。古賀さんの彼氏の今村君には、早めに伝えておいたほうが良いと思ったの」
「そうなんだ…。これから保健室に行くよ。教えてくれてありがとう」
「気にしないで。後はお願いね」
そう言って、僕から離れていく田沢さん。
後はお願いってことは、田沢さんは保健室に行かないってことだよな?
まぁ良いや。あれこれ考えるぐらいなら、さっさと保健室に向かおう。
保健室に向かうと、千夏さんが椅子に座りながら膝に絆創膏を貼っているところだった。
「玲じゃない。どうしたのよ?」
「千夏さん転んだって、田沢さんから聴いたよ。だから急いで来たんだ!」
「…そう」
彼女は何故か浮かない顔をしている。
「玲が来てくれたのは嬉しいけど、こんな姿を見られるのは恥ずかしいわね…」
複雑そうな表情の理由はそれか。
…というか、保健の先生が見当たらないけど?
「千夏さん。保健の先生はどこ?」
「いないわ。委員長に付き添ってもらった時からずっとね。待ってても血は止まらないから、適当にガーゼとか絆創膏を使わせてもらったのよ」
止血できたなら問題なさそうだ…。
「千夏さん、どうして転んだの? 体調が悪いとか?」
体育直前まで一緒にいたけど、違和感はなかったなぁ…。
「そうじゃないわ。今日は玲とどんなHしようか考えながら走ってたら、石につまずいたのよ。気を抜いたのが原因ね」
「学校でそういう話はマズイよ…」
誰に聞かれているかわからないし。
「心配しないで。ここにはアタシと玲しかいないから。来た時に念入りに確認したから間違いないわ」
「…体育の時は余計なことを考えずに、真面目にやって!」
場合によっては、今よりひどい怪我をする可能性があるよね…。
「そうするわ…」
反省しているように見える千夏さん。
ちょっと言い過ぎたかな? でも千夏さんに怪我してほしくないし、仕方ないよね。
「保健室で2人きり。エロいシチュエーションよね」
千夏さんがニヤニヤしながら、僕を見る。
「千夏さん。時間がないから早く戻って着替えよう」
「…仕方ないか」
彼女は明らかに不満そうだけど、保健の先生がいつ戻ってくるかわからないし、次の授業に遅れる可能性もある。
遊んでる場合じゃないんだ。…エロいシチュエーションなのは事実だけど。
教室に戻ったら既に女子がいたので、男子トイレの個室に着替えを持ち込んで済ませた。教室で着替えるのは不便だな…。
放課後。千夏さんの膝を見た千春さんは、彼女に怪我の経緯を訊いた。
「千夏ちゃん、これからは気を付けてね。怪我したら、Hどころじゃないわよ」
「うん。気を付ける」
僕だけじゃなく、千春さんにも言われたんだ。今後は大丈夫でしょ。
…と思う事にする。大丈夫だよね? 千夏さん?
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