薬は考え方と使い方次第?

 今日は千春さんがドラッグストアに用があるらしく、僕と千夏さんも同行した。

そのドラッグストアの隣に本屋があるからだ。


僕と千夏さんは本屋で、千春さんはドラッグストアで過ごすから別行動になる。

用事が済んだ時に、連絡するようになっているけど…。



 「母さん、既読にならないわ…」

千夏さんが携帯を見つめている。


車を降りる前に千春さんの携帯を見たから、家に忘れた訳ではない。


「買い物に集中しているのかもね」

それか、店内のBGMの影響かな?


「どうせ隣なんだし、迎えに行きましょうか」


「そうしよう」

このままぼーっと待っててもつまらないし…。


入ったことないドラッグストアだけど、適当に歩けば見つけられるよね。

僕と千夏さんは早速店に入る。



 店内は静かだ。さっきのBGMの線は消えたな。

僕と千夏さんがはぐれたら意味ないので、一緒に千春さんを探す。


…見つけた。何やら商品を比べてる感じだな。


「母さん」

千春さんに近付いた後、千夏さんが声をかける。


「…千夏ちゃん、玲君。2人の用事は終わった?」


「終わったから連絡したけど、既読にならないし迎えに来たわ」


「そうだったの…。ごめんね、考え事してたから気付かなかったわ」


「考え事があるんでしたら、僕達は邪魔ですよね…」

1人で考えたいことだってあるよな。


「そんな事ないわ。…せっかくだし、2人の意見を聞かせてちょうだい」


「僕に答えられることなら…」

千春さんが訊きたいことって何なんだろう?



 「家にある風邪薬が少なくなってきてね。新しいのを買おうと思うんだけど、1日何回服用する薬を買おうか悩むのよ…」


「そんなの、1回で済む薬で良いんじゃないですか?」

飲む手間が省けるし…。


「やっぱりそうなのかしら…」

千春さんの顔は晴れない。


「でもさ、1って忘れることない? 印象に残らないというか…」

千夏さんも意見を言う。


「私も千夏ちゃんの考えに近いわね。それに1回だけの薬って、それだけ成分が濃いと思うのよ。身体への影響が気になるわ」


例えば3回飲む薬は、1回だけの薬を3等分してるのかな?

薬のことはサッパリだけど、水分補給は量より回数が重要なのは聴いたことある。


その理屈でいうと、こまめに飲んだ方が身体の負担は減る…?


「単純に、成分量が少ないから1回で十分なのかもしれないけどね」

補足する千春さん。


僕の家にも風邪薬は当然あるし、飲んだこともある。

けど千春さんのように、じっくり考えたことはなかった…。


「歳をとると、体に入れるものに敏感になるのよ」

考え込んでいる僕に、千春さんが教えてくれた。



 「やっぱり、薬剤師さんに訊くことにするわ」

千春さんはそう言った後、商品を棚に戻す。


そのほうが良いよね。素人があれこれ考えるより、プロの意見を聴くべきだ。

僕達も同行しよう。


近くにいた薬剤師さんに事情を説明した千春さんは、先程の棚に戻ってきた。

僕達は説明を聴いている彼女の隣で待機している。


…薬剤師さんの説明を聴いて納得した様子の千春さんは、朝・夕の2回飲む薬を買う事にしたようだ。その後すぐに、会計を済ませた。



 「2人とも。付き合わせちゃってごめんね」

ドラッグストアを出てすぐ、千春さんが僕達に話す。


「気にしないで下さい」

薬について色々考えることができたのは、良いきっかけだと思う。


「……アタシ、小腹がすいたわ」


時間は14時30分か。おやつの時間には、ちょっと早いかな…。


「じゃあ、荷物を車に置いてからコンビニで何か買いましょうか」


「やった」

小さくガッツポーズをする千夏さん。


僕達は一旦車に戻ることになる…。

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