久しぶりにブランコに乗る

 下校中、隣にいる千夏さんが公園を見ている。…何か用なのかな?


「千夏さん、公園に気になるものでもある?」

僕が気付いてない何かがあるのかも?


「…久しぶりに、ブランコに乗りたくなったのよ」


幸い、公園には誰もいない。乗るなら今の内じゃないか?


「誰もいないしさ、少し乗ってく?」

今なら人目を気にする必要はない。


「…良いの?」


「もちろん」

千夏さんの希望は、なるべく叶えてあげたい。


「じゃあ、少しだけ…」

彼女はちょっと恥ずかしそうに言う。


僕達は少し寄り道をすることになった…。



 カバンをブランコの真横に置いた後、僕達はブランコを漕ぐ。

2台あるので、2人で漕げるのだ。


「公園にある遊具の中で、ブランコってたまに漕ぎたくならない?」

隣にいる千夏さんが話しかける。


「確かにそうだね」


ジャングルジムは上るだけだし、シーソーは単調だ。

ブランコが一番スピード感があって楽しめる。



 久しぶりにブランコを漕いでテンションが上がったであろう千夏さんは、立ち漕ぎをし始めた。


…彼女のスカートがひらひらしていて落ち着かない。大丈夫かな?


「玲。あんたもやりなさいよ!」

僕に立ち漕ぎを勧めてくる…。


「僕は良いや…」


小さい頃に立ち漕ぎで怖い思いをしたことがあるのでやりたくない…。


…ん? 男の子とお母さんが公園に入ってきた。

千夏さんは気にせず立ち漕ぎをしている…。


男の子がブランコ前の柵あたりに近付いた時、あの事を言ってしまう。


「お姉ちゃん。パンツ見えてるよ」


それを聴いた千夏さんは、一気に減速する。


「こら! 余計な事言わない!」

男の子の頬をつねるお母さん。


「ごめんなさーい!」

そう言いながら、泣きべそをかく男の子。


なんか既視感があるな…。どこだっけ?


思い出した。この子、前に女の子のスカートをめくった子じゃないか。

(スカートが揺れ動く にて)


千夏さんはブランコの座るところの砂を払った後、カバンを持って公園を出ようとする。置いていかれないように、僕も急いで後を追う。



 「玲以外の人に、下着を見られるなんて…」

千夏さんは意外? にも、恥ずかしそうにしている。


「相手は3歳ぐらいの子なんだから、気にしなくて良いって」

相手の年齢によって、恥ずかしさの度合いは変わるはずだ。


「そうだけどさ…」

彼女はまだ納得していないようだ。


僕が立ち漕ぎを早めに止めていれば、こんなことにはならなかったよな…。

けどその段階では、僕達以外誰もいなかったから聴いてくれたかは不明だ。


「…立ち漕ぎをした罰ってことにしておくわ」

ちょっと間をあけた後、自身を戒めるように言う千夏さん。


彼女には悪いけど、それが無難だと思う…。



 「玲はさ、アタシと母さん以外に下着を見られたことある?」


「ないよ」

千夏さん、まだ気にしてたんだ。


「男子はスラックスだし、機会すらないわよね…」


知らない人に下着を見られるのって、僕の想像以上に恥ずかしいのかな?

それか、乙女心とか?


千夏さんの複雑そうな表情を見守りながら思うのであった…。

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